【ニュース】G7気候・エネルギー・環境大臣会合:日本が脱石炭、電力部門の大宗を脱炭素化する宣言


2022年5月27日、G7(日本、ドイツ、米国、英国、フランス、カナダ、イタリア)の気候・エネルギー・環境大臣会合が閉幕しました。

この会合では、G7各国の気候・エネルギー・環境大臣が、新たに気候変動に対する公約を定め、化石燃料の廃止と自国のクリーンなエネルギーへの移行の道筋を共同で設定することが模索されていました。その結果、最終合意されたコミュニケでは、日本の石炭火力依存からの脱却に向けた重要な展開が含まれていました。

注目すべきは、石炭火力発電をフェーズアウトする方向性に対して日本が合意したことです。OECD諸国が世界の気温上昇を1.5℃に抑えるというパリ協定の目標を達成するためには、2030年に石炭火力発電の廃止が必要であるものの、具体的な目標年が設定されませんでした。G7各国は、「国内の、排出削減対策がとられていない(unabated)石炭力発電を最終的に廃止する目標に向けて具体的かつタイムリーにステップを踏む 」という約束を表明しました。日本は2021年のグラスゴー気候協定で「排出削減対策がとられていない(unabated)石炭力発電の段階的削減(phase-down)に向けた努力を加速する」ことに合意していましたが、このコミュニケで初めて国内のエネルギーミックスから排出削減対策がとられていない石炭力発電を段階的に廃止すること(phase-out)を明示的に約束したことになります。

また、石炭の段階的な廃止の方向性に加え、国内の化石燃料の使用に関して、ある重要な期限が合意されました。それは、「2030年のNDCと整合性を保ちつつ、電力部門の移行に関するコミットメントとそれぞれのネットゼロのコミットメントを優先し、2035年までに電力部門の大部分(predominantly)を脱炭素化する」というものです。

エネルギーミックスの何割を「大部分(predominantly)」とするかはまだ明確に定義されていませんが、国際エネルギー機関(IEA)は「2050年ネットゼロのロードマップ」において、「2030年までに排出削減対策がとられていない石炭火力を廃止し、2035年までに排出削減対策がとられていないガス火力をエネルギーミックスの2%未満にすることが、G7各国が2050年までにCO2排出をネットゼロとするための主要なマイルストーンとなる」と述べています。

しかし、日本が2050年にネットゼロを目標にしても、「大部分」という表現の解釈の問題が表面化しています。日本の環境省は、「大部分」とは日本の電力部門の50%以上を脱炭素化することだと考えていると表明していますが、他のG7諸国はそのような解釈は認められないだろうとの見解を示しています

さらに、G7各国の大臣は、国際的な公的資金に関わる重要なコミットメントも行い、「1.5℃の気温上昇に抑えることやパリ協定の目標に合致する、各国が明確に定義した限られた状況を除いて、2022年末までに国際的に排出削減対策がとられていない化石燃料電力部門への新たな直接公的支援を終了する」と宣言しました。この宣言も解釈や抜け道の余地を残していますが、科学的には、世界がパリ協定や1.5目標を達成するためには、OECD諸国は2030年までに石炭火力を廃止し、それ以外の国は2040年までに石炭火力発電を廃止させる必要があるとされています

今回の大臣会合で合意されたコミュニケは、日本が脱石炭と脱炭素社会の実現に向けて大きく前進したことを意味します。日本は、国内政策において、2030年までに石炭火力発電を廃止道筋を描けていません。パリ協定の目標を達成し、気候変動がもたらす最悪の影響を防ぐためには不可欠なステップです。国内政策に今回のコミットメントを反映させていくべきでしょう。

そして、来る6月26日~28日にはG7首脳会議が行われます。岸田首相は、気候変動対策強化に向けたG7の対応の足をひっぱることなく、2030年までの脱石炭に積極的に賛同していくべきです。

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