【ニュース】横須賀石炭火力発電所訴訟、最高裁が却下の決定を下す


横須賀裁判_20231023

2024年10月23日、横須賀石炭火力発電所の訴訟は、最高裁の決定で幕を閉じました。この裁判は、2019年5月27日、当時の東京電力フュエル&パワー(後にJERAに移管)が計画した「(仮称)横須賀火力発電所新1・2号機」の建設計画において、環境影響評価書の変更は必要ないとした経産大臣の確定通知の取り消しを求め、地元住民ら45名(後に3名が加わる)が東京地方裁判所に提訴したものです。130万kW(65万kW×2基)という大規模石炭火力発電所で、同敷地にあった石油火力発電所よりもCO2の排出量が増え、年間726万トンというCO2を排出します。

原告は、主に以下のような論点で訴えていました。

① 気候変動の影響で住民らの生活環境が脅かされていることや、この計画がパリ協定に示されている「気温上昇を2度を十分に下回り、1.5 度を目指す」という気温目標を達成するためには、2020年以降新たな石炭火力発電所を稼働させてはならないこと
② 当該計画がリプレースだと主張し、既存の火力発電所よりも環境影響が低減するとして環境影響評価を簡略したことは違法であること
③ 環境影響評価では、当該計画が初めから燃料を石炭とすることに決めていて、CO2や大気汚染物質の排出量が少ない代替案を示さなかったことは不当であること

2023年1月27日、東京地方裁判所の不当判決、2024年2月22日、東京高等裁判所の不当判決を経て、2024年4月30日、最高裁判所に対して上告および上告受理申立をしていましたが、最高裁は、10月23日付けで却下の決定を下したのです。

弁護団および原告団は共同で以下の声明を発表し、今後あらゆる手段を尽くして石炭火力発電所の一刻も早い廃止を目指して闘い続けることを誓いました。

横須賀石炭火力発電所訴訟 最高裁却下決定についての弁護団・原告団共同声明

最高裁判所は、横須賀市周辺の住民・漁民らが、パリ協定が締結された2015年以降に計画された石炭火力発電所の新設計画について、その建設及び操業の停止を求める意味を持つ経済産業大臣の行政処分の取り消しを求める訴訟について、2024年10月23日付の決定で、原告らの上告を棄却し、上告受理申立を却下しました。「適法な上告理由・上告受理申立理由に該当しない」という定型の決定文によるもので、事件の争点について何らの判断も示さない決定でした。この結果、横須賀市における、世界の5000分の1という大量の二酸化炭素を排出する石炭火力の操業が認められることとなりました。

今日、日本でも熱中病による死亡や救急搬送が増大し、豪雨災害も頻発し、世界規模で、気候変動がますます深刻化し、早急に、温室効果ガスの排出を削減し、二酸化炭素の排出が実質的にゼロとなることが強く求められている状況にあります。その中で、二酸化炭素の排出を減らすどころか、天然ガスと比べても2倍以上の二酸化炭素を出す、石炭火力発電所を建設し操業している国は、先進工業国では日本以外にありません。イギリスは2024年9月末までに全ての石炭火力発電所の操業をやめるなど、石炭火力発電所の廃止が強く求められている中での暴挙とも言える行為です。

しかも、この訴訟では、発電所の環境影響評価が極めて杜撰なものであったことが明確になりました。石炭火力発電所は膨大なCO2を排出しますが、環境アセスメントでは代替の発電方法についての検討がなさなかったうえ、「発電所の建設で環境が改善する」という、詭弁にも等しい理由で重要な調査が省略されました。ところが、裁判所はこうした明白な違法に対してさえ口をつぐみ、違法な実務を是認してしまいました。

破局を避けるために我々に残された時間は限られています。変わらなければならないのは、政治だけでなく司法も同じです。われわれは本決定に怯むことなく、今後もあらゆる手段を尽くして石炭火力発電所の一刻も早い廃止を目指して闘い続けます。

2024年10月26日
横須賀石炭火力訴訟弁護団
横須賀石炭火力訴訟原告団

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小島延夫弁護団長の5分でわかる横須賀石炭火力訴訟(YouTubeチャンネル