【ニュース】東京エリアで初の再エネ出力抑制 火力を止めれば防げた?


全国で再生可能エネルギーの出力抑制が増加しています。2026年3月1日には、とうとう東京エリアでも出力抑制が行われました。再エネの普及に伴い、電力系統の安定化を図るために再エネの出力抑制が必要になることももちろんあるでしょう。しかし、本当に再エネの出力制御をしなければいけない状況だったのでしょうか?

本記事では、東京エリアの例をもとに、再エネが出力抑制されている裏で火力発電が止められないまま発電していたことを示します。

本記事のまとめ

  • 2026年3月1日に東京エリアで初めて再エネの出力抑制が行われて以降、3~5月に太陽光発電・風力発電の出力抑制が頻発
  • 2026年5月には月間の太陽光発電の発電量全体の6%近くが捨てられていた
  • 再エネの発電が増える中でも、原発が稼働し、火力は十分な調整機能を果たしておらず、燃料費無料の再エネが全国的に捨てられている
  • 再エネの出力抑制を減らすために、電力システム制度に再エネ+蓄電池を優先活用する方針を位置づけるべき

とうとう始まった東京エリアの再エネ出力抑制

日本で最初の再エネの出力抑制が行われたのは、2018年の九州エリアでした。そして、四国・東北・中国(2022/4~)、北海道(2022/5~)、沖縄(2023/1~)、中部・北陸(2023/4~)、関西(2023/6~)と広がっていき、残るは東京エリアだけという状況でした。

その東京エリアでも今年3月1日出力抑制が行われ、それを皮切りに3~5月に太陽光発電・風力発電の出力抑制が頻発しました。多くは土日ですが、5月には出力抑制量が増え、平日にも実施されていました。

太陽光発電・風力発電の30分当たりの抑制量が最大だったのは、2026年5月5日(火)の633万kWです。この日には、大型火力6基以上に匹敵するほどの高い出力の再エネが抑制されたことになります。

また、太陽光発電でいうと2026年5月には1億6,567万kWhものの出力抑制が実施されましたが、これは月間の太陽光発電の発電量全体の6%近くが捨てられていたことになります。

火力で”調整”されていなかった需給 原発が増加

電力広域的運営推進機関(OCCTO)は3~5月の出力抑制について検証を行い、いずれも「今回の出力抑制の指令は下げ調整力不足が見込まれたため行われたものであり、適切であると判断する」としています。

しかし、今回検証を行った結果、再エネが出力抑制されていた一方、火力発電が相当稼働していたことが明らかになりました。最も抑制量が大きかった5月5日を例に、当日の需給について確認してみましょう。

図:自然エネルギー財団「電力需給チャート」より
左図は2025年5月5日、右図は2026年5月5日

右図の黄色にシマが入っているのが太陽光発電の出力抑制で、水色にシマが入っているのが風力発電の出力抑制です。1年間で大幅に太陽光発電の出力抑制が増えたことがわかります。なぜこんなに出力抑制が増えたのでしょうか?

以下の表は、最も出力抑制が大きかった各5月5日10時半の電源種ごとの供給量を示したものです。(色は上記のチャートに適合)

東京電力パワーグリッド「エリア需給実績データ」よりJapan Beyond Coal作成

まず、今年5月5日は柏崎刈羽原発の再稼働により、原発が131万kW追加されています。そして、LNGや石炭などの火力は昨年とほぼ同じ水準で発電していました。LNGや石炭火力が本当に政府の言う”調整力”を担っていたなら、太陽光発電の出力抑制は大きく削減できたでしょう。風力に至っては出力制御によってほとんど供給できていない状況でした。
再エネよりも原発・火力が優先されている現状がここから伺えます。

燃料費無料の再エネが出力抑制され、火力発電所は稼働

では次に、火力にフォーカスして、具体的にどの火力発電所が当日稼働をしていたのか見てみましょう。
以下は、2026年5月5日にどのように各地の火力発電所がどのように稼働していたのかを表した図です。

【石炭火力】
東京エリアでは、5月5日に以下の5基が稼働しており、日中は4基が稼働を落としていることがわかります。しかし、鹿島パワー(日本製鉄50%、Jパワー50%出資)は安定した運転を行っています。

図:OCCTO「ユニット別発電実績」からJapan Beyond Coal作成

【LNG火力】
東京エリアでは、5月5日に以下の19基(軸を含めると24)が発電しており、日中の稼働を大幅に減らしていたのは千葉火力1号系列1軸および2号系列3軸、川崎天然ガス火力1号機、鹿島7号系列2軸の4つのみとなっています。

ほかの発電所については、再エネの余剰分を優先するというほどの調整はなされていないことがわかります。一定で運転している発電所すら存在しています。この日稼働していた発電所のうち、真岡火力(コベルコパワー真岡)以外はすべてJERAの発電所です。

図:OCCTO「ユニット別発電実績」からJapan Beyond Coal作成

化石燃料が高くなっている時に、なぜ燃料費無料の再エネが抑制され、火力は昨年と同じくらい稼働しているのでしょうか。また、こんなに再エネが余っている東京エリアで原発を動かす必要はあったのでしょうか?

長期相対契約で火力を一定で運転させていた場合も考えられますが、それにしてもこのように再エネを出力抑制させている中では、相対契約に対してもしっかりとしたルールが必要となるでしょう。日本では、欧州の国々とは異なり、再エネ出力抑制に対する補償も行われていません。

これは、電力システム制度に再エネを優先する方針がしっかり位置づけられていないためです。この問題に対しては環境エネルギー政策研究所(ISEP)が具体的に提言しています。

制度や運用面で火力や原発が優先される限り、再エネの出力抑制は減らないでしょう。それどころか、新しく再エネを作りたいという意志すら削いでしまいかねない状況です。

本記事では東京エリアを例にしましたが、東京エリアは最後に出力抑制がはじまったエリアです。先んじて出力抑制が始まっていた九州エリアをはじめとする地域では、より多くの再エネ抑制が行われています。一刻も早い対応が必要でしょう。

「再エネは不安定」「再エネの調整のためには火力が必要」という言説が根強い日本ですが、今は蓄電池というゲームチェンジャーが現れています。再エネ+蓄電池は安定的に電力を供給できるだけでなく、火力よりも安価な時代になってきました。気候変動を悪化させ地政学リスクの高まる化石燃料火力よりも、再エネ+蓄電池を優先した柔軟な運用を目指して、日本も制度を改革するべきです。そうすれば、燃料費無料の再エネの電気を活かした経済合理的な社会に一歩近づくことでしょう。

参考

東京電力パワーグリッド:再生可能エネルギー出力制御の見通し

東京電力パワーグリッド:エリア需給実績データより

OCCTO:再生可能エネルギー発電設備の出力抑制に関する検証結果
5月分