【ニュース】気候変動対策は国の義務へ!国連で歴史的決議


「気候変動対策は国の義務である」—気候変動が世界で深刻な影響を及ぼす中、国際司法裁判所(ICJ)は、各国が気候変動対策をしないことは国際法上の不法行為になり得るとした勧告的意見を2025年7月に発表しました。そして2026年5月20日、この勧告的意見を歓迎する国連総会決議が日本を含む141か国の賛成によって採択されました。国連総会は、「勧告的意見が既存の国際法を明確化することに貢献」とその重要性を確認しました。

▼【ニュース】国際司法裁判所が気候変動は「差し迫った脅威」との勧告的意見を発表 – Japan Beyond Coal

出展:国連のMeetings Coverageより、ICJの勧告的意見への各国の賛否状況(2026年5月20日)
賛成141票、反対8票(ベラルーシ、イラン、イスラエル、リベリア、ロシア連邦、サウジアラビア、アメリカ合衆国、イエメン)、棄権28票

2026年2月以降、バヌアツ政府を中心にこの勧告的意見を実行に移すための国連総会決議採択を目指す動きが本格化しました。この動きに対し、トランプ政権はこれを撤回するよう各国からバヌアツに働きかけるように呼びかけたことがガーディアン紙で報じられました。その後、各国が合意できる内容を目指してコンサルテーションが何度も行われ、修正が重ねられた結果、この決議案(A/80/L.65)が国連総会に諮られることになりました。一方、産油国であるサウジアラビアなどはこの案に対する修正案(A/80/L.66, A/80/L.67, A/80/L.68 および A/80/L.69/Rev.1)を提出し、国連総会決議の当日を迎えました。このように反対の動きがあったにも関わらず、多くの国々の賛同により採択に至りました。

国連の専門家らはこの決議に対して「世界の正義と法の支配を確保するために極めて重要」と歓迎する声明を発表しました。また、今後のCOPなどの気候変動交渉や「化石燃料からの移行に関する会議(Conference on Transitioning away from Fossil Fuels)」など、あらゆる国際会議の場においてICJの勧告的意見に基づくよう求めました。

アメリカのように一部の国のリーダーが強力に化石燃料回帰を進める中、ICJの判断を多国間協力の強化と気候変動対策の加速へと確実に結びつけることを決意した今回の採択は、重要なターニングポイントとなることでしょう。

どんな内容?勧告的意見で求められた国家の義務とは

今回の決議で各国が支持したICJの「勧告的意見」とは、どのような内容なのでしょうか。改めて、以下にポイントを書き出しておきます。

<ポイント>

  • 気候変動に関連する条約、人権条約、その他環境関連の条約、国際慣習法等に基づき、すべての国には人為的な温室効果ガスから気候系を保護するために適切な措置を講じる義務がある
  • 気候変動は人権を著しく損なうもので、「クリーンで健康かつ持続可能な環境」は、多くの人権を享受するための前提条件である
  • パリ協定に基づく世界の平均気温の上昇を抑制するための温度目標は「1.5℃」である
  • 各国のNDC(排出削減目標)は、各国の裁量に委ねられるのではなく「その締約国が達成できる最高水準の野心」を反映しなければならず、かつ後退させることなく強化し続けることが必要がある。
  • 各国は、最新の科学に基づく相当の注意(デュー・デリジェンス)の基準のもとで気候系への重大な損害を防止しなければならない。これには、企業等の民間主体(private actors)の活動を規制する義務も含まれる。
  • 化石燃料の生産、化石燃料の消費、化石燃料の探査許可の付与、化石燃料補助金の提供などにより、温室効果ガス排出削減を怠った場合は、国際法違反となる恐れがある。
  • 気候系を守る義務は、各国が国際社会全体に対して負うもの(erga omnes partes)であるため、第三国が対策を怠った国の責任を問うこともできる
  • 国際法上の不法行為が認められた場合、直ちにその行為を停止し、再発防止策を講じ、気候変動の被害国に対しては原状回復、補償、および満足できる形での完全な賠償を行う
  • (参考:「気候変動に関する国家の義務についての勧告的意見」気候ネットワーク作成暫定和訳

ICJの勧告的意見は、様々な気候訴訟で引用され、司法の面から気候変動対策を求める動きを後押ししています。今回の国連総会の決議によって、さらにその勢いが強まることが期待されます。

日本も気候変動対策を!

