【ニュース】JERAが日本の脱炭素目標に影を落とす


株式会社JERAは、国内に26カ所の火力発電所を有し、国内の発電量の約3割を発電している日本最大の電力事業者です。

このJERAの事業と脱炭素戦略について、米エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)が1月26日、特別記事『JERA is putting Japan’s decarbonization goals at risk(仮訳:JERAは日本の脱炭素目標の達成を危機に追い込む)』を公開しました。その概要は以下のとおりです。

  • JERAが火力発電においてアンモニアと水素の混焼を追求することは、確実なネット・ゼロの道筋に乗せるために必要な排出削減を行うことを妨げ、既存の化石燃料事業を維持することになる。
  • 日本国内で原子力発電所が再稼働する一方で、日本の電力需要が長期的に減少する中、JERAは海外市場への関心を高めている。アジア全域でのエネルギー戦略展開を狙い、液化天然ガス(LNG)と水素・アンモニアがアジア全域の電力部門の脱炭素化につながるという偽りの希望を売り込んでいる。
  • JERAが脱炭素に向けたロードマップの中心に再生可能エネルギーの加速を据えれば、日本や他のアジア諸国が気候変動に関するコミットメントを達成し、(燃料の)輸入依存度を減らすことで地域全体のエネルギー安全保障を向上させることとなり、結果的には化石燃料の脆弱性からJERAを守ることにつながる。

IEEFAは、JERAが化石燃料に依存するビジネスモデルを放棄する兆しはなく、石炭火力発電所の稼働を維持し、さらには水素・アンモニア混焼といった実証されていない脱炭素技術を採用することで、石炭火力発電所を延命させようとしていることを指摘。費用対効果の高い再生可能エネルギーを積極的に導入する方向に企業戦略を変更しなければ、JERAのアプローチは日本の脱炭素化目標の達成やアジアのネット・ゼロへのシフトを頓挫させかねないと述べています。

JERAの戦略 これでいいのか?!

JERAの発電事業の脱炭素ロードマップでは、2030年までに非効率な石炭火力発電所(超臨界以下)を全台を停止・廃止する計画が含まれていますが、残りの発電所ではアンモニアまたは水素を混焼するという、コストがかかり、削減効果の少ない戦略を推し進める計画です。しかも、2030年までに停止または廃止する具体的な計画が示されないまま、下図に示すように横須賀火力を含め、規模の大きな火力発電所の運転を開始しています。

出典:JERA 2023年度第3四半期連結決算 投資家向け説明資料より

アンモニア混焼については、碧南石炭火力発電所4号機(愛知県碧南市)で発電所4号機における燃料アンモニアの大規模混焼(熱量比20%)を2023年度から開始するとしています。JERAのロードマップには、2020年代後半までに20%混焼の商用運転を開始し、2030年代前半に50%混焼、2050年までにアンモニア専焼とすると示されていますが、この計画では先進国に求めらている2030年までの石炭火力の廃止は不可能です。一方、水素については、2025年度までに混焼率30%の実証試験、2030年代半ばに商用運転を目指します。

IEEFAの試算によると、JERAのロードマップは、2035年までに火力発電1ユニットあたりのCO2排出量を3分の1に削減する点は前進であるものの、国際エネルギー機関(IEA)が提唱するネット・ゼロの道にはほど遠いと述べています。

出典:IEEFA https://ieefa.org/resources/jera-putting-japans-decarbonization-goals-risk

IEEFAは、JERAの発電量は日本の火力発電容量の3割に相当するため、JERAの戦略は日本の電力部門の脱炭素化を妨げ、日本が達成すべき排出削減を遅らせることになると懸念しています。水素・アンモニアの利活用を進めることは、再生可能エネルギーに投資するよりもコストがかかる可能性が高いことから、経済合理性においても問題です。さらに、グレー/ブルーまたはグリーンに関わらず水素とアンモニアを輸入に頼ることになるので、日本のエネルギー安全保障を後退させることになります。

IEEFAの記事には、JERAがこうした戦略を選択している理由を3つ挙げています。

  1. JERAの事業の中で最も収益性が高いのは国内火力発電部門なので、水素・アンモニアの混焼により国内火力発電所の延命を図ろうとしている。
  2. 2015年の設立当初より上流から下流まで幅広く事業を展開する化石燃料会社であり、シンガポールを拠点とする同社の燃料トレーディング部門JERA Global Marketsは、世界のLNG市場の12%を取り扱っているため、大きな交渉力を有している。
  3. 化石燃料バリューチェーン全体にわたる海外投資は、国内事業のリスクを補完、軽減することができる。ポートフォリオ全体でエネルギー取引と出荷を最適化し、投入コストの上昇を取引利益で相殺することができる。

JERAが、戦略を見直し、ロードマップの軸を火力の延命ではなく、再生可能エネルギーの導入加速にシフトすることは、日本や他のアジア諸国が気候変動に関するコミットメントを達成し、エネルギー安全保障を向上させ、不安定な化石燃料市場へのエクスポージャーを低減するのに役立つだろうとまとめています。

JERA is putting Japan’s decarbonization goals at risk(リンク
本記事はNIKKEI ASIAにも掲載されています。(リンク