【ニュース】神戸・石炭火力行政訴訟判決 気候危機を訴える市民の声を認めず


3月15 日、神戸市灘区に建設中の神戸製鋼石炭火力発電所(130万kW、年間CO2排出量約700万t)建設について、地元住民ら12人の原告が環境影響評価書の確定通知の取消を求めた訴訟の判決言い渡しがありました。

裁判中も建設が着々と進む3-4号機

相次ぐ石炭火力発電所の新設計画に対して法的手段により、建設・稼働を止めようとする動きがあり、神戸の行政訴訟はそのうちの一つです。なかでも、新設計画を認めた国の責任、判断を問う初めてのもので、判決には注目が集まりました。

裁判所の下した判決 -温暖化 市民に訴える権利なし-

原告らの主な訴えは、石炭火力による大気汚染(おもにPM2.5)、温室効果ガスによる気候変動による被害の2点です。裁判所は、PM2.5の予測・評価をしていない点については、省令を改正する余地があるとし、神戸製鋼も予測・評価を実施することはできたとしながらも、その手法が確立されていなかったとして、本件発電所についてのアセスに対する確定通知が発出された2018年5月の時点では、不合理とまではいえないと、請求を棄却しました。一方、気候変動については、IPCCの評価報告書等の科学的知見を証拠資料として提出し、原告・弁護団は気候危機を訴えてきました。裁判所は「地球温暖化の影響は大きいと推察される」としながらも、「温暖化被害は住民だけに及ぶものではない」として、原告には訴訟を起こす適格性はないと、請求を却下しました。

 

判決後、大阪地裁前で旗出しを行う弁護団と原告

CO2の排出増加は、気候変動による災害の要因ともなり、今や「公害」とも言える状況にあります。地球の未来と将来世代のために、2050年脱炭素に向けて原告・弁護団からは、「私たち市民1人1人が地球の未来と将来世代のために、2050年脱炭素に向けて「汚い電気」は使わない、資源の無駄遣いをしないことを広く呼びかけます。」と、共同で声明が発表されました。原告・弁護団は、控訴を検討中です。今後も、司法への訴えを通じて、脱石炭の重要性を社会に伝えていくつもりです。

追記

判決の翌々日(3/17)、地元紙の神戸新聞が、神戸製鋼は3号機の試運転について、4月中旬に火入れを行う方針であると報じました。

神鋼の石炭火力発電、4月中旬に火入れ 「来年1月にも営業運転」(神戸新聞2021/3/17
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