【レポート】日本の2030年気候目標はさらなる強化が必要


2021年3月4日、Climate Action Trackerが「日本の2030年気候目標を強化するための1.5℃目標に整合する指標(原題:1.5°C-consistent benchmarks for enhancing Japan’s 2030 climate target)」を公開しました。

この政策概要は、Climate ActionTrackerとその連盟団体であるNewClimateInstitute、Climate Analyticsの最近の分析から、パリ協定の長期的な1.5°C目標を達成するために必要な対策と日本の政策を一致させるための、2030年以降の経済全体および部門ごとの指標(ベンチマーク)について解説したものです。


ポイント!

  • 1.5℃目標と整合するためには、日本は経済全体で、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を2013年レベルから62%削減させる必要がある。
  • 部門ごとについては、2030年までにあらゆる部門で変革が求められる。特に電力部門は、依然として数の多い石炭火力発電所を2030年までに段階的に廃止し、再生可能エネルギーの発電量を約60%以上に増やす必要がある。合わせて、エネルギー需要を削減する取り組みを劇的に強化する。
  • グリーン水素(再生可能エネルギーで生成される水素)は、直接的な電化が難しいさまざまな産業プロセス、重量輸送、航空分野などにおける脱炭素化の鍵のひとつではあるが、この場合の水素利用は、他の手段がない場合に限定し、さらに水素が再生可能エネルギーから生成されるものであることが重要。
  • 2050年ネットゼロには、既存の技術(たとえば、洋上風力を含む風力発電、太陽光発電、ネット・ゼロ・エネルギービル/ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEB / ZEH)、電気自動車(EV))の導入を、2030年までに可能な限り進めておくことが不可欠。

この政策概要で示されている指標は、世界各国が今世紀後半において、実証されていない排出削減技術に過度に依存しなくてもすむように考えられたものです。本概要は、現在の日本の削減目標はパリ協定の1・5度目標や、2050年の温室効果ガス排出実質ゼロを達成するには不十分であるとして、2030年に向けた国別約束(NDC: Nationally Determined Contribution)の見直しプロセスの検討が重要だと述べています。また、2020年12月に策定したグリーン成長戦略に示されたように革新的な技術の開発への追加投資を行うことが、2050年までにネットゼロを達成することを促進するでしょうと結んでいます。

各国の削減目標引き上げが焦点となる次回の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、11月の開催が予定されています。

リンク

日本の1.5°Cベンチマーク ~ 2030 年温暖化対策目標改定への示唆~ (PDF)
1.5°C-consistent benchmarks for enhancing Japan’s 2030 climate target(プレスリリース)(PDF)
March 2021

作成・発行:Climate Action Tracker
発行:2021年3月4日