2021年6月23日(水)、新設石炭火力の計画を進める神戸製鋼所の株主総会当日、地元で石炭火力問題に取り組む住民グループ、神戸の石炭火力発電を考える会のメンバーが、株主として経営陣に計画中止を訴えたほか、会場の最寄り駅においてアクションを行いました。
株主総会内での質疑応答を抜粋してご紹介します。
株主総会に参加した株主からの意見・質問
石炭火力発電事業について
- 石炭火力のコストは再エネと比較しても高い。世界での太陽光・風力のコストは石炭の約3分の1になっており、もはやコスト競争で負け始めている。
- 石炭火力発電所から排出されるPM2.5は健康影響があり、新型コロナウイルスの感染、重症化との関連性も指摘されている(京都大学による研究報告へのリンク)。
- 日本政府が2050年排出ゼロ目標を打ち出したが、CCS、CCUS等の技術も研究が始まったばかりで、日本での大規模な実現例は無い。(神戸製鋼はCO2削減への取り組みとしてCCU/Sの開発を進めようとしている)
- 事業説明のなかでは「不採算事業の再構築」として不採算事業を整理するという説明があったが、なぜ石炭火力発電事業はこの不採算事業に入らなかったのか。
神戸製鋼の中期経営計画に掲げられたカーボンニュートラルについて(2021年5月に発表)
- 新中期経営計画において、高炉、火力事業のロードマップが描かれているが、火力事業のロードマップにCCS等の記載がないのはなぜか。計画時のアセスにおいて省庁から出されている意見にも対策として検討すると記載があった。
- 火力発電事業については、CCUS/CCS等を導入することを断念したのか?
神戸製鋼所の反論・回答
- 再エネが安いというのは海外のものを言われていると思う。日本では、政府の発電コストの試算において、石炭火力は安価で経済性を持つと評価されている。島国という特性もあって、海外のように再エネのコストが下がっていないと認識している。
- 大気汚染について、PM2.5は火山など自然現象でも発生する。発電所の関係では、NOx、SOxが関係してくるが、国内最高水準の除去設備を導入している。これまでの1-2号機の運転実績からしても、周辺環境へ、それほど大きな影響を与えることはないと考えている。また、神戸市との環境保全協定値があり、遵守している。今後も、できるだけご心配をおかけするようなことがないよう安定稼働に努める。
- 中期経営計画のロードマップについては、政府の成長戦略でCCUS/CCS、アンモニア、水素が記載されている。当社としても、そうした政府の方針に沿って検討してきた。
- 鉄鋼においては、すでに熱利用・回収などを導入している経験から、CCS等についても記載をしている。今後、回収・貯留のコストが低下することで、CO2の輸出入ということも想定されている。
- 当社としては、火力発電事業についてはCCSの適地が限られていることもあり、政府の成長戦略に記載されているものとして、アンモニア、水素について着目した。
- 今後、イノベーションでコストの低下も期待されることから、中期計画のロードマップにおいて、当社が確度を持ってできることとして記載している。
(※質疑の内容は発言を簡略化して記している部分もあり、文言については正確性を保証するものではありませんので、ご留意ください。)
環境団体は、『神戸製鋼所グループに関する 2021年 事業リスク・レポート』を作成し、株主総会会場の最寄り駅で来場する株主に配布しました。このレポートは、株主と投資家の方々に、神戸製鋼所が策定した経営計画の転換が迫られていることを訴えるものです。レポートはこちらから(リンク)
住民グループらは、石炭火力発電事業の中止、脱石炭・脱炭素の必要性を訴え続けていくとしており、民事裁判での戦いも続きます。