【ニュース】政府のGX基本方針に関するパブコメ募集 2023年1月22日まで


今後の日本のエネルギー政策を方向付ける「GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針」が経済産業省主導でまとめられ、12月23日から「GX実現に向けた基本方針」に対する意見募集が開始されました。国の未来を左右する重要な政策にも関わらず、意見受付期間は1か月と短く、期日は2023年1月22日(日)までとなっています。

政府は、「GXの実現を通して、2030年度の温室効果ガス46%削減や2050年のカーボンニュートラルの国際公約の達成を目指す」としています。産業・エネルギー政策の大転換と位置付けるこのGX基本方針は、脱炭素社会に向けたCO2削減策として、原子力発電所の延命および新増設や、石炭火力へのアンモニア燃焼、CO2回収貯留(CCS)といった技術革新に重きを置き、10年間で150兆円という巨額の投資を行うとするものです。

JBCは、12月24ー25日に新聞3紙に掲載した意見広告にも記したように、このGX基本方針は気候変動対策に逆行していると考えています。

パブリック・コメントを書いて政策に意見しよう

国の行政機関が重要な政令や省令等を定めようとする際には、パブリック・コメントと呼ばれる意見公募手続きを行うこととなっています。パブリック・コメントとは、手続きに則り、文案を公表し、広く意見を募集するものです。規定の書式に記入することで、誰でも意見を提出することができます。

GX基本方針における主な問題点

GX基本方針は、今後のエネルギー政策の方向性を示す重要なものです。再生可能エネルギーの主力電源化を目指すとする一方で、この方針ではエネルギー安全保障の観点からも重要な、化石燃料への依存からの脱却ができないことが懸念されます。

「GX実現に向けた基本方針」の問題点を抜粋しておきますので、意見作成の参考としてください。

原子力発電

原子力発電所については、エネルギーの安定供給とカーボンニュートラル実現に重要な役割を果たすとして、運転期間は法律で定められた「原則40年」を踏み越え、停止期間を含まずに60年を超える稼働を可能とするとしている。原子力は安全面でも対策コスト面でも問題が大きく、新増設をしてもエネルギー基本計画における2030年度の原子力の割合20~22%に増やすことは実質的には困難である。また、再生可能エネルギーによる電力価格が低減すれば、原子力発電の再稼働・新設に要する費用を踏まえた電力価格は競争力を失うことになる。【P6,  3) 原子力の活用】

アンモニア

石炭火力へのアンモニア混焼・将来的な専焼は、現時点で実用化もしていない。2030年までにCO2排出量を半減させるためには、限られた時間内での排出削減につながらないアンモニアのような「イノベーション技術」に投資するのではなく、実質的なCO2削減につながる省エネ・再エネへの投資が必要。また、現時点で燃料アンモニアとして必要な量を確保することは難しい。【P7,  4)水素・アンモニアの導入促進】

既存のアンモニアは、製造段階で多くのCO2を排出する。そのため、石炭火力にアンモニアを混焼させても、ライフサイクルではCO2はほとんど削減されず、化石燃料利用の延命にしかならない。【P7,   (4)水素・アンモニアの導入促進】

電力市場の整備

「供給力確保に向けて、2024 年度開始予定の容量市場を着実に運用する」、「長期脱炭素電源オーク ションを通じ、安定供給の実現や、計画的な脱炭素電源投資を後押しする」とあるが、容量市場は実質的には原発や既存火力発電を延命する支援措置であり、脱炭素電源投資もアンモニア混焼などを後押しする制度であり、かつ気候変動対策に逆行するものである。電力市場は再生可能エネルギーの最大限の導入を基本として、その後押しとなる制度を構築すべきである。【P8,  5)カーボンニュートラル実現に向けた電力・ガス市場の整備】

CCS

CO2の回収や貯留には多額のコストが必要な上、回収には限界があり、回収・貯蔵後もCO2漏洩のリスクは否定できない。政府は、2050年時点で毎年3億トン以上のCO2の回収・貯留が必要と試算しているが、該当量のCCS適地を日本国内で確保するのは困難であり、貯留先についても海外に依存することになる。【P12,  13)  カーボンリサイクル/CCS ④CCS】

