【ニュース】OCCTO電力供給計画を公表、2031年度に石炭32%を占める見通し


2022年3月付で、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が「2022年度供給計画の取りまとめ」を公表しました。これは1,768の電気事業者が提出した供給計画をOCCTOが取りまとめたもので、2031年度までの電力需給の見通しが示されるものです。このとりまとめからは、日本の石炭火力は今後10年、ほぼ現状のまま維持され続け、1.5℃目標はおろか、エネルギー基本計画に定められた2030年の電源構成(エネルギーミックス)、「非効率石炭火力のフェードアウト」という日本の政策にも全く整合しない方向に進んでいることが明らかになりました。

※日本の第6次エネルギー基本計画に定められた2030年度のエネルギーミックスは、石炭 19%、LNG 20%、石油 2%、原発 20〜22%、再エネ 36~38%。

2031年度のエネルギーミックスで石炭の占める割合は32%

今回公表された「2022年度供給計画の取りまとめ」によると、2031年度のエネルギーミックスは、石炭32%、LNG 30%、石油 2%、原子力 6%、再エネ 29%(一般水力+揚水力= 10%、風力+太陽光+地熱+バイオマス+廃棄物= 19%)となります。前年度の計画「2021年度供給計画の取りまとめ」における2030年度の石炭割合は34%だったので、31年度に石炭火力の割合が下がるものの、依然として最も大きな割合を占めています。

産業革命前と比べ温度上昇を1.5℃以内に抑える2050年温室効果ガス排出ゼロのためには、遅くとも2030年までの石炭火力の全廃が不可欠です。電気事業者の計画はその目標に逆行しています。それどころか、日本のエネルギー基本計画と比べても大幅に石炭依存度が高くなっていることがわかります。

図:送電端電力量の推移と見通し (電力広域的運営推進機関(OCCTO)「2022年度供給計画の取りまとめ」より気候ネットワーク作成)

 

石炭・LNGともに設備容量が増加、石油は減少

2021年度からの10年間では、全体の設備容量は増加する見通しです。電源別に見ると水力と原子力は横ばいで、水力以外の再エネは約3,959万kWの増加が見込まれます。火力は全体で見ると設備容量が120万kW減少しますが、内訳では石油の1,014万kWの減少分が大きく、石炭とLNGの設備容量はそれぞれ397万kWと497万kW増加することが示されました。前年度公表された計画(2020~2030年の設備容量の増減は石炭 688万kW、LNG -63万kW、石油 -178万kW)と比較すると、石油の設備容量の減少傾向が強まっていることがわかる一方で、LNGは増加に転じています。石炭重視の姿勢は維持したまま、LNGの設備容量も増加していく見込みです。

図:設備容量(全国合計) (電力広域的運営推進機関(OCCTO)「2022年度供給計画の取りまとめ」より気候ネットワーク作成)

新設・廃止計画からは事業者の石炭依存方針に変化は見られず

前年度の「2021年度供給計画の取りまとめ」と比較すると、今回の2031年度までの火力発電の新設・廃止計画では新たに1地点の石炭火力の新設計画が加わっており、また廃止計画は3地点だったものが2地点になっています。石炭の新設分が廃止の出力を上回る傾向は前回(新設 441.3万kW、廃止 -51.8万kW)よりも増大しています。同じ傾向はLNGでもみられ、新設の出力が前年度と比べ横ばいであるのに対し、廃止は減っています。一方、石油に関しては前年度でも減少傾向にありましたが、今回の計画では更に大きく廃止が上回っています。そもそも政府は石炭火力に関しては「非効率石炭火力のフェードアウト」を打ち出していますが、2031年までに石炭火力廃止がわずかに二か所というのでは、政府方針で打ち出している方向にすら向かっていないのです。

表:2031年度末までの火力発電の新設・廃止計画

(電力広域的運営推進機関(OCCTO)「2022年度供給計画の取りまとめ」より気候ネットワーク作成)

石炭火力の設備利用率は約7割を維持

電源別の設備利用率は、火力に関しては前年度公表された供給計画と同様の傾向で、石炭が約65%でほぼ横ばいであるのに対し、LNGは2021年度から2031年度にかけて47%から37.6%と減少する見通しです。LNGよりも石炭を優先する方針に変わりがないことが伺えます。

図:電源別設備利用率 (電力広域的運営推進機関(OCCTO)「2022年度供給計画の取りまとめ」より気候ネットワーク作成)

原子力は前年度公表された供給計画では2020~2030年度にかけての設備利用率が13.1%から11.2%程度に留まっていましたが、今回発表された2021~2031年度の設備利用率では、23.3%から19.0%といずれの年度でも高い水準が計画されています。また、前年度の計画では地熱・バイオマスの設備利用率は10年間で10%以上の伸びが見込まれていましたが、今回の計画ではどちらも10年かけてもあまり大きく上昇していませんでした。

参考:電源別設備利用率(2021年度供給計画取りまとめ時点での推定) (出典:電力広域的運営推進機関(OCCTO)「2021年度供給計画の取りまとめ」より気候ネットワーク作成)

最後に

今回の供給計画で示されたような形で今後の電源構成が続けば、エネルギー基本計画の電源構成を火力発電が大幅に上回り、ひいては温室効果ガスの削減目標も達成できないでしょう。OCCTOは前年度の取りまとめの中で、高止まりする石炭比率が第5次エネルギー基本計画で示されたエネルギーミックスの値と乖離していることを現状の課題として挙げていました。しかし、今年度の取りまとめでは課題としても挙げられていません。この供給計画の内容を精査し、問題を直視していくことが不可欠でしょう。

参考:電力広域的運営推進機関「2022年度供給計画の取りまとめ」(2022年3月)