【ニュース】神戸発電所3号機 差し止め裁判が進む中、火入れを敢行


先日、石炭火力発電所の新設計画が2つ(秋田港火力発電所(仮称):秋田県、西沖の山(仮称)発電所:山口県)中止となり、国内における新設計画が事実上ゼロとなりました。しかし、環境アセスメントを終え、建設に至っている計画は、これから運転開始を迎えます。

こどもの日である、5月5日(水)に、神戸製鋼が神戸市灘区で建設工事を進めてきた神戸発電所3号機が、建設工事を終え、試運転に向けてボイラーに点火する「火入れ」を行ったことが分かりました。今後、試験を経て試運転が開始され、2022年1月か2月の営業運転開始を目指しています。当初は4月中旬に予定されていた火入れが延期となっていたものですが、火入れについて神戸製鋼からの公式発表は出されていません。

地元で石炭火力発電所の建設問題に取り組む、神戸の石炭火力発電を考える会からは、神戸製鋼所とコベルコパワー神戸第二の社長宛に抗議文が送付されました。

(抗議文引用)

2018年9月14日に、これらの問題に強い懸念を持つ住民40名が建設及び稼働差止めを求めて神戸地方裁判所に提訴しましたが、今まさに係争中です。この度の試運転開始は、こうした市民の訴えに耳を傾けず、大企業として果たすべき社会的責任を放棄した極めて不当な行為といえます。

そして、神戸製鋼が、かつて大気汚染公害裁判において、被告企業として被害者の前で述べた認識を引用し、現在の姿勢を批判しています。

(抗議文引用)

かつて西淀川大気汚染公害訴訟の和解成立にあたり、貴社は、被告企業の一社として、次のような認識を述べています。「ところで、現在では環境問題は地球環境問題という昭和30年代、昭和40年代とは違った意味で重大な関心を集めております。」という環境問題への認識を示し、「従来にもまして、周辺住民の方々へご迷惑にならないよう環境対策に最大限の努力をしてまいるとともに、公害環境対策の内容について、皆様のご理解を賜るよう、より一層努力する所存でございます。」と述べています。これまでの公害問題における自らの加害の歴史とも向き合い、事業を見直すよう要請します。

神戸発電所3-4号機をめぐっては、現在も、稼働差し止めを求める民訴訟事が神戸地裁で継続されており、環境影響評価(環境アセスメント)を認めた国の確定通知を取り消すよう住民らが国に求めている行政訴訟も控訴審へと移り、2つの裁判で建設が争われています。
神戸製鋼所は中期経営計画においてカーボンニュートラルへの挑戦を掲げつつも、3号機および4号機(2022年度に営業運転を開始する予定)の稼働に向けた準備を進めており、2030年時点でも石炭火力発電所の運用維持を図ろうとしています。

気候変動対策が喫緊の課題となっている今、新規の石炭火力発電所の運転を開始すべきではありません。石炭火力発電所の環境影響に懸念を抱く住民、原告の声に応えるためにも、賢明な判断が求められています。

抗議文全文はこちら

【声明】神戸発電所3号機の試運転開始への抗議文を送付(2021/05/08)(外部リンク