【レポート】IEAが日本のエネルギー政策を分析した報告書を発表


2021年3月4日、国際エネルギー機関(IEA)が、日本のエネルギー政策を分析した報告書「Japan 2021」を発表しました。IEAが各国のエネルギー政策を総合的に評価する取り組みのひとつとして日本が取り上げられた本報告書では、日本がクリーンエネルギーへの移行を促進するには、イノベーションと市場の再編が必要と指摘しています。

東日本大震災とそれに続く福島第一原発事故からの約10年間に、日本が効率的で回復力のある持続可能なエネルギーシステムの開発を進めてきたことを評価する一方で、2050年までにカーボンニュートラル(排出量ネットゼロ)にするという野心的な目標を到達するためには、排出量ゼロ電源の割合を2030年までに引き上げることが必要であると述べています。

ポイント!

  • 過去10年間、日本は再生可能エネルギーの拡大、原子力発電所の一部再稼働、エネルギー効率の向上により、化石燃料の輸入量の削減、さらには温室効果ガス(GHG)排出量の継続的な削減を達成してきた。
  • 日本の2018年のGHG排出量は2013年比で12%減少し、2009年レベルに戻った。
  • 2019年の日本の一次エネルギー供給量全体における化石燃料の割合は88%と依然として高く、IEA加盟国の中で最も炭素集約的な経済国の1つである。
  • ゼロエミッションへの投資促進とともに、電力システムの柔軟性を向上させるには、追加の規制改革が重要。

このような日本のエネルギーシステムの課題分析の結果に対し、安全で適正な価格の持続可能エネルギーの将来的な利用拡大に役立つ推奨事項が記されています。

推奨事項

  • さまざまなエネルギーの開発可能性を考慮した脱炭素を2050年に実現させるためのロードマップを含むエネルギーシナリオを計画する。
  • 経済全体に効率的で低炭素な技術への投資を促進させるためのカーボンプライシング(炭素の価格付け)を導入する
  • 電力網(グリッド)への投資を奨励し、多様な再生可能エネルギーの大規模シェアを費用面で効果的に組み合わせることができるように電力システムを改善し、エネルギーミックスにおける低炭素発電源の割合を確保し、電力供給の安全性を高める。
  • 電力およびガス市場の改革を進め、「電力・ガス取引監視等委員会」をより独立性の高い規制当局にするよう検討する。

IEAの事務局長であるファティ・ビロル博士(Dr Fatih Birol)は、「日本が2050年カーボンニュートラルを達成するためには、低炭素技術の展開を加速し、規制の障壁を取り除き、エネルギー市場での競争を激化させる必要があります。」と述べています。

リンク

IEAプレスリリース:Innovation and market reform needed to drive Japan’s clean energy transition, IEA policy review finds

*このプレスリリースより、IEAサイトに登録することでフルレポート(PDF)「Japan 2021 Energy Policy Review)」をダウンロードすることができます。

作成・発行:IEA(International Energy Agency)
発行:2021年3月4日