【レポート】調査報告から見える日本から石炭産業への巨額の投融資


ドイツの環境NGOウルゲワルド、フランスのリクレイム・ファイナンス、世界の環境団体が石炭産業に投融資する世界の金融機関・投資家に関する調査結果「Financing Global Coal Exit 2021」を発表しました。これは、ウルゲワルドの「脱石炭リスト(Global Coal Exit List:GCEL)」に掲載された世界の石炭採掘や石炭火力発電・石炭インフラ開発などに関わる企業1,032社につき、石炭産業へのお金の流れを調査したものです。中には日本の金融機関、石炭関連事業に関わる企業なども網羅されています。

この調査で明らかになった日本から石炭産業への投融資状況

石炭産業への金融機関の融資額では日本の3メガバンクがワースト3を独占(3年連続)

金融機関から石炭産業への資金の流れを見ると、中国、米国、日本、インド、英国、カナダの6か国の銀行からの融資が86%を占めています。
2019年1月から2021年10月にかけて世界の376の民間金融機関は、約3,630億米ドル(約41.7兆円)を石炭産業に融資しており、融資総額の銀行ランキングでは、第1位 みずほフィナンシャルグループ(約3.8兆円)、第2位 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)(約2.6兆円)、第3位 三井住友フィナンシャルグループ(約2.3兆円)とトップ3を日本の銀行が独占しています。
ウルゲワルドの研究員は、6か国の民間銀行がこれまでと同じように石炭産業への融資を続けるのであれば、1.5℃目標を達成するのに残された時間内に石炭から脱却することはできないと警告しています。


機関投資家も石炭産業を支援

機関投資家から石炭産業への資金の流れにおいても、米国、日本、インド、カナダ、英国、中国の6カ国の投資家が80%以上を占めています。
世界の4,900以上の機関投資家による石炭産業の株式と債券の保有額は1.2兆米ドル(約138兆円)を超えています(2021年11月時点)。機関投資家ランキングではBlackRockを筆頭に1位から4位を米国の機関投資家が占めていますが、5位に約3.2兆円の投資を行っていると分析されている日本の「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」がリストされています。


この調査報告から、3メガバンクを含む日本の民間銀行、および国民から預託された公的年金積立金の管理、運用を行っているGPIFから石炭産業に巨額の資金が流れていることが明らかです。

この調査で名前が挙げられた金融機関や機関投資家の中には、ネットゼロにコミットするイニシアティブへの加盟機関が多数含まれていることを踏まえると、パリ協定1.5℃目標と整合すべく、石炭および化石燃料への支援を行わないための方針の厳格化が強く求められます。

ウルゲワルドによる調査報告(英語)PDF
脱石炭リスト(GCEL)投融資調査のウェブサイト(英語)Finance Research | Global Coal Exit List(Link
脱石炭リスト(GCEL)のうち、日本企業のリスト(日本語:国際環境 NGO 350.org Japan作成)PDF