【ニュース】アンモニア供給に課題、西条火力が脱炭素オークションの落札を辞退


4月23日、四国電力は、石炭火力発電所である西条発電所1号機(出力500MW)について、2024年度の長期脱炭素電源オークション(後述)の落札を辞退すると公表しました。この発電所は、主燃料である石炭にアンモニアを混ぜる計画で長期脱炭素電源オークションによる20年間の支援を受ける予定でした。落札辞退の理由は、アンモニアのサプライチェーンの構築が当初の計画通りに進められない見通しとなったためとしています。

▼四国電力「長期脱炭素電源オークションで落札した電源の落札辞退について」https://www.yonden.co.jp/notice/__icsFiles/afieldfile/2026/04/23/20260423.pdf

長期脱炭素電源オークションは、「脱炭素」を謳ってはいますが、火力発電所への投資支援として、LNG火力やアンモニア混焼火力などに対して20年間の支援を行います。原資は、小売電気事業者から支払う容量拠出金(もともとは消費者の電気代)です。長期脱炭素電源オークションではアンモニア混焼火力などの燃料費や運転費(可変費)もカバーしており、物価や為替の影響も補正できるようになっています。

▼長期脱炭素電源オークションについて詳しくはこちら
【ファクトシート】長期脱炭素電源オークション ─石炭火力の延命策 | Japan Beyond Coal 石炭火力発電所を2030年までにゼロに

どんな計画だった?西条発電所のアンモニア混焼

2023年6月に運転を開始した西条発電所1号機は、現在は石炭を主な燃料とし、木質バイオマスや下水汚泥由来燃料の混焼を行っています。

西条発電所1号機では、下図のように2030年代からアンモニア20%混焼への改修を予定として94.6MWを落札していました。

出典:資源エネルギー庁「西条発電所1号機の脱炭素化ロードマップ」

今回の落札辞退は、この計画の実現性が困難と判断したもので、具体的にはロードマップ下部に書かれた「前提条件」の「サプライチェーン構築による経済性のある脱炭素燃料の安定的な確保」を満たすことができなかったものと考えられます。

長期脱炭素電源オークションで落札された電源は、原則として市場からの退出が認められていません。今回は合理的な理由があると認められたようですが、経済的ペナルティが科される対象となるかは明らかになっていません。四国電力は同オークションの落札を辞退しましたが、今後西条発電所1号機でのアンモニア混焼を完全に断念するのかまでは不明です。

アンモニア調達の課題が浮き彫りに

サプライチェーン構築が計画通りに進められない要因については、四国電力は詳細を明らかにしていません。

もともと、四国電力は太陽石油、大陽日酸、マツダ、三菱商事、波方ターミナル及び三菱商事クリーンエナジーとともに、愛媛県今治市にある波方ターミナルをアンモニアの拠点とすることを目指していました。このうちマツダは、自社の石炭火力発電所をアンモニア専焼火力に置き換える計画の中で、波方ターミナルから内航船でアンモニアを輸送する予定でしたが、2025年10月にアンモニア専焼火力の計画断念を発表していました。

波方ターミナルでは、四国電力やマツダがアンモニアの大口需要家となることを想定していたと考えられ、そのうえで水素社会推進法のアンモニア拠点整備支援を求めていましたが、まだ拠点整備支援は獲得していません。

出典:水素・アンモニアの利用拡大を中心とした瀬戸内エリアにおけるGX実現方策調査報告書

西条発電所の長期脱炭素電源オークション辞退や、マツダのアンモニア専焼火力断念のニュースは、火力発電所におけるアンモニア燃料調達の難しさを浮き彫りにしました。西条発電所1号機の発電能力は500MWなので、20%混焼では年間でおよそ25万トンのアンモニアが必要になると考えられます。これは現在の国内のアンモニア需要(100万トン強)の四分の一ほどの規模。

アンモニアはコストも高いため、企業の経済合理性を考えると、今後、西条発電所同様にアンモニア混焼への改修に向けて落札している案件から落札辞退するものが出てくることもあり得ます。今回の落札辞退は、火力発電の「脱炭素」燃料がサプライチェーンに大きく左右されることを露見させるものとなりました。

また、国内外の環境NGOから再三指摘されているように、アンモニア混焼は主燃料である石炭を一部アンモニアに置き換えるにすぎず、ライフサイクルでの温室効果ガス排出を抜本的に減らす技術ではありません。それどころか、「アンモニア混焼」を前面に出して脱炭素を標榜し、石炭火力を延命しやすくなるという問題があります。投資家の視点から見ても、気候変動対策上の合理性からは投資を見送るのが妥当です。

まとめ 長期脱炭素電源オークションで火力を支援しないで

今回、西条発電所1号機が長期脱炭素電源オークションの落札を辞退したことで、その分火力発電所の延命にお金が回ることは避けられました。しかし、いまだ多くの火力発電所が落札したままですし、これからもしばらくはLNG火力や石炭火力の改修は長期脱炭素電源オークションの対象になり続けるでしょう。長期脱炭素電源オークションは、「脱炭素」を標榜しながら火力に多額の資金を回す仕組みになってしまっており、その存在意義から根本的に見直す必要があります。

アンモニア混焼は、サプライチェーン構築など、様々な点での難しさが明らかになってきています。アンモニア混焼を隠れ蓑にした石炭火力の延命は早急に中止し、省エネ・再エネなど温室効果ガス削減効果が確立されている技術へお金が回る仕組みを検討するべきではないでしょうか。

▼気候変動対策を求めるためのアクションはこちら

参考

長期脱炭素電源オークションでどのような案件が落札しているかにも注意してみましょう。
▼容量市場 長期脱炭素電源オークション約定結果(応札年度:2025年度)の公表について
https://www.occto.or.jp/news/012080.html

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