【ニュース】予算半減と設備容量引き下げで露呈したアンモニア混焼の限界 


日本政府が「2050年カーボンニュートラル」の看板政策として推進してきた、燃料アンモニアのサプライチェーン構築プロジェクトが事実上の大幅な後退を余儀なくされています。経済産業省のワーキンググループにおいて、グリーンイノベーション(GI)基金の予算分配額を約698億円から325.6億円へと一気に半減させる改定案が承認されました。

かねてより、石炭火力の延命策に過ぎず、再エネシフトに比べて巨額のコスト負担を国民に強いる仕組みだとの批判が根強かったアンモニア混焼ですが、大手メーカーの撤退や事業中止、さらには当初計画していた設備容量や実証規模の大幅な引き下げが相次いだことで、その政策的・経済的な見通しの甘さが決定的な形で露呈した形です。

巨額予算は半減、実証規模も相次ぐ下方修正という「現実」

6月16日に開催された「第35回 グリーンイノベーションプロジェクト部会 エネルギー構造転換分野ワーキンググループ」にて、燃料アンモニアサプライチェーンの構築に関する研究開発・社会実装計画の改定案が正式に承認されました。
今回の改定は、単なる進捗の遅れではなく、プロジェクトの根幹に関わる「規模の縮小」を意味しています。

  • アンモニア製造の新触媒開発:ステージゲート突破ならず「完全中止」  低温・低圧で合成可能な革新的触媒の開発を目指していましたが、社会実装に必要な目標水準(経済性・効率性)に達することができず、事業継続を断念しました。上限241.8億円だった予算は34億円へと大幅に削られています。
  • 石炭ボイラ高混焼技術:三菱重工が撤退、実証規模も引き下げ  三菱重工が、GI基金の期限である2030年度末までの実機実証完了は困難(5年程度の超過見込み)と判断し、国家プロジェクトから離脱しました。これにより、当初予定していた石炭ボイラにおけるアンモニア高混焼技術(専焼技術含む)の実証(設備容量)は大幅遅延もしくは再検討を余儀なくされ、予算も363.5億円から205.3億円へと減額。現在はIHIによる限られた範囲での検証のみが継続されている状態です。

継続プロジェクトが隠蔽する「コストと環境」の構造的課題

一部のプロジェクト(IHIの混焼・専焼技術開発や、JERAの碧南火力発電所における混焼実験)は継続されているものの、これらが脱炭素政策の抜本的な解決策にならないことは今回の計画見直しでより鮮明になっています。
経済産業省のWGに提出されたJERAの資料によると、JERAと共同提案者のIHIは、事業環境の変化として「国内建設工事費用の高騰」を直球で述べています 。その結果、2030年度までの50%以上の高混焼実証に向けた計画は維持しているものの、当初「2028年度末までに完了」としていた実証スケジュールは約2年も先送りされ、「2030年度末まで」へと実質的な延期を余儀なくされました 。さらに、実証費用を抑制するために、当初計画していた「最大出力1000MW」での実証から「最大出力600MWでの試験+性能予測」へと、実証時の設備構成(実証規模)を大きく縮小させています 。

また、もう一つの主軸であった三菱重工業とのプロジェクトにいたっては、コスト抑制策を検討したものの国の基金が定める2030年度末までの実証完了は困難(実機実証フェーズを待たずに事業一部中止)となりました。同プロジェクトにはすでに約22億円の国費(GI基金)が投じられていたにもかかわらず、期間内の完了を断念し、基金を活用した国家プロジェクトの枠組みから「自社実証への移行」という名目で事実上離脱する事態に追い込まれています。 混焼率をいくら高めたところで、ベースにあるのはCO2を大量に排出する石炭火力であり、「延命措置」であるという本質は変わりません。そればかりか、今回の資料で露呈したような「高騰する国内建設工事費用」や「価格高騰が続くアンモニアの調達コスト」は、将来的に電気料金や税金といった形で国民に上乗せされる仕組みが構築されつつあります。

世界が再エネの拡充へシフトする中で、その歩みを後回しにし、手厚い補助金と終わりのない国民負担の仕組みなしには自立できない燃料アンモニアを使った発電に国費を投じ続けることの是非が、いま改めて問われています。

問われるべきは「戦略そのものの是非」

政府はこれまで、既存の石炭火力を維持・活用するための免罪符としてアンモニアを「脱炭素燃料」と位置づけ、多額の予算を傾斜配分してきました。しかし、今回の中核プロジェクトの中止や期間内の実証断念、そして目指すべき設備容量の下方修正は、技術的・経済的な「現実的な壁」に直面した結果と言えます。世界が再エネシフトへと舵を切る中、コスト高で環境負荷の低減効果も限定的なアンモニア混焼戦略にしがみつき続ける日本のエネルギー政策は、根本的な軌道修正を迫られています。