【ニュース】神戸製鋼の辞退と再入札―脱炭素オークションの「リセットボタン」


2026年5月、神戸製鋼所は100%子会社のコベルコパワー神戸が運営する「神戸発電所1号機(石炭火力)」でアンモニア20%混焼への改修を行う計画につき、国の「長期脱炭素電源オークション」で落札されたと発表しました。しかし、この計画は2023年度に一度落札されている案件です。

一度辞退した案件を再入札

長期脱炭素電源オークションに落札した案件には、落札した容量に応じた建設費や改修費など固定費水準となる「容量収入」原則20年間にわたり確実に交付されます。神戸発電所1号機・2号機は、すでに2023年度の初回オークションで落札されていました。ところが同社はその後、1号機についてのみ落札を「辞退」し、今回のオークションへ「再入札」を行って再び落札したということです。

なぜ一度辞退したのに再入札できるのか

この不可解な動きの背景には、制度上の「免責事由」の存在があります。 電気新聞(5月18日付)の報道によると、今回のオークションまでに神戸発電所を所有・運転するコベルコパワー神戸を含む3事業者が落札を辞退していました。いずれも既存の火力発電を水素やアンモニア混焼へ改修する計画だったといいます。通常、落札後の辞退には厳しいペナルティが科されますが、水素やアンモニアのサプライチェーン支援制度の適用が決まらないといった特定の条件下では、例外的にペナルティが免除される仕組みになっています。この「抜け穴」とも言えるルールを利用し、辞退した3事業者のうち2事業者が、今回のオークションでそっくりそのまま再落札を果たしているのです。 

※コベルコパワー神戸以外の事業者は四国電力の西条発電所、CEF H2株式会社 の三池発電所で、後者が今回のオークションで再落札した。三池発電所は第一回は水素混焼だったが、第三回では水素専焼で再計画している。

通常、一度落札した案件を事業者の都合で辞退すれば、多額のペナルティ(違約金)が発生します。しかし、事業者の責任に帰さないやむを得ない事情(免責事由)が認められれば、ペナルティなしで辞退できるルールになっています。

募集要綱によれば、以下のようになっています。

*ここでの「両支援制度:とは「価格差に着目した支援制度又は拠点整備支援制度」を指す

有利な条件を狙っての再入札?

神戸製鋼側はこの仕組みを利用し、1号機の契約を実質的に「リセット」し、より有利な条件、あるいは都合の良いタイミングでの再入札を狙ったのではないかという疑念が拭えません。

繰り返しになりますが「長期脱炭素電源制度」とは、脱炭素電源への新規投資や既設改修を促すことを目的に、原則20年間にわたり、発電所の固定費(建設費や維持管理費など)の回収を国が保証する仕組みです。そして、その原資は「託送料金」などを通じて、私たち一般の消費者が電気料金として毎月支払う「国民負担」によって賄われます。つまり、国がお墨付きを与えた脱炭素プロジェクトに対し、国民が20年もの長期ローンを背負わされる構造になっています。

本来、エネルギーにおける脱炭素の取り組みを加速させるには、再エネ・蓄電池を中心とするエネルギーシステムへ移行を促す必要があるはずです。しかし、長期脱炭素電源は、火力発電における混焼施策を手厚く優遇しており、制度の名称と実態があまりにもかけ離れていると言わざるを得ません。

今回のオークションでの全国の応札容量は合計1085.6万kWで、落札容量は729.9万kWとなっていました。このうち、コベルコパワー神戸の神戸発電所1号機が落札した容量は13.1万kWです。次世代燃料への転換のための改修とは言え、石炭にわずか20%のアンモニアを混ぜたところで、残りの8割は石炭のままです。しかも、神戸製鋼は1号機の落札を辞退した理由を明確に公表してはいません。にもかかわらず石炭火力の「延命策」に対し、一度落札を辞退した案件を再入札するという不透明なプロセスを経て、今後20年間もの国民負担が決められたことは見過ごせるものではありません。

参考

電力広域的運営推進機関:2025年度を応札年度とする第3回長期脱炭素電源オークションの約定結果(2026年5月13日発表

関連情報

神戸製鋼が1号機・2号機を落札した際、神戸の石炭火力を考える会は、声明を発出しています。
声明・要請】神戸製鋼・神戸発電所アンモニア混焼は石炭火力の延命策 2030年までの脱石炭が必要不可欠