【ニュース】「CCSの報告回収量と実回収量のギャップ」との指摘


イギリスの理工系大学インペリアル カレッジ ロンドンの研究者らが、このほど、1996 年から 2020 年の間に世界中で回収・貯留された炭素の推定値を報告された数値と比較した結果、実際の量より19~30% 過大評価されていると指摘する調査報告を発表しました(7月19日付けの Environmental Science & Technology Lettersに掲載)。この期間に回収された炭素は1億9,700万トンと算出されていますが、一貫した報告の枠組みがないために、実際の炭素回収量から過大評価されている可能性が指摘されています。

研究者らは、IEAを含めた複数のシンクタンクなどがまとめたCO2の回収率に関する情報を比較し、CCS(二酸化炭素の回収・貯留)の施設が回収容量だけ報告した場合には、貯蔵率が過大評価されることを発見しました。
1996年以降、20 施設のデータに基づく年間のCO2総回収量は 36メガトン(Mt)(3600万トン)と記されています。研究者らは、世界で稼働中の 26 のCCSプラントのうち 20施設の回収・貯留量を調べ、2019年に貯留されたCO2を29 Mt(2900万トン)、1996年から2020年までの間の累積貯留量を197 Mt(1億9700万トン)と推定しました。さらに、2021年時点では、これら26 の施設全体で年間 40 Mt(4000万トン)のCO2が回収されると推定。これらの数値をシンクタンクが報告している数値と比較した結果、広く使用されている貯留量は19~30%過大評価されていると指摘し、CCSの施設に実際の回収率の報告を義務付ければ、CCSがどの程度機能しているのかがより正確に把握できると述べています。

研究者は、CCSは気候変動の緩和に貢献しているとした上で、その成果を正確に把握するための報告フレームワークには、意図する回収率容量、最大回収率容量、CO2年間回収量、CO2年間運送量、CO 2年間貯留量、第三者による監査などの品質保証手段、および CCS施設が意図したとおりに運用できなかった理由を含めた詳細な情報を含める必要があると述べています。

現在日本では、政府が脱炭素政策の一環でCCSを進める中、今年5月に経済産業省が「CCS長期ロードマップ検討会 中間とりまとめ」を公開しました。これによると、2050年時点におけるCCSの年間貯留量を、約1.2億トン~2.4億トンを目安に、補助金などの政府支援で事業にインセンティブを付けていくことを想定しています。しかし、現状では苫小牧の実証試験で30万トンを貯留したにすぎません。様々な課題をかかえるCCSが実態がつかめず、過大評価されていくことになれば大問題です。まずは確実な削減策となる、石炭火力からの脱却や自然エネルギーへの転換などを進めていくことを優先し、どうしても削減できないCO2を回収する最後の砦の技術としてCCSは位置付けるべきでしょう。

論文:

An Estimate of the Amount of Geological CO2 Storage over the Period of 1996–2020
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.estlett.2c00296

関連資料:

参考:

  • 【ポジションペーパー】CO₂回収・利用・貯留(CCUS)への期待は危うい -コスト・技術の両面から、気候変動対策の柱にはなり得ない(2019年6月)(リンク
  • 【パンフレット】GENESIS松島計画とその問題点(リンク