【レポート】IEEFA分析:日本のアンモニア混焼戦略における大きな課題


2026年7月9日付けで公開されたエネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)の「コスト、供給、導入時期が課題となる日本のアンモニア混焼戦略(Japan’s ammonia co-firing strategy constrained by cost, supply, and timing)」と題するブリーフィングペーパーには、日本が脱炭素戦略として進めているアンモニア混焼の問題が取り上げられています。

補助金制度によって支えらるアンモニア混焼、継続的な投資は効果があるのか

日本は、石炭火力発電所におけるアンモニア混焼を電力部門の脱炭素化戦略の中核と位置付け、アンモニアサプライチェーンの構築と発電用途での利用拡大を促進するための補助金制度を設けています。しかし本ブリーフィングペーパーは、日本がアンモニア関連補助金に充てている予算を、再エネ、蓄電池、電力系統など、既に技術的・商業的に確立された技術へ投資した方が、より高い効果をもたらす可能性があり、こうした技術は企業や家庭のエネルギーコストを引き下げるとともに、エネルギー安全保障を強化し、日本の脱炭素目標をより安価かつ確実に達成するための道筋を提供すると指摘しています。

燃料アンモニアの主要な供給拠点におけるブルーアンモニア生産の高額なコストおよび安定供給への不安

日本政府および企業が進めているアンモニアサプライチェーンの構築の中で、大きな役割を担うとされている事業が、JERAや三井物産も深くかかわっている米国ルイジアナ州で開発されているブルーポイントです。ブルーポイントでは、CCSを組み合わせて年間140万トンのアンモニア(ブルーアンモニア)を製造するとしていますが(生産開始は2029年を予定)、ブルーポイントの推定設備投資額は、計画発表以降、一貫して増加を続けているようです*1。製造されたアンモニアは、日本に運ばれ、碧南火力発電所や苫東厚真火力発電所で利用することが想定されていますが、製造や輸送コストが高くなればアンモニアの価格も高くなるのは否めません。アンモニア混焼による発電コストは、日本国内で既に導入されている再生可能エネルギーよりも高くなる可能性があると記されています。

*1 ブルーポイントプロジェクトの総事業費は開発計画が出た当初は20億米ドル超。その後、コストは増加を続け、推定事業費は2025年に2倍の40億米ドルに達している。

将来的な燃料アンモニアの供給確保

コストだけでなく、アンモニア混焼の導入に向けた将来的な燃料アンモニア供給確保への制約も課題となっています。現在、日本のアンモニア消費量は年間約108万トンで、その大半は窒素原料や各種産業用途に使用されていますが、碧南火力発電所4号機で20%アンモニア混焼を実施するだけで、年間約50万トンのアンモニアが必要となります。
日本政府は2030年までに国内の石炭火力発電所で20%アンモニア混焼を実現することを目標に掲げていますが*2、仮に一般電気事業者が運営するすべての石炭火力発電所で20%アンモニア混焼を実現した場合、年間約2,000万トン(20MTPA)のアンモニアが必要となります。これは2019年における世界全体のアンモニア貿易量にほぼ匹敵する規模です。現在、長期脱炭素電源オークションで落札されているの4基*3の改修工事が補助金により進んだとしても、実際に必要な規模の燃料アンモニアの供給を確保するのは、現実的に容易ではないと考えられています。

*2 政府は、2030年までに混焼率20%、2030年以降は50%以上、2050年までに100%混焼を達成する目標を掲げているので、将来的に混焼率が高くなれば、それだけ燃料アンモニアの需要は増えることになる。
*3 IEEFAのペーパーに書かれている4基は、JERA 碧南火力発電所4号機、北海道電力 苫東厚真火力発電所4号機、四国電力 西条発電所1号機、コベルコパワー神戸 神戸発電所1号機と見られるが、四国電力は西条火力発電所のアンモニア混焼の改修に対する長期脱炭素電源オークションの辞退を申し出ている。

出典:IEEFA, コスト、供給、導入時期が課題となる日本のアンモニア混焼戦略

こうした状況の中でアンモニア混焼を事業として成立させるには、多額の補助金が不可欠ですが、その費用は最終的に電気料金を通じて国内の消費者が負担することになります。現実を見れば、2027年度から2030年度までの間に20%混焼で商業運転を開始する予定としている計画も全て補助金(長期脱炭素電源オークション)頼みになっていることも踏まえ、日本のアンモニア混焼が脱炭素戦略全体の中で果たす役割を改めて検証する必要性があると述べられています。

IEEFA(日本語): コスト、供給、導入時期が課題となる日本のアンモニア混焼戦略
IEEFA(英語):Japan’s ammonia co-firing strategy constrained by cost, supply, and timing

※イメージ画像はIEEFA「コスト、供給、導入時期が課題となる日本のアンモニア混焼戦略」より

参考情報

JBC:【ファクトシート】水素・アンモニア燃料 ─解決策にならない選択肢 | Japan Beyond Coal 石炭火力発電所を2030年までにゼロに
気候ネットワーク:【レポート】石炭火力のアンモニア混焼に関する問題 ~真の気候変動対策は、石炭火力の全廃からはじまる~ | 気候ネットワーク
自然エネルギー財団:[インフォパック] 水素の現実と日本の課題 | 報告書・提言 | 自然エネルギー財団

参考記事

JBCニュース:【ニュース】予算半減と設備容量引き下げで露呈したアンモニア混焼の限界 | Japan Beyond Coal 石炭火力発電所を2030年までにゼロに

作成・発行:IEEFA
発行:2026年7 月9日