この決議を受けて、各国は勧告的意見に示された国家の義務を実行していくことが求められます。具体的にこれから日本はどうするべきなのでしょうか。
まず、国の削減目標は国の最高水準の野心を反映し、時間の経過とともにより厳しくなるべきという点について。日本の現在の削減目標は、2030年度までに46%、2035年度までに60%(2013年度比)です。しかし、気温上昇を1.5℃以内に抑制するためには、2030年度までに69%、2035年度までに81%の削減が求められています(Climate Action Trackerより)。日本には削減目標の引き上げが必要です。また、化石燃料の生産、化石燃料の消費、化石燃料の探査許可の付与、化石燃料補助金を規制しなければならないという点については、残念ながら日本は化石燃料への依存から脱却する意思が見て取れていないのが現状です。日本は化石燃料に多額の予算を付け、長期脱炭素オークションにおいてLNG火力の新設や石炭火力の改修を支援し、世界各地において化石燃料の調達に深く関与しています。官民によるこれらの動きを制限しなければ、国際法上の義務違反となる可能性があります。

日本は今回の決議案に賛同はしましたが、現状は勧告的意見で必要と示された気候変動対策から乖離しています。今回の決議では、1.5℃目標の遵守に向けては、COP28で賛同された(2030年までに)世界の再エネ設備容量を3倍に、そしてエネルギー効率の改善率を2倍にする必要があると示されました。この道に沿って、日本が責任ある政策の見直しを断行することを期待します。

参考:これまでの経緯

  • 2021年9月 太平洋島嶼国のバヌアツは、気候変動に関してICJの勧告的意見を求める意向を表明
  • 2022年7月28日 国連がクリーンで健康かつ持続可能な環境の権利を人権として認める
  • 2023年3月29日 気候変動に関する国家の義務について国際司法裁判所に勧告的意見を求める決議が採択
  • 2025年7月23日 国際司法裁判所が、すべての国家に気候システムを保護する国際法上の義務があるとの勧告的意見を示す
  • 2026年5月20日 国連総会が国際司法裁判所の勧告的意見を歓迎・支持する決議を採択

参考資料

国連プレスリリース UN experts welcome UN General Assembly resolution supporting world court’s climate change ruling(リンク
国連 General Assembly Strengthens Fight against Climate Change, Adopting Contentious, Yet Broadly Supported Draft among Several Texts on Myriad topics(リンク

国連「THE HAGUE – The International Court of Justice (ICJ) delivers its Advisory Opinion on the Obligations of States in respect of Climate Change」(WebTVリンク

JBCパートナー団体からの発信

気候ネットワーク「【プレスリリース】国際司法裁判所「気候変動に関する国家の義務についての勧告的意見」暫定和訳の公開について」(リンク
気候ネットワーク「【プレスリリース】ICJ、気候変動で歴史的判断 国の「法的責任」を明示 ―気候正義の新時代に向けて―」(リンク
気候ネットワーク「ICJ勧告的意見Q&A」(リンク

CAN-JAPAN プレスリリース「国連総会が気候変動における歴史的な決議を採択—ICJ勧告的意見を賛成多数で支持したことを歓迎する」(リンク
CAN-Japan 【要請書】気候変動に関する国家の義務についての国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見の 国連総会決議への支持を求める要請書(リンク

WWFジャパン 国際司法裁判所が国家の気候変動対策の義務を認める!(リンク

その他の関連資料

ファクトシート】長期脱炭素電源オークション ─石炭火力の延命策(JBC)