2021年5月14日、英国のシンクタンクE3Gによる主要7カ国首脳会議(G7)の石炭火力発電の段階的廃止を評価する『G7石炭スコアカード2021年:脱石炭の道筋を明示、G7のリーダーシップを発揮する機会』が発表されました。この報告書は2015年10月に初めて発表され、今回が第6版となります。
2021年はG7が石炭火力発電の段階的廃止に取り組む年
2021年度の分析では、以下のことが明らかになりました。
- G7諸国の石炭火力発電容量は、経済協力開発機構(OECD)加盟国及び欧州連合の68%を占めています(2021年5月現在)。G7の石炭火力発電を削減する取り組みは、広範囲にわたる2030年までの脱石炭に必要不可欠です。
- 2010年以降、G7諸国はすでに約174GW相当の石炭火力発電所を廃止しており、さらに2030年までに138GWの廃止が予定されています。これは、G7全体の石炭火力発電容量の約59%が2010年以降すでに閉鎖されている、または、2030年までに閉鎖が予定されていることを意味します。
- E3Gの石炭火力発電報告書の発表以来、初めて、全ての国が脱石炭に向けて前進していることが伺えます。しかし、日本は6年連続で比較評価基準である市場動向と政府政策の状況、さらに脱石炭に向けた取り組みで最下位に留まっています。各国政府の前向きな政策は国内の段階的廃止の加速とG7の協力を支えています。これは、欧州連合、米国、イギリスなどの主要経済国が、2035年までに二酸化炭素を排出しない発電システムの実現に向けて前進していることを表しています。
各国の進捗
- カナダ、フランス、イタリア及びイギリスではすでに複数の石炭火力発電所が閉鎖されており、完全な石炭火力発電の段階的廃止に向けて進んでいます。
- ドイツでは、閣議決定された気候保護法の改正案により2038年の石炭火力発電所の廃止期限を2030年に前倒しすることが求められています。また、欧州連合域内排出量取引制度の価格と安価な再生可能エネルギーにより、石炭火力発電の経済合理性がなくなっています。
- 米国では、バイデン政権の2035年までに電力部門の脱炭素化を目指す公約は2030年頃に石炭火力発電を停止することを示唆しています。
- 日本の2030年までに温室効果ガスを46〜50%削減するという公約は電力部門の脱炭素化を必要としています。2030年までの非効率な石炭火力発電のフェードアウト計画をさらに拡張し、2030年までに完全なフェーズアウトを期待しています。まだ建設されていない2つの案件が中止されたことで、G7全体で新規の石炭発電所はないという見通しが立ちました。
- 欧州連合は、1月に加盟国の外務大臣が世界的に石炭火力発電を段階的に廃止することを呼びかけたことを受け、石炭火力発電の廃止を呼びかける先導的主体となりました。これにより、G7の取り組みを強化し、国際的な約束を欧州やその他のOECD諸国内の取り組みと結びつける機会が増えることになります。
E3Gの提言:石炭火力発電に関するG7のリーダーシップ
E3Gは、G7各国の進捗状況と世界的な脱炭素の流れの分析に基づき、石炭火力発電からの移行を加速するために、G7が一丸となって取り組むべき3つの提言を行なっています。
- 電力部門の変革には、石炭からの撤退と再生可能エネルギーの拡大が必要であることを認識
G7は加盟国が2030年までに石炭火力発電の廃止を目指すことを初めて明確に認識し、他のOECD諸国にも同様のことを促すべきである。 - 海外の石炭火力発電事業に対する融資の停止
G7はOECD公的輸出信用アレンジメントの厳格化に協力することを含め、海外の石炭火力発電に対する公的融資の停止を約束すべきである。 - 石炭火力発電の廃止を可能に
G7参加国は石炭火力発電の廃止を可能にする経済的手段の必要性が高まっていることを認識し、廃止を可能にするための経済的及び外交的支援を約束する必要がある。
レポートのダウンロードはこちらから
Charting the course away from coal: the G7’s leadership opportunity(Link)
CHARTING THE COURSE AWAY FROM COAL: THE G7’S LEADERSHIP OPPORTUNITY G7 COAL SCORECARD – SIXTH EDITION (PDF)
作成・発行:E3G
発行:2021年5月14日