【レポート】太陽光・風力発電の割合が過去最高に:Ember発表


英シンクタンクEmberが4月12日に発表したレポート『Global Electricity Review 2023』は、2022年の再生可能エネルギーによる発電量が過去最高に達したと記しています。

世界では風力発電と太陽光発電の記録的な増加による電力部門の脱炭素化が進んでおり、EmberのアナリストMałgorzata Wiatros-Motyka氏は、「化石燃料の時代は終焉に向かい始めた。わたしたちはクリーンパワーの時代に入り始めている。」と述べています。

第4版となる本レポートの作成にあたり、Emberは世界の電力消費量の93%を占める78か国のデータを分析し、残りの発電量については推定しました。その結果、太陽光発電と風力発電の割合が増大したことが明らかになりました。

  • 2022年の世界のエネルギー発電量に占める太陽光と風力の割合は、前年から10%増加して過去最高の12%に到達した。
  • 太陽光発電は前年から24%増え、18年連続で最も成長ペースが速い電力源となっている。風力発電は前年から17%増だった。
  • 風力と太陽光発電の増加分(557TWh)のみで、2022年の世界の電力需要の増加分(694TWh)の8割に充当する。
  • 再生可能エネルギーの割合は増加しているが、電力部門からの温室効果ガスなどの排出は1.3%増加し、過去最大となった。石炭火力発電は、1.1%増。ガス火力発電は、価格高騰により0.2%減となった。
  • 2022年に建設された新規のガス火力建設は、31GWと過去18年で最低となったが、石炭火力発電は段階的に縮小する傾向が見られるものの、過去7年間で閉鎖となった発電所の数が最も少なかった。
  • 化石燃料による発電は2023年から減少に転じ、排出量においては2022年がピークで、その後は発電部門からの排出は減少していく新しい時代になると見ている。

 

Emberは、2022年の世界の発電において、石炭36%、ガス22%、その他の化石燃料3%と依然として化石燃料が最も大きな割合を占めていても、太陽光と風力が記録的な伸びを示したことは、2022年の発電量の変化で最も大きかったと指摘し、発電目的での石炭や石油、ガスの使用は2023年に減少に転じると見通しています。

日本については、電力部門のCO2排出量が世界で5番目に多く(4億6,800万トン)、世界の発電による総排出量の3.8%を占めていること、再生可能エネルギーの利用が増えてはいるものの、化石燃料への依存度が高いことなどを指摘しています。

  • 太陽光による発電量が総電力量に占める割合は総電力量の10%だが、風力は0.9%に留まった。太陽光・風力を合わせた割合は11%と、2015年と比較すれば約3倍増加しているが、世界平均には達していない。
  • 日本の発電部門の排出原単位は 484 gCO2/kWhと、世界平均の436 gCO2/kWhよりわずかに高い。
  • 日本国民一人当たりの年間電力需要は7.8MWhで、世界平均の3.6MWhの2倍に相当し、また、一人当たりの電力部門からのCO2排出量は3.8トンで、世界平均の1.6トンの2倍以上となっている。
  • 2022年の日本における太陽光の発電量は、総発電量の10%(99 TWh)となったが、さらなる拡大が求められる。さらに、風力発電の割合は0.9%(8.6 TWh)に留まっており、諸外国に比べて発展の遅れが指摘されている。
  • 2022年の日本の電力需要は、1月の寒さや夏の暑さの影響により2010年以降で最大の増加となった。これにともない、電力部門からの排出量が10年ぶりに増加(2.1%)となった。
  • 太陽光発電が総発電量に占める割合が初めて10%を突破した。ガス火力発電の割合は5年連続で減少し、34%となったが、石炭火力は、原子力発電と水力発電の減少を補うために3.1%と大幅に増加した。風力発電は、追加容量の導入が進まなかったことに風の状況が最適ではなかったことが重なり、4.4%減となった。
  • 世界の年間電力需要が増加するのに反し、日本の年間電力需要は、2000年の988TWhから2022年の967TWhへと、20年間で2.1%減少している。電力需要が減少しているにも関わらず、原子力発電所の運転停止による化石燃料への高依存から、日本のCO2排出量は20年間で19%増加した。発電部門の排出原単位で見ても、2000年の397 gCO2/kWh から、2022年の484 gCO2/KWhと増加している。

 

*Ember報告書より気候ネットワーク作成

IEAのネットゼロシナリオに従えば、日本は2035年までに電力部門からの排出をネットゼロ(実質ゼロ)にする必要があり、そのためにはエネルギー基本計画(素案)で引き上げた2030年までの再生可能エネルギーの割合(36~38%)の目標値をさらに引き上げなければなりません。ところが、日本政府は原発の再稼働を進めるとともに、アンモニア混焼を積極的に推進しています。Emberは、アンモニア混焼に注力することは、排出量削減のためにはコスト高で効果がでない可能性が高いと指摘した上で、日本がASEAN諸国に対してアンモニア混焼の導入を支援する協定を結ぶことで、東南アジアの再エネへの移行を遅らせることになるのを懸念しています。

本レポートから、世界で再エネが急速に拡大していることは明白です。日本も、一刻も早く化石燃料への依存を下げ、アンモニア混焼に多大な費用と労力をつぎ込むのではなく、再エネの拡大を進めるべきです。

関連リンク

Global Electricity Review 2023(リンク
Electricity Data Explorer(リンク

 

作成・発行:Ember
発行:2023年4月12日