【レポート】IPCC第6次評価報告書 第2作業部会報告書(影響・適応・脆弱性)発表


IPCC第6次評価報告書WG2報告書:
人為的な気候変動が広範囲に悪影響を与えていることが明らかに

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第55回総会及び同パネル第2作業部会(WG2)によるIPCC第6次評価報告書(AR6)WG2報告書(AR6/WG2報告書)の政策決定者向け要約(SPM)が承認されました。

AR6/WG2報告書は、気候、生態系、人間社会の相互作用に着目し、観測された気候変動の影響と脆弱性、その影響に対してどのように適応できるのか、さらに将来のリスクの管理についてをまとめたものです。2021年8月に発表された第1作業部会報告書(自然科学的根拠)が「人間の影響が気候システムを温暖化させていることに疑う余地はない」と明示したのに続き、本報告書では「人為起源の気候変動はより頻繁で激しい異常気象を伴い、自然の気候変動を超えて、自然や人間に広範な悪影響と関連する損失や損害を引き起こしている。」と結論付けています。

本報告書で示された、気候変動による影響とリスクの分析の中から、頭に入れておくべきポイントを抜き出しておきます。

  • 異常気象の頻度と強度が高まるなど、人間活動の影響による気温上昇にともなう気候変動の悪影響が広範に広がっており、その損失や損害は想定し ていたよりも深刻になっている。
  • 気候変動の影響とリスクはますます複雑化し、管理が難しくなっている。
  • 気温が上昇するとリスクは急速に高くなるが、気候変動の影響は今後さらに悪化すると予測される。本報告書で特定している127の主要なリスクによる影響は、現状に比べて数倍に大きくなる可能性がある。
  • 温暖化を1.5℃までに抑えることができれば、予測される人間と生態系への損失と損害を削減することはできるが、完全になくすことはできない。
  • 気候変動の生態系や人間への影響は不均衡に現れており、地域や社会によって大きく異なる。33億~36億人が気候変動に対して非常に脆弱な状況で生活していると見られており、特に、気候変動に対して脆弱な地域と社会への影響が大きい。
  • 気候変動に適応するための試みに一定の効果は出ているが、十分ではない。脆弱なコミュニティにはさらなる支援が必要。適応策が決定的に重要。政治的コミットメントと実行、制度的枠組み、政策と手段、十分な財政的資源の動員、モニタリングと評価、包摂的なガバナンスのプロセスがそれを可能にする。
  • 気候変動の脅威や、適応・緩和における役割を考えると、生物多様性や生態系の保護が重要。
  • 人間による持続可能ではない開発が進めば、気候災害の危険性はますます高まる。このまま排出傾向が変わらなければ、近い将来 、さらなる気候変動による悪影響を受けることは避けられない。

 

報告書の最後(SPM.D.5)には、気候変動が人間と自然にとって脅威であることには疑いの余地がなく、今後10年間の社会の選択と行動が、どのような経路を経てどの程度まで気候レジリエンス(強靭性)のある社会を構築できるかを決定づけると述べられています。温室効果ガス排出量を急速に減少させるための排出削減策と適応策の実行をこれ以上遅らせるならば、残された時間は急速に失われてしまうでしょう。重要なのは、段階的なステップではなく、包括的かつ広範囲にわたる転換を早急に行うことです。

IPCC:Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg2/

JBCパートナー団体によるIPCC AR6に関する発信

関連情報

環境省:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第2作業部会報告書の公表について http://www.env.go.jp/press/110599.html