【ニュース】武豊火力発電所の爆発事故、住民説明会ー住民は再稼働に反対


2024年1月31日に発生した、JERAが運営する武豊火力発電所(愛知県武豊町)での爆発事故について、JERAによる地域住民への説明会が5月25日に開催されました。

事故当日、木質ペレットを保管するバンカー付近から出火した火災は、ベルトコンベヤーに延焼し、ボイラー建屋の壁面は爆発で損壊しました(写真)。その後、武豊火力発電所は、運転を停止しています。事故後、JERAはホームページに調査状況を簡単に報告するのみで、数か月間も近隣住民への説明を行いませんでした。

そしてようやく開かれた説明会。会場には、役員を含めJERA職員が40名ほど、地域住民など100名ほどが集まりました。

説明会はJERA役員からの謝罪で始まり、配布資料をもとに事故の概要や調査の経緯、原因の特定についての説明が行われました。

JERAの説明によると、事故の原因は「粉じん爆発」。バイオマスの粉じんに空気中で火がつき、それが周囲の粉じんに燃え広がり大きな爆発が起きました。通常、粉じんは着火温度には達しませんが、バイオマスを運搬するベルトコンベヤの昇降台にズレがあり、これが元でベルトを支える板がベルトとの摩擦によって発熱・着火し、爆発に至ったということです。

JERAの謝罪と説明の後、住民からは以下のような様々な批判、意見、要望が出ました。

  • 事故から4か月近くも経ってから説明会を開くのは遅すぎる。過去に4回も事故を起こしており、JERAの管理体制がまったく機能していない。調査も内部でしか行っておらず、客観性に欠ける。住民の代表も参加させ、独立した第三者委員会を創るべき。過去の事故の際にそれをやっていれば今回の事故は防げたはずだ。
  • 今回の事故は「粉じん爆発」との説明だったが、バイオマスは過去5年間に武豊も含めて12回もの事故を起こしている。粉じん以外にも異物混入や発酵、可燃性ガスの発生など、複数のリスクがある。国によるバイオマスの安全基準も現時点では存在しない(現在経産省が作成中)。安全が確保されるまで再稼働すべきではない。
  • 停止中の現在でも、今夏の電力予想予備率は10%を超えていて、電力不足の心配はない。ならば、気候変動対策としても石炭火力はすぐにでも廃止すべきなのだから、そもそも再稼働は必要ない。石炭火力を続ければ必ずCO2が出る。その吸収源について、JERAは一体どう考えているのか?

こうした意見に対し、JERAは何度も丁重に謝罪をくり返しはするものの、第三者委員会の創設や補償については拒否、再稼働の可能性も否定せず、電力予備率に不足がなくとも「万が一に備えて再稼働は必要」、気候変動対策については「水素・アンモニア混焼、CCS、再エネ増加などで2050年にカーボンニュートラルを実現する」と回答しています。

また、JERAは説明会を開催するにあたり、録音・録画・写真撮影を禁止し、開催時間を2時間と決めて延長せず、質問の数も一人一問に限定したため、住民参加者からの再反論や追質問ができない状態でした。今後の事故防止や気候変動対策の核心部分については、これまでの方針を変えるつもりはないことが明らかになった説明会でした。

JERAには、地域住民に対し、より真摯な対応の説明会を再度開催することと、気候変動の緊急性や現状の電力需要を踏まえて、再稼働しないことを求めます。

説明会に参加された「武豊町の環境問題を考える会」の大久保氏は以下のようにコメントされています。

大久保さんコメント

 2024年1月31日に表記の事故が起こり、5カ月が経過しました。
私たち「武豊町の環境問題を考える会」は、事故当初の2月2日から、地元議員の協力も得て「現状、原因、対策」について説明をするよう要請してきました。
この5か月間の間、爆発により不安や恐怖を与えた地域住民に謝罪する、そして爆発の原因となる情報を地域住民に説明するという当たり前のことをしてこなかった巨大火力発電所と住民との緊張関係にありましたが、ついに5月25日(土)に、武豊町冨貴小学校体育館で住民対象の説明会を開かせることが出来ました。

 約120名の参加者があり、JERA株式会社の謝罪、火力発電所所長の説明が行われ、質疑応答の時間も取られました。質問者が多く、会社側が設定した時間が来たからと質問を打ち切りました。
 そして、残念ながらここでの報告と質疑では、住民の生命と財産がかかった事故を二度と起こさないという願いにはこたえるものになっていなことがはっきりしました。

 そこで、6月17日付けで「再質問書」を、6月19日付けで「再々質問書」を送付し、6月28日までの回答を求めました。

 JERA株式会社は、「説明会は終わった。あとは、どのような対策をとるかの説明をやって再稼働をめざしたい」とのスケジュールを提示しています。

 私たちは、本当の原因は、JERA株式会社がすべての情報をもっているのだから、住民に納得のいく説明をしないと、再稼働のあとに再び、今回のよりも大きな爆発・火災事故が起きないという保証はないという立場です。情報の隠蔽や修正は許されません。引き続き、〈原因〉が分かってこそ、〈対策〉の妥当性が納得できるという立場で粘り強く、住民の方の生命と財産、発電所で働く従業員のかたの健康と生命を守る立場で頑張ります。

 これまで、直接要請のお越しいただいた方、学習会や、公開説明会に参加されたみなさんに御礼申し上げます。また、専門的な知見で様々なご意見やレポートやメールや電話でアドバイスしていただいた方々にお礼申し上げます。

関連情報

武豊火力発電所における火災事故について(説明会資料PDF)
武豊火力発電所における火災事故について:3月21日電気設備自然災害等対策ワーキンググループ報告(PDF)

参考

【ニュース】JERAの武豊火力発電所の火災事故、原因究明と住民説明は必須(リンク