【ニュース】GENESIS松島 方法書のパブコメは3000件を突破


2021年4月に電源開発(J-Power)が「GENESIS松島計画」を発表してから、その環境影響評価が着々と進められています。

J-Powerは、2021年9月の配慮書のパブコメでは800件以上、2022年10月の方法書のパブコメでは3,000件以上の団体・個人からの意見が提出されたと報告しており、これは火力発電の環境アセスとしては記録的に多い数となります。

しかし、公開された事業者の見解は、まったく不誠実きわまりないものでした。異なる意見に対して「本事業により、熱効率が向上し既設2号機に比べて約10%の二酸化炭素排出量の削減が可能となります。新たに付加する酸素吹き石炭ガス化設備は、CCUS(CO2回収・利用・貯留)・カーボンリサイクルと高い親和性を持っておりますので、バイオマスやアンモニア等のカーボンフリー燃料の導入による更なる二酸化炭素排出量の削減に加え、CCUS の実装によるゼロエミッションを目指します。」との見解を繰り返し回答するなど、納得できるものではありません。

本計画による二酸化炭素排出量の削減は約10%程度な上、CCUSの実現性が見通せない状況であり、これで2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの第一歩と言えるのでしょうか。政府は、2023年2月にGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針とGX推進法案を閣議決定し、この中で水素・アンモニアを発電燃料としての使用にむけた体制づくり、CCUSの事業化を推進することを明確にしています。GENESIS松島計画でも、水素・アンモニアの活用を目指していますが、技術面、経済面、調達面の問題が山積みであり、これはCCUSについても同様です。また、J-Powerは同社が培ってきた石炭から生成したガスを水素と二酸化炭素に変換するガス化技術(石炭ガス化複合発電技術、IGCC)を活用することで、石炭の利用を継続する姿勢を示しています。水素についても、将来的にはCO₂フリー水素発電を視野に入れるとしていますが、発電に用いることが出来るほど潤沢な再エネ由来の水素を入手できるような道筋は何もなく、カーボンニュートラルへの道を遅れさせかねません。

GENESIS松島計画の環境アセスメントは、方法書への意見募集が締め切られた後、長崎県の環境影響審査会(2022年12月22日)および経済産業省の環境影響審査会(火力部会)(2023年2月10日)の審査を経て、2月24日に「環境の保全についての適正な配慮がなされている」との経済産業省の審査書経済産業大臣通知が出されています。よって、本計画の環境アセスメントは次の段階である環境影響評価準備書に進むこととなります。現時点では、準備書の縦覧がいつになるか不明ですが、引き続き、この事業計画の問題を問いかける声を上げていかなければなりません。

松島は、長崎県西海市にある一周10㎞弱の自然豊かな島です。石炭火力発電を続けるのではなく、長崎という立地を生かした持続可能なエネルギーへの転換、拡大を急ぐべきです。なお、西海市が「西海市地球温暖化対策実行計画(区域施策編)(素案)」に対する意見募集(パブリックコメント)を行っていた際(2月27日公示、3月6日締め切り)、気候ネットワーク東京事務所が同様の趣旨の意見書を提出しており、この中でもGENESIS松島計画について言及しています。

最後に、環境影響評価の方法書パブコメが終了したことを受け、GENESIS松島のパンフレットを改訂しましたので、同計画の問題を確認するのにご参考ください。

GENESIS松島計画

運転開始から40年を経過した松島火力発電所の2号機に新設備を付加して「アップサイクル」させることで、CO2排出削減や水素発電につなげようとする計画。1号機(50万kW)は1981年1月に、2号機(50万kW)は同年6月に運転を開始。将来的にはアンモニアやバイオマス燃料の混焼とCCUSを組み合わせCO2の排出量を実質ゼロとすることも目指すとしている。
2024年の着工、2026年度の運転開始を目指して、2021年9月に環境影響評価手続きを開始。

環境影響評価の経緯PDF

※環境アセスメント状況(配慮書、方法書の「あらまし」はこちらで閲覧できます)

パンフレット

パンフレット(改訂版)のダウンロードはこちら

関連リンク

ACT松島 https://act-matsushima.jp/