米環境NGO レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)をはじめとするNGOが、第17版となる年次報告書『化石燃料ファイナンス報告書2026〜気候カオスをもたらす銀行業務〜(原題:Banking on Climate Chaos 2026)』を発表しました。
本報告書は、2021~2025年のにおける世界の民間銀行65行による化石燃料産業への資金提供をまとめたものです。約2,900社の化石燃料企業への融資・引受を分析した結果、2025年に世界の銀行が化石燃料産業に提供した金額は9,060億ドルと過去最高を記録し、2024年比で8%増加していたことがわかりました。また、パリ協定以降の10年間に、8.7兆ドルもの資金が化石燃料(石油、ガス、石炭)に提供されていたことも明らかになっています。
要点
- 世界の銀行による化石燃料企業への融資額は、9,060億ドル(2024年比 8%増)と過去最高を記録
- 化石燃料企業への資金提供(パリ協定発効以降、2016〜2025年)の総額は8.7兆ドル(石油、ガス、石炭部門)
- 世界大手銀行65行のうち、26行は2025年に化石燃料への資金提供を削減
- 米国、カナダ、日本、中国、英国、EUの「ビッグ6」と称される金融セクターが世界の化石燃料へのファイナンスの87%を占めている。特に米国の銀行による世界全体に占める割合が拡大しており、世界総額の32%(2021年の28%から増加)を占め、世界最大の化石燃料資本の供給源となっている。一方で、欧州の銀行は明確な減少傾向にある。(図1)
- ワースト12銀行が、世界の化石燃料ファイナンスの3分の1以上を少数の顧客に提供しており、提供元(銀行)と借り手(顧客)は集中傾向にある
- 化石燃料拡大企業への資金提供は5,080億ドル(2024年比 27%増)で過去最高の増加率を記録
図1.米国、カナダ、日本、中国、英国、EUの金融セクターによる化石燃料ファイナンスの割合推移

ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)の崩壊後、各行は気候変動に関する方針を弱体化させています。調査対象の北米の銀行15行のうち、12行は化石燃料に関する実質的な方針を持っておらず、JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックスは、石炭および北極圏へのファイナンスの除外方針を放棄し、状況に応じて対応するデューデリジェンス基準へと変更しています。さらに、2020年代のエネルギー危機(ロシアによるウクライナ侵攻、米国とイスラエルによるイラン攻撃)が化石燃料、特にLNG関連事業への資金提供を拡大させる要因となりました。
日本の3メガバンクによる化石燃料ファイナンス
日本の3メガバンク(MUFG、みずほ、SMBC)は、2025年の資金提供でもワースト12(Dirty Dozenes)にランクインしているばかりか(化石燃料ファイナンスのランキング:MUFG 3位、みずほ 4位、SMBC 9位)(図2)、昨年よりランクを上げています。3行により化石燃料事業への資金提供の合計額は1,250億ドル(前年比で17%、180億ドル増)、2021年以降の化石燃料への資金提供額は5,620億ドル、資金提供拡大企業への資金提供は690億ドルとなっています。
1,250億ドルという額は、世界大手65行による化石燃料への資金提供総額の13.7%を占めていることになります。
図1に示されたように、2021~2025年の間の化石燃料ファイナンスにおける日本の金融機関による化石燃料産業への出資割合は10.71%と、2021年からあまり変わっていませんが、化石燃料ファイナンスの中心である「ビッグ6」のひとつとなっています。3メガバンクはいずれも2024年から2025年にかけて化石燃料への資金提供額を増加させていますが、前年比180億ドルの増額の主な理由はMUFGによるもので、MUFGによる化石燃料ファイナンスの1年間の増加額は65行中最大額の約82億ドル超でした(前年比で21.1%増)。
図2.化石燃料ファイナンス世界ランキング

3メガバンクの顧客
2025年の化石燃料拡大への提供額の半分以上は、大規模な石油・ガス、LNG、およびパイプラインの拡大計画を有する顧客に投じられています。特に米国拠点の顧客へのファイナンスが大きな割合を占めています。
図3.

日本政府がLNGの調達先の多様化を図るとともに、脱炭素化に向けたトランジション燃料として位置づけてインフラ投資を進めていることを踏まえ、LNG事業の拡大を行う企業への資金提供が増加していることが数字に表れています。3メガバンクすべてが大規模なLNG事業拡大を担う顧客に資金提供を行った銀行ワースト10にランクインしていますが、中でもMUFGによる提供額はワースト10の中でも89億ドルと突出しています(みすほ56億ドル、SMBC40億ドル)。
2020年代のエネルギー危機において
報告書は、化石燃料への依存が世界的な不安定化の要因となっていると指摘しています。一部の銀行は、より安価で安全な再生可能エネルギーへの資金提供を進める代わりに、化石燃料への資金提供をさらに拡大しています。すでに、世界の電力需要の増加分は再生可能エネルギーで賄われています。日本のメガバンクを含め、世界の銀行は化石燃料の拡大に向けた資金提供を直ちに停止し、化石燃料の全部門へのファイナンスを縮小し、実績のある再生可能エネルギーへの資金配分を拡大する必要があります。
Banking on Climate Chaos 2026
ウェブサイト:Banking on Climate Chaos 2026
共同プレスリリース(日本語):「化石燃料ファイナンス報告書 2026」発表 〜世界65銀行、パリ協定以降に8.7兆ドルを提供(2026/6/9)
関連情報
「化石燃料ファイナンス報告書 2026」要約版(日本語PDF)
『化石燃料ファイナンス報告書 2026』 参考資料 3 メガバンクの資金提供分析(日本語PDF)
作成・発行:Rainforest Action Networkほか
発行:2026年6月8日
