【ニュース】日本初のIGCC商用機、勿来発電所10号機廃止


2020年11月16日、常磐共同火力株式会社が勿来発電所10号機の廃止を発表 しました。

同機は、酸素吹きガス化方式と比較して発電効率が期待できる空気吹きガス化方式を採用、2007年9月から2013年3月までの実証試験を経て、同年6月より“日本初の石炭ガス化複合発電(IGCC)の商用機”として運転を開始しました。出力は25万kW(250MW)とそれほど大規模ではないながらも、その後も記録を更新する度に「IGCCとして世界最長の連続運転を達成した」、「発電効率が42.9%を記録した」など、日本の誇る高効率石炭火力発電設備のひとつとして紹介されることもありました。しかし、今回の廃止について事由は明らかにしていません。なお、同機は廃止に至るまで、予定よりも長い定期事業者検査(2019年9月5日-2020年1月30日 *当初終了予定2019年12月14日)、ガス化炉不具合による計画外停止(2020年2月23日)、 計画停止(4月1日)という経緯をたどっています。 現在は商用機であるとはいっても、設計段階から含めると長い間補助金を受けて完成した発電設備であり 、特に何等かの技術的な問題を抱えていたのであれば、公表することが望ましいのではないでしょうか。

IGCCをこのまま推進して本当によいのか?

IGCCは、政府が、CO2の分離・回収・貯留(CCS)技術とともに低炭素型エネルギーインフラとして期待し開発に力を入れている次世代技術のひとつです。しかし、そのCO2排出量は650g/kWh程度と天然ガス火力発電の約2倍であり、IGCCでさえ温暖化対策としては排出量が多すぎることは明らかです。また、IGCCは、発熱量は低いが安価で埋蔵量が豊富な低品位炭を利用できることで発電コストの抑制が可能、といわれていますが、 それはあくまでも量産後の話で、世界中で脱石炭が進み、石炭火力発電所の新規建設が見込めない現状では、普及が進むのは難しいと言えます。そもそもCCSなしのIGCCでは効果的なCO2排出削減にはならないとの報告 もあることを踏まえれば、IGCCによる温暖化対策の有効性には疑問が持たれます。

なお、勿来10号機の近隣には別のIGCC発電設備、勿来IGCC発電所(出力543MW)があります。2020年9月の営業運転開始を予定していましたが、2020年11月末時点で開始の報は流れていません。2月19日に着火し、6月5日にガス化炉設備に点火、7月19日には定格出力に達成した後、最終調整が行われているようです。

※IGCCの問題については、気候ネットワーク編集のペーパーをご参考ください。
気候ネットワーク レポート 世界中で失敗が続く IGCC (石炭ガス化複合発電) 高コストで、大量の CO₂を排出