【ニュース】脱石炭に逆行して石炭火力発電所の稼働続々と


COP27で脱炭素社会に向けた協議が行われようとしている最中に、日本では新たな石炭火力発電所が続々と動き始めています。

三隅発電所2号機:2022年3月23日に試運転発電開始、同年11月1日に営業運転開始

2022年 11月1日、中国電力が三隅発電所2号機(島根県浜田市)の営業運転を始めました。出力100万キロワット。1号機(出力100万kW)が1998年に稼働を開始した時点で2号機も計画が進められる予定でした。しかし、電力需要の伸びの鈍化と低炭素社会実現に向けた対応の必要性に迫られた中国電力は、2号機の着工(計画当初の予定は2001年)および運転開始(同じく2004年)時期の延期を計3回も申し出ました。その間に、出力も変更し、計画当初の70万kWから一度40万kWに落とした後に、2015年には老朽化した既設火力発電所の代替と位置づけることで100万kWに拡大させた上で開発時期を前倒しし、2018年に建設工事を開始したのです。そして、3月に試運転、今月に営業運転を開始したのです。

計画当初(1982年)とは電力需要や環境が大きく変化し、2020年に政府が温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減するとの目標を打ち出したにも関わらず、100万kWという国内最大級の石炭火力発電所の計画は進められてきました。環境アセスメントでは、1982年当時のレベルで実施していたことから、計画変更後は配慮書の手続きを実施せずに方法書から着手しています。準備書においては、2018年当時の環境大臣が「有効な二酸化炭素(CO2)の排出削減策が具体的に示されなければ容認されるべきではない」との見解も示していました。

中国電力は、2号機で木質バイオマスを10%程度(熱量ベース)混焼させることにより年間50万トン程度の二酸化炭素(CO2)排出量の削減が見込まれるとアピールしています。しかし、実際には1号機と合わせて出力200万kWの超々臨界圧(USC)の大規模石炭火力発電設備が稼働することになり、年間設備利用率を80%とした場合、最大で約1,113万トンの温室効果ガスが排出されることになるので、50万トンの削減など全体からみるとごくわずかにすぎません。中国電力は、三隅発電所を「老朽化した既設発電所の代替」としていましたが、既設発電所が止まる気配はありませんし、非効率石炭火力発電所の廃止を進めると言っていますが、具体的な計画を示してはいません。

西条発電所1号機:2022年11月1日にボイラー火入れ、来年6月に運転開始予定

四国電力は、11月1日に西条発電所(愛媛県西条市)1号機のボイラーの火入れを行いました。この1号機は、出力15.6万kWの旧1号機(2022年3月に廃止)を、出力50万kWの新1号機にリプレースするもので、2019年6月に着工して工事を進めてきました。この後は、12月から試運転を、来年2023年6月末には営業運転を開始する予定です。このリプレースでも「高効率化」は図られていますが、発電容量が大きくなっているためCO2排出量は旧1号機よりも増加します。

四国電力管内では、時期によって四国電力管内の電力消費量を再生可能エネルギーの発電量ですべてまかなえる、いわゆる「再エネ100%」の状況が生まれています。このような大規模な石炭火力発電所を新規で建設するのではなく、省エネと再エネで柔軟に対応する電力システムこそ必要であったと言えます。

今後の動向

11月1日時点で、国内で計画・建設中の発電設備は5基です。

発電所名称 発電容量 運営会社 状況・運転開始予定年
横須賀発電所 新1号機 650MW JERA 試運転中
横須賀発電所 新2号機 650MW JERA 2024年運転開始予定
神戸発電所 4号機 650MW コベルコパワー神戸第二 2022年5月に火入れ

7月後半以降に試運転開始予定

西条発電所 新1号機 500MW 四国電力 2022年11月に火入れ

2023年6月末に運転開始予定

GENESIS松島 500MW J-POWER 環境影響評価中

2026年運転開始予定

日本は、今年のG7サミットの共同声明で2035年までに電力部門の太宗の脱炭素化、とりわけ石炭火力の「フェーズアウト(段階的廃止)」を加速させることにコミットしました。それにもかかわらず、石炭火力発電所の運転を次々に開始し、既存の非効率石炭火力の廃止を進めていないどころか、具体的な計画すら示していません。

1.5℃目標の達成には、先進国は2030年までに石炭火力発電所を廃止することが求められており、日本に残された時間は刻々と少なくなっています。従来(旧式)の発電所より排出量が少ないとしても排出削減措置が講じられていない三隅発電所2号機や西条発電所、その他の新規石炭火力発電所の運転など、国際社会から認められるはずがありません。老朽石炭火力とともに廃止を進めるべきです。