【ニュース】神戸石炭行政訴訟判決 再び原告の訴えを退けた裁判所


2022年4月26日(火)、神戸製鋼所が神戸市灘区で進めている石炭火力発電所の増設計画において、建設を認めた国の責任をめぐる行政訴訟の控訴審判決が言い渡され、一審判決の判断をそのまま追認した裁判所によって、原告の訴えが退けられる残念な結果となりました。

判決後、大阪高裁前で旗出しを行う 原告・弁護団

この裁判では、石炭火力発電所の建設を認めた国の判断の取り消しを違法性と住民の権利の2つの争点から訴えてきました。

1)石炭火力発電所による大気汚染につき、石炭火力発電所が稼働することで排出されるPM2.5の影響評価を行っていないことの違法性
2)排出される大量の温室効果ガスであるCO2による、気候変動の影響を受けない権利

大気汚染物質のPM2.5について、裁判所は「PM2.5を考慮対象とする選択肢は十分あった」とは認めつつも、経済産業大臣の専門的・技術的裁量を前提として、PM2.5を環境アセスメントの対象項目しなかったことは、「違法だとまでは言えない」と判断しました。

気候変動の影響を受けない権利については、「法的保護に値する個人の利益とまでは言えず、現時点で国際的、国内的に議論が成熟しているとも言えない」とし、原告に対して、気候変動の影響を訴える権利を認めませんでした。

一方で裁判所は、現在示されている日本の気候変動対策に対して「さまざまな、大きな、重要な課題がある」と認めています。国が掲げている2030年の温室効果ガスの削減目標(計画時は2013年比26%減、現在は46%減、最大50%)の達成に向けた見通しとして「実現の具体的な道筋が示されているとはうかがえない」と、強く疑問を呈しました。この判断には今後の国内外の社会情勢によって変化しうるという方向性が示唆されています。

左)神戸発電所1-2号機、右)2022年2月に営業運転を開始した3号機

昨今、世界では欧米を中心に気候変動問題および、CO2の大量排出は、違法な人権侵害であるとの認識が急速に広まりつつあります。日本の裁判所も、大気汚染物質、温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電所の新設・稼働計画を野放しにせず、歯止めをかけるべきです。

原告団は、弁護団と協議し、子どもたちの未来に責任を負う市民として、気候変動について訴えることが許されないのは、憲法上保障されている裁判を受ける権利を侵害するものとして、5月6日、最高裁へ上告しました。

関連リンク

判決を受けた原告・弁護団声明
【原告・弁護団声明】大阪高裁判決 気候災害による人権災害とCO2排出を争う資格を認めず!!(神戸石炭訴訟HP 2022/04/26

JBC掲載ニュース

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