9月15日付けのReutersの記事「Japan’s J-Power expects delay to 2030 start of Ohma nuclear power plant」中で、電源開発(以下、J-POWER)が、国内の非効率な石炭火力発電所の稼働を延長していると表明したことを受け、これまでもJ-POWERに対してエンゲージメントを継続してきたオーストラリアの団体ACCR(Australasian Centre for Corporate Responsibility)が、J-POWERは、石炭火力を延命させるべきではないとの声明を発表しました。
Reutersの記事は、J-POWERの大間原子力発電所*の建設が遅れる見通しであることから始まっています。青森県で建設工事を進めている同原子力発電所は、2029年に完了し、2030年に運転を開始する予定となっていましたが、現在、ウェブサイトでは運転開始が「未定 ※運転開始時期については、今後、具体的な工事状況等を踏まえ検討して参ります。」と表記されています。J-POWERの加藤社長は、建設計画の複雑さから、スケジュールが大幅に遅れるとの見通しを示しました。
*大間原子発電所は、プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を全炉心で使う初の「フルMOX」原発となる予定。2008年5月に建設工事を開始、2011年の東日本大震災で工事が休止に、2012年に工事再開。計画当初は2021年の運転開始を予定していたが、2014年など延期表明を繰り返している。
ACCRが問題視したのは、原発稼働の遅れに伴い、非効率石炭火力発電所の段階的廃止に関する見直しを盛り込んだ新たな中期経営戦略を発表する予定であるとした点です。加藤社長は、J-POWERが2050年までにカーボンニュートラルを達成するとの目標を変えていないと言いつつ、2030年までに非効率な石炭火力発電所を段階的に廃止することを掲げたロードマップの見直しを行う考えを示しています。データセンターによる電量需要の増加が、石炭火力の稼働を延長する方が望ましい状況になる可能性があるとのことですが、これを受け、ACCRは、J-POWERが2030年までに廃止すると予定している石炭火力4基を延命させることは、電力需要の増加に対する解決策ではないと主張しています。
J-POWERの国内火力トランジションの方向性

この図の中で、松島火力1号機は既に廃止され、2号機もGENESIS松島計画に向けて休止となっています。なお、松島火力発電所を「アップサイクル」するGENESIS松島計画は、環境アセスの途中ですが、建設費の高騰、人手不足、ガスタービンの納期延長により遅れが出ています。
ACCRの算定によると、J-POWERが2030年までに廃止を予定している石炭火力4基**は、年間約1,000万トンCO2eを排出しているため、石炭火力発電の段階的廃止計画を見直すことは、投資家にとっては、J-POWERの移行戦略の信頼性や持続可能性に関する懸念事項になるだろうと指摘しています。同時に電量需要の増加に対応するには、よりクリーンな発電や柔軟性を向上させるための投資を加速させるべきであると述べています。
**高砂1号機、2号機は、2028年度末までに廃止することが決定し、松浦火力発電所1号機は2030年に休廃止となる予定。竹原3号機についても2030年までに休廃止または予備電源化するとしている。
ACCRは、2022年と2023年にJ-POWERに対する株主提案を提出しています。2023年にACCRがアムンディ、HSBCアセット・マネジメントとともに提出した、パリ協定の目標に沿った信頼性の高い短期・中期的な削減目標を設定・開示するように求める提案に対しては、21%の株主が賛成を表明していました。その後、J-POWERは2024-2026年までの中期経営計画を発表し、2030年度までに国内の石炭火力発電5基を廃止することを約束しています。
その計画を覆し、非効率な石炭火力を延命させることは、企業として適切な判断なのか?改めて提出される中期経営計画が注目されます。
関連情報
- ACCR: Investors question J-POWER over extension of inefficient coal plants
ACCR is responding to reports that J-POWER is considering extending the operation of its domestic inefficient coal-fired power plants beyond its previously disclosed closure timeline.(リンク) - ACCR: Investor Briefing – Electric Power Development Co., Ltd (J-POWER) 2023 AGM(リンク)
- Reuters: Japan’s J-Power expects delay to 2030 start of Ohma nuclear power plant(リンク)