GX投資

資源循環・炭素固定技術等の研究開発等への投資としてのGX投資には、今後10年間で150兆円超えが想定されている。そのうちの20兆円規模を「GX経済移行債」(仮称)として国が先行投資するため、2023年度以降10年間、毎年度、国会の議決を経た金額の範囲内で発行していくとしている。上述したような原子力、水素アンモニア、CCSなどへと巨額の投資をあてようとしているが、基本的にコスト対効果の高い省エネや再エネに振り向け、より実質的な脱炭素社会の実現に向けた手段である再エネの普及を進めることが必要。【P14,  3.「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行,(2)「GX経済移行債」(仮称)を活用した大胆な先行投資支援(規制・支援一体型投資促進策)2) 「GX経済移行債」(仮称)】

カーボンプライシング

化石燃料からの脱却を後押しし、脱炭素社会の実現を促進するカーボンプライシングの制度設計を行い、2030年度の温室効果ガス46%削減や2050年のカーボンニュートラルの国際公約を踏まえ、導入時期(2028年度開始予定)を前倒しするように、検討・検証が必要。【P16,  3.「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行,(3)カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ】

2050年カーボンニュートラルの実現に向け、今後10年間で官民150兆円超のGX投資を実現するためには、「GX経済移行債」(仮称)による国の支援と合わせて、民間金融機関や機関投資家等による積極的なファイナンスが必要としている。しかし、技術や需要の不透明性が高いものについては、民間金融だけではリスクをとりきれないものもあり、公的資金と民間資金を組み合わせた金融手法(ブレンデッド・ファイナンス)の確立が重要と記している。不透明な技術開発に公的資金を投じることのリスクを明らかにし、国民と対話した上で、技術開発の状況を報告し、進捗によっては技術開発の修正、変更するような体制構築が必要。【P19,  3.「成長志向型カーボンプライシング構想」の実現・実行,(4)新たな金融手法の活用】

政策イニシアティブ

GX投資の進捗状況などの今後の進捗を「GX実行会議」等において定期的に評価するとしているが、そもそものGX基本方針は、エネルギーの安定供給の確保を大前提としたものである。そのため、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換するという、本来の「グリーントランスフォーメーション」につながるのかの適切な評価、見直しが行われないことが危惧される。2050年ネットゼロに向けた脱炭素政策の進捗評価となるような評価項目、評価体制の構築が必要である。【P26,  6.GXを実現する新たな政策イニシアティブの実行状況の進捗評価と見直し】

GX基本方針は脱炭素社会に向かっているのか

巨額の投資を必要とするGX基本方針は、気候危機を回避するために求められている化石燃料からの早期脱却を促すのではなく、石炭火力やガス火力の継続利用につながりかねない技術革新を推進するものであり、再生可能エネルギーへのエネルギーシフトを推進するには不十分です。脱炭素社会に向かった政策と言えるものではありません。

パブリック・コメント(意見)の出し方

脱炭素社会に向けた動きを加速させるためには、このGX基本方針について、ひとりでも多くの人が意見を提出することが大切です。

以下のリンクから「GX実現に向けた基本方針」に対する意見募集要領を確認し、意見提出先・提出方法に従って、電子政府の総合窓口「e-Gov」の意見フォームに記入するか、意見提出用紙に記入して郵送します。いずれの方法でも期日までに提出するようにご注意ください。

 

関連情報

 

参考1

  • 自然エネルギー財団:コメント GX基本方針は二つの危機への日本の対応を誤る なぜ原子力に固執し、化石燃料への依存を続けるのか(2022年12月27日)
  • 気候ネットワーク:【プレスリリース】新聞意見広告を掲載 ―GXは気候変動対策に逆行している―(2022年12月23日)
  • WWF:声明 遅すぎるカーボンプライシング本格導入と拙速すぎる原発方針転換のGX基本方針案に抗議する(2022年12月23日)

参考2

  • FoE Japan:年末年始のパブコメ4件 #原発推進GXをパブコメで止めよう

参考3

  • パブリック・コメント制度について(リンク