【ニュース】地域団体が武豊火力発電所について住民アンケートを実施


愛知県の武豊町では、2022年度にJERA株式会社が建設中の武豊火力発電所5号機(107万kW)が本格稼働する予定となっています。これに対して、「武豊町の環境問題を考える会」が5月に地域住民500名ほどへのアンケート調査を実施し、54名からの回答がありました。その結果をまとめます。

「武豊火力発電所リプレース計画 環境影響評価書のあらまし」より

武豊火力発電所の認知度

今年武豊火力発電所が稼働を開始することは、約3割の方が「知らない」と回答し、8割以上の方が説明を「聞いていない」と回答しました。住民への説明不足の懸念をあげた方も複数みられました。

3割超の方が気候変動や大気汚染などへの影響から稼働を「気になる」と回答したものの、5割の方が「気にならない」と回答しました。石炭火力発電所が引き起こす気候変動や大気汚染への影響について、まだ身近に感じてはいない方が多くいることを示しています。

Q,2022年は、武豊火力発電所が稼働を開始します。知っていましたか?

Q,武豊火力発電所について、説明会などで聞いたことがありますか?

Q,武豊火力発電所が稼働を始めると何か気になることがありますか?

「武豊火力発電所リプレース計画 環境影響評価書のあらまし」より

武豊町のカーボンニュートラル宣言

また、国の2050年までにカーボンニュートラルにするという目標は約7割の方が知っている一方で、武豊町が2050年にゼロカーボンシティ宣言をしていたことについては「知っている」と「知らない」が拮抗しました。住んでいる自治体からもこのような目標の設定が始まっており、この目標と石炭火力発電建設ははっきり矛盾していることをより多くの住民の方に考えてもらうことが必要です。大量に温室効果ガスを排出する石炭火力発電を稼働させたまま、ゼロカーボンシティを達成することはとても難しいのです。

Q,政府は2050年までに、「カーボンニュートラル」(炭素の排出と削減をプラスマイナスゼロにする計画)を実現するとしています。知っていますか?

Q,武豊町は、昨年2月に、2050年までに、二酸化炭素の排出をゼロにする「ゼロカーボンシティ宣言」をしました。知っていますか?

「地球温暖化」は知っているけど・・・

「地球温暖化」「温室効果ガス」ということばを聞いたことがないという方は0人でした。「地球温暖化」から連想する言葉としては異常気象や氷河の融解、海水面の上昇といった広い範囲の影響を連想した方が多く、農作物や台風による災害など生活にもたらす影響を挙げた方もいました。

地球温暖化を止めるためにやっていることとしては、ごみの分別や節電、車ではなく出来るだけ歩くようにするなどの回答が多くありました。また、「太陽光パネルを増やして火力を減らせばいい」という意見もあげられました。温室効果ガス削減には一人一人の努力も大事ですが、温暖化のスピードがますます早くなっている状況では、それだけでは到底間に合いません。火力発電所を止め、代わりに温室効果ガスを排出しない太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用することで、効果的に削減を進めることができるのです。

Q,「地球温暖化」「温室効果ガス」などの言葉が、最近よく聞かれるようになりました。聞いたことがありますか?

Q,「地球温暖化」を防ぐために、何か具体的にやっていますか?

武豊町の太陽光発電

武豊町の太陽光パネルについては、「増えたと思う」と回答した方が約9割に上りました。昨今の電力価格高騰下では、自分で太陽光発電した方がトータルで安くなってきています。また、2022年6月1日現在では武豊町はゼロカーボンシティへの取組の一環として太陽光発電設備の導入に補助金も出していますが、こうした町の取組も徐々に効果を出しているのではないでしょうか。

Q,最近、武豊町でも「太陽光発電パネル」が増えてきたと思いますが、増えたように思われますか?

このアンケートを通じて、市民の気候変動に関する意識は高まる一方、足元の石炭火力発電所の情報が十分に伝わっていない現状があらためて浮き彫りになりました。石炭火力発電が非常に大きな温室効果ガス排出の源であり、稼働が気候変動に直結すること、気候変動が生活に大きな影響を及ぼしていることを広く知らせることこそが、脱石炭への道を切り開く鍵を握っていると言えるでしょう。

参考情報

JERA:武豊火力発電所 環境影響評価書のあらまし(Link