【レポート】UNFCCCがCOP28の基礎資料となる報告書を発表


9月8日、国連は、11-12月にアラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催される第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の基礎資料となる報告書『Technical dialogue of the first global stocktake 』を発表しました。この報告書は、世界の温暖化抑制対策の進展を評価したもので、世界は気温上昇を抑えるためにパリ協定で定めた長期目標の達成に向けた経路に沿っていないと指摘し、各国はあらゆる面でさらなる行動が必要であると警告しています。

グローバル・ストックテイク(GST)における技術的対話

この報告書は、パリ協定の目標達成に向けた世界全体の進捗状況を評価する仕組みである「グローバル・ストックテイク(Global Stocktake: GST)における、2022年と2023年に行われた技術的対話をまとめたものです。技術的対話の議論の包括的な概要を提供し、パリ協定の実施におけるギャップを埋め、課題や障壁に対処するための更なる行動の主要分野を特定し、包括的かつ事実に基づく資料としての役割を果たすものと位置づけられています。この報告書には、技術的対話から得られた17の主要な結果が、科学的情報に基づいてまとめられています。

GSTとは、パリ協定の目標の達成に向けて、世界全体で進捗状況を5年ごとに評価する仕組みのことで、(1)情報収集・準備、(2)技術的評価、(3)成果物の検討の手順で構成され、2年間をかけて実施されます。2015年のCOP21でパリ協定の目標を達成するためには何をすべきかが確認され、COP26で協議された具体的なルールブックに従って2021年から2023年にわたって情報収集、進捗度合の技術的評価が行われた結果がまとめられたものが今回発表された報告書です。これらをもとに、COP28では閣僚級が参加するハイレベル・イベントでの成果物(政治的メッセージ)の検討と採択が行われる予定です。GSTで得られた示唆は各国にフィードバックされ、国が決定する貢献(NDC)の更新に活かされることになります。

報告書は、世界は効果的な気候変動対策の経路に沿っていないと指摘し、以下の17の主要な結果(Key Findings)として、さらなる行動の必要性を説いています。

17の主要な結果(Key Findigs)

  1. パリ協定が採択されて以降、目標を設定し、世界に気候危機への対応の緊急性に関するシグナルを発することで、気候変動行動を推進してきたが、進展はあるものの、あらゆる面で、さらなる行動が必要とされている。
  2. 持続可能な開発と貧困撲滅に向けて努力する中、気候変動の脅威に対する世界全体での対策を強化するため、各国政府は、気候変動への強靭性および低GHG排出策の開発を主流とするシステム変革を支援する必要がある。システムの変革に向けた取り組みを強化するためには、当事者(締約国)以外のステークホルダー(非政府)による信頼性が高く、説明責任を果たし、透明性のある行動が必要。
  3. システムの変革は、機会の拡大につながるが、急すぎる変化は混乱を招く。多様性を受け入れること(包摂性)と衡平性に焦点を当てることで、気候行動と支援における野心を高めることができる。
  4. 世界の排出量は、パリ協定の気温目標の達成を目指すための世界の緩和経路(パスウェイ)に沿っておらず、産業革命以前の水準より1.5℃の気温上昇に抑えるために、野心的な行動を強化し、既存の約束を実施する余地は急速に狭まっている。
  5. 2030年までに世界の温室効果ガス排出量を2019年比で43%削減し、さらに2035年までに60%削減し、2050年までに世界全体でCO2排出量をネットゼロにするためには、国内の緩和策の実施とともに、さらに野心的なNDCの目標設定において、より多くの行動と支援が必要
  6. CO2およびGHGの排出ネットゼロを達成するには、あらゆるセクターと状況におけるシステムの変革が必要であり、そのためには再生可能エネルギーを拡大する一方で、すべての排出削減対策が講じられていない化石燃料関連事業を段階的に廃止し、森林破壊を終わらせ、CO2以外の温室効果ガスの排出を削減し、供給側と需要側の両方の対策を実施することを含む。
  7. 公正な移行は、さまざまな状況に合わせて対応するアプローチ(個別対応)によって、より強固で衡平な緩和の成果を支援することができる。
  8. 経済的多様性は、対応策の影響に対処するための重要な戦略であり、さまざまな状況で適用可能なオプションがある。
  9. 気候変動が、世界中のすべての国、地域社会、人々を脅かす中、増大する影響を軽減、特に、変化に対する備えが最も不十分で、災害から回復する能力が最も低い人々にとっての影響を軽減し、それに対応するためには、適応行動を強化するとともに、損失と損害(ロス&ダメージ)を回避し、最小限に留め、対処するための取り組みを早急に強化することが必要である。
  10. 全体としては、適応行動と支援に関する計画や公約(コミットメント)の野心は高まっているが、実際に観察された適応努力の多くは、断片的、漸進的、分野特定的であり、地域間に不均等に分散している。
  11. 適応が周知され、地域の状況、人口、優先事項に応じて推進される場合、適応行動と支援の適切性と有効性の双方が向上し、これにより変革的適応(Transformative Adaptation)も促進される。
  12. 損失と損害(ロス&ダメージ)を回避し、最小限に留め、対処するには、リスクを包括的に管理し、影響を受けたコミュニティに支援を提供するため、気候政策と開発政策の双方にまたがる早急な行動が必要である。
  13. 損失と損害(ロス&ダメージ)を回避し、最小限に留め、対処するための適応支援と資金調達準備は、拡大された革新的な資金源から急速に増大させる必要がある。資金の流れは、緊急かつ増大するニーズに対応するため、気候変動に強靭(レジリエント)な開発と整合性を持たせる必要がある。
  14. 開発途上国における気候行動への支援の流れを増強するためには、行動を可能にする主要な手段であり続けている国際的な公的資金を戦略的に投入し、アクセス、所有権(オーナーシップ)、影響といった有効性を継続的に高める必要がある。
  15. 資金の流れー国内外および官民にかかわらずーを、低GHG排出型で気候変動に強靭な開発への経路と整合させるには、何兆ドルもの資金を開放し、規模を超えた投資を気候変動対策にシフトさせる機会を創出する必要がある。
  16. 開発途上国のニーズを支援するためには、新技術の革新、開発、移行を加速させるとともに、既存のクリーン技術を迅速に展開する必要がある。
  17. 能力の習得・構築の支援(キャパシティ・ビルディング)は、広範かつ持続的な気候変動対策を実現するための基盤であり、あらゆるレベルにおいて長期にわたって能力を高め、維持できるように、国主導のニーズに応じた効果的な協力が必須である。

排出削減の大幅な引き上げに向けて

報告書は、温室効果ガス排出量の世界的な削減が進んでいないことについて議論し、排出削減目標を大幅に引き上げる必要があり、その目標を達成するためには緩和策も拡大する必要があると述べています。本報告書のリリースにあたって掲載された国連ニュースのタイトルが、「気候変動目標達成の『窓』は急速に閉ざされつつある」と題されているように、残された時間は着実に少なくなっています。今までの経済発展を重視する社会の在り方を見直し、世界が一団となって気候変動を抑えるための実質的な行動に移行することが急がれます。

政策決定者がこの報告書の内容を真摯に受け止め対応することが求められます。

関連情報

UN News: Window to reach climate goals ‘rapidly closing’, UN report warns (Link)
Technical dialogue of the first global stocktake. Synthesis report by the co-facilitators on the technical dialogue (Link)
Technical dialogue of the first global stocktake Synthesis report by the co-facilitators on the technical dialogue (PDF)

作成・発行:United Nations(国連)
発行:2023年9月8日