【ニュース】神戸石炭火力訴訟判決-気候危機に対する危機感の薄い日本


神戸製鋼所が建設・稼働させた神戸発電所3-4号機を巡る、2つの裁判に大きな動きがありました。これまで、同発電所については周辺住民が中心となって計画中止を求める住民運動が立ち上がり、大気汚染と気候変動への影響を主な争点として裁判が提起されていました。

一つは、気候危機が深刻化するなかにあっても、石炭火力発電所の建設を認めた国(経産省)の判断について、取り消しを求める訴訟(行政訴訟)です。二つ目は、石炭火力発電所を建設・稼働する神戸製鋼所及びその子会社であるコベルコパワー神戸第二、売電先の関西電力の3者を相手とする建設・稼働差止訴訟(民事訴訟)です。神戸石炭訴訟の原告・弁護団は、2018年から石炭火力の建設をめぐるこれら2つの気候変動訴訟を提起し、法廷で闘ってきました。

結果は、大変残念なもので、いずれの判決も、新たな石炭火力発電所の稼働差し止めを求める原告の請求を認めませんでした。

判決日
3月9日 行政訴訟 最高裁が上告を棄却
3月20日 民事訴訟 神戸地裁が住民敗訴の判決

国の判断の取り消しを求めた訴訟で、最高裁が上告を棄却

まず、国に対する行政訴訟については、上告手続き中でしたが、3月9日付で最高裁より、原告らの上告を棄却するとともに、上告受理申立を却下するとの決定が下されました。これにより、2018年から続いた裁判は原告敗訴で終わることになりました。

原告・弁護団は共同で声明を発表し、裁判所の判断について4点の問題を指摘しています。
【声明】神戸製鋼石炭火力行政訴訟 最高裁却下決定についての原告団・弁護団共同声明(2023/3/18)(リンク

1.  気候変動に対する危機感の欠如と気候科学への無理解
2.  気候変動は、深刻な人権侵害を現にもたらし、すべての個々人の人権侵害の問題あるという法的認識の欠落
3.  行政判断における裁量の最大限の尊重と司法の関与を控える姿勢
4.   EUをはじめとする世界の裁判所は伝統的法理論を気候変動問題に巧みに応用した新しい判断を示し、人権の砦としての役割を果たす一方、日本の司法は、その役割を自ら放棄

一方で、このような気候変動への危機感の欠如や環境アセスの欠陥への鈍感さは、裁判所の問題だけではなく、日本の国民全般の気候変動に対する危機感の欠如(マスコミも含む)の表れと言わざるを得ないと言及し、現状の社会認識が大きく変わる必要性があるとの問題提起がされています。これにより、大阪高裁における判決(2022年4月26日)が確定しました。

企業に稼働差し止めを求めた訴訟では、危険性は認められないと判断

そして、3月20日、民事訴訟の判決が下されました。民事訴訟は、神戸製鋼所及びその子会社であるコベルコパワー神戸第二、売電先の関西電力の3者を相手として、①新規の石炭火力発電所(3,4号機)を建設してはならない、②稼働してはならない、③発電の指示をしてはならない、を求めて提起された裁判です。

石炭火力発電所から排出される大気汚染物質による健康影響と、温室効果ガスを排出することによる気候変動への影響が主な争点でした。

裁判所は、大気汚染物質の排出、特にPM2.5について、住民らの人格権に対する侵害については、本件発電所から住民に到達するPM2.5の濃度が住民らの健康を害する具体的危険をもたらすレベルにはない、と判断しました。また、PM2.5による健康侵害のリスクにより平穏生活権が侵害されるとの原告らの主張についても、深刻な不安を生じさせるだけの客観的な危険性は認められないとして、その請求を認めませんでした。

気候変動への影響における石炭火力発電所から排出されるCO2については、石炭火力発電所を含む大量排出が気候変動の悪化に寄与していることを一般論では認めました。また、CO2の排出に起因する地球温暖化、気候変動による人格権(生命、健康等)の侵害を理由にした差止請求が可能であることも認めました。

しかし、CO2排出の危険性については、「地球温暖化による被害についての原告らの不安は、不確定な将来の危険に対する不安であるから、現時点において、法的保護の対象となるべき深刻な不安とまではいえない」という認識を示し、請求を認めませんでした。オランダやドイツで出された世界の先端的判決と比較すると、気候変動の科学および国際政治の認識から日本は大きく立ち遅れている状況にあると言わざるをえません。

原告と弁護団は、今回の判決を受けて、抗議する声明を発表しました。
【声明】神戸製鋼石炭火力民事訴訟 一審判決についての原告団・弁護団共同声明(2023/3/23)(リンク

声明ではすみやかに控訴して、世界の公害施設としての本件石炭火力発電所を含む石炭火力発電所の問題点を、引き続き、裁判所、事業者、市民のみならず、広く国際社会に訴えていくと表明しています。

神戸発電所3-4号機の稼働差し止めを求める民事訴訟は、原告側が控訴する予定で、神戸地裁から大阪高裁へと場所を変えて続いていきます。

関連リンク

神戸石炭訴訟ページ(リンク