【ニュース】ドイツの脱炭素戦略 – 2030年 石炭火力廃止を8年前倒しに


2021年11月24日、ドイツの新しい連立政権は、石炭火力発電の段階的廃止(フェーズアウト)完了時期を2030年に前倒しすること、また同年までに国内総電力需要の80%を再生可能エネルギー発電で供給することを含むエネルギー計画に合意しました

2020年、ドイツは石炭火力フェーズアウト完了目標を2038年と定め、再生可能エネルギーの割合を2030年までに65%にするとしていました。ドイツ国内の石炭フェーズアウト完了時期を8年早めるとともに、2030年のエネルギーミックスにおける自然エネルギーの割合を大幅に引き上げた今回の合意は、すべてのOECD加盟国は2030年までに石炭火力を廃止させるという世界的な要請に応えるものです。

この合意は、ドイツが今年改訂した2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を1990年比で65%削減し、2045年までにネットゼロ(実質ゼロ)を達成するという気候目標の達成を後押しするものであり、ドイツ政府が近年、気候変動対策およびGHG排出削減の強化を継続的に行っていることを示す一例と言えるでしょう。

今回の発表には、2030年までに石炭火力をフェーズアウトさせ、再生可能エネルギーの割合を増加させる目標に加え、「脱石炭法」の見直しを2026年から2022年にすること、気候変動に悪影響を及ぼすことのない電力セクターを構築するための具体的な議論を行うプラットフォームの設置(2022年に政策を提案する)、GHG排出ネットゼロに向けて国内エネルギーインフラ準備に取り掛かるためのエネルギー関連会社との対話、さらに再生可能エネルギーの普及や石炭関係者(石炭コミュニティ)の公正な移行を促進するためのさまざまな施策などが含まれています。

イメラス石炭火力発電所(写真:Greg McNevin / Europe Beyond Coal)

この合意は、世界で石炭火力発電からの撤退の取り組みが加速していることを示す重要な動きが見られた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の後に発表されました。注目すべきは、COP26の成果文書としてまとめられた「グラスゴー気候合意」において、すべての参加国が排出削減対策を講じていない石炭火力発電の「段階的な削減(フェーズダウン)」に向けた取り組みを加速させることに合意したことです。さらに、石炭に関するステートメント「Global Coal to Clean Power Transition Statement」に47か国が合意した他、野心連合(High Ambition Coalition)の国々は、1.5度目標に整合しない石炭火力発電所の新設を中止し、排出削減対策が講じられていない(unabated)石炭火力発電のフェーズアウトを求めるCOP26首脳声明を発表し、脱石炭連盟(PPCA)には28の新たなメンバーが加入しました。

このような動きから、世界が石炭火力発電のフェーズアウトに向けた取り組み進めているだけでなく、一層加速させていることが明らかです。

ところが、世界的な動きに反して、日本は石炭からの脱却を図ることなく、誤った方向に進んでいるように見えます。日本政府は、COP26で気候変動対策に後ろ向きな国に贈られる化石賞を受賞することとなった首相演説の後、日本国内で最も古い石炭火力発電所のひとつにガス化設備を付加して「アップサイクル」するというGENESIS松島計画を容認しました。この計画は、CO2排出量をわずかに削減するものの、石炭の燃焼を続け、日本の石炭火力発電を延命させるものです。世界の国々とともに排出削減対策が講じられていない石炭火力発電所のフェーズダウン(段階的削減)を約束したグラスゴー気候合意に署名したにも関わらず、日本の行動はまったく伴っていないのです。

2021年も日本は、石炭火力発電からの撤退状況を評価するランキングにおいてG7諸国中最下位となりました。ドイツ政府が採択した新しい目標は、OECD諸国において2030年までに石炭をフェーズアウトすることだけでなく、再生可能エネルギーへのシフトを伴う石炭のフェーズアウトが実現可能であることを示しています。ドイツで石炭フェーズアウトが加速する中、石炭から再生可能エネルギーへの移行の鍵となるのは、再エネーの導入、産業の誘導および支援、石炭コミュニティに対する公正な移行の確保などを行うための具体的な計画を策定する政府の取り組みです。日本は今こそ、ドイツや他の多くの国々とともに、石炭火力発電のフェーズアウトと再生可能エネルギーへの移行を加速させるべきなのです。

参考:
連立政権のエネルギー計画【ドイツ語】