【ニュース】第6次エネルギー基本計画(案)に対する意見ー石炭火力発電のフェーズアウト加速に向けて


日本の温室効果ガス排出全体の8割以上をエネルギー起源の二酸化炭素(CO2)が占めていることから、エネルギー基本計画は今後の日本の気候変動対策を左右するものと考え、Japan Beyond Coalとして、「第6次エネルギー基本計画(案)」に対し以下の意見を提出いたします。

1.石炭火力は2030年までに全廃することとし、そのための具体的計画立案および実施を加速させるべき

【該当箇所】P.36、75、106ほか

【意見内容(100文字以内)】
2030年度の電源構成において石炭火力の割合を19%としているが、これを2030年までにゼロとし、その目標に向けた具体的計画立案および実施を加速させるべき。(78文字)

【理由】
気候危機を回避するため、エネルギー基本計画の改定にあたっては、地球の気温上昇を1.5℃に抑える目標を設定し、2050年カーボンニュートラルと2030年50%以上削減の目標に整合する計画として改定する必要がある。そのためには、具体的な石炭火力のフェーズアウト(段階的廃止)計画の早期策定と実施が不可欠である。
石炭火力は、火力発電の中でも最も二酸化炭素(CO2)排出量が大きく、高効率であっても LNG火力の約 2 倍を排出する。パリ協定の1.5℃目標を達成するためには、温室効果ガスの排出量を科学的知見に基づくカーボンバジェット(炭素予算)内に収める必要があり、各国の削減目標を定めるプロセスにおいても2030年の排出削減目標を「少なくとも50%以上削減(1990年比)」とし、着実に実行することを担保する必要がある。これを踏まえ、先進国は2030年までに石炭火力のフェーズアウトが求められているが、本計画案で示された2030年石炭19%では整合しない。これでは世界の脱石炭の潮流に遅れをとることになり、国際社会の気候変動対策で日本が存在感を示すことは不可能である。
また、国が目標とする2050年にカーボンニュートラルの実現においても、遅くとも2030年には石炭火力発電を全廃させる必要がある。今後9年で石炭火力をゼロにするためには、段階的廃止を強力に推し進めるための具体的な計画と、実施を後押しする政策が不可欠である。
世界で石炭関連産業への投融資を引き上げるダイベストメントの動きが加速しており、座礁資産のリスクが高まっていることも踏まえれば、経済的観点からも石炭火力は早期に廃止すべきである。

2.石炭火力に続き、LNG火力の新規計画・建設を禁止し、段階的に廃止とするべき

【該当箇所】P.36、75、106ほか

【意見内容(100文字以内)】
ガス火力は石炭火力に比べればCO2排出が少なく、発電時の柔軟性があるとはいえ、大規模排出源であることに違いはなく、排出年数も長い。今後の新設は建設中も含めて禁止とし、段階的削減の方向を明確にすべき。(99文字)

【理由】
石炭火力削減の過程において、比較的温室効果ガス排出の少ないLNG火力の利用による環境負荷軽減は避けられないとしても、2050年ゼロエミッションを実現するためには、新規、既存を問わず段階的な廃止が不可欠である。現在計画中、建設中のLNG火力発電所は将来的な排出削減の妨げとなるばかりでなく、座礁資産化する危険性があるので、早急に中止とした上で、既存の発電所の段階的削減の方向を明確にし、実質的な廃止を進める必要がある。

3.脱炭素経済構築の基本政策としてカーボンプライシングを導入すべき

【該当箇所】P123

【意見内容(100文字以内)】
脱炭素経済構築の基本政策としてカーボンプライシングを導入する。その上でパリ協定の目標に整合する炭素価格の設定を通じてエネルギーシフトを促進し、再エネへの投資環境などの整備に役立てるべき。(93文字)

【理由】
本計画案でもカーボンプライシングに躊躇なく取り組むとなっているが、自主的かつ市場ベースで促進と書かれている。炭素に価格付けするカーボンプライシングは、費用効果的な対策を講じることができる経済的な手法であるため、省エネの促進や再生可能エネルギーへの転換による脱化石燃料の推進策となることが期待される。既に多くの国や自治体では、炭素税や排出量取引制度などのCO2への価格付けにより排出を抑制する政策を導入することでCO2削減が進められている。カーボンプライシングはOECDなどの国際機関が不可欠な手段であると提言しており、世界銀行の支援によって作成された「炭素価格に関するハイレベル委員会報告書」では、パリ協定の目標に整合する炭素価格は、2030年に50-100USドル/CO2トンとしている。現在の化石燃料依存の経済社会から脱炭素社会への転換を推し進めるには、持続可能な新しいシステム構築への経済的な後押しも欠かせない。これらを踏まえ、日本でも着実な排出量の大幅削減を担保する政策措置として、カーボンプライシングの導入を強化すべきである。
2030年に10000円/ CO2トン相当の水準となるよう、現在から段階的に税率を上げていく炭素税の仕組みを導入するための抜本的な税制改革を行うとともに、容量市場、非化石価値取引市場といった原子力や石炭を温存する電力市場を支える政策を見直し、脱石炭を加速していく必要がある。

4.非現実的な技術のイノベーション(水素/アンモニア、CCS・CCU技術)による「火力の脱炭素化」に依存した石炭火力発電の延命策の見直し

【該当箇所】P.25、36、75、106ほか

【意見内容(100文字以内)】
現時点で実利用の目途がたっていない水素/アンモニア、二酸化炭素回収固定利用技術(CCS・CCU)といったイノベーションによる「火力発電の脱炭素化」に依存することなく、脱石炭を着実に進めるべき。(96文字)

【理由】
「3E+S」の名の下に水素/アンモニア、二酸化炭素回収固定利用技術(CCS・CCU)を持続可能社会に向けたイノベーションと位置づけ、「火力発電の脱炭素化」を行うことで石炭およびLNG火力発電設備を継続的に利用することを示唆しているが、これらの技術は有効性、経済性、環境影響が不確実なことが懸念される上に技術的リスクも高く、実用化の目途がたっていない。こうした技術に依存して化石燃料による発電を維持しようとすることは実質的な排出削減の妨げになり、2050年ゼロエミッションの実現を危うくする危険性を伴う。1.5℃目標達成に向け、2030年あるいは2050年までになすべきことに対して、残された時間の中で不確実な技術イノベーションに投資するより、現在ある技術を活用しつつ、再生可能エネルギーの導入を加速させるとともに再エネへの投資環境を整備して発電コストを低減させる政策を早急に導入・実現させるべきである。

5.再生可能エネルギーの導入を加速化ー2050年までに再生可能エネルギー100%の社会を

【該当箇所】P50、95-96、104-105ほか

【意見内容(100文字以内)】
2030年のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合をより野心的な数字に増やすとともに、導入を加速化させ、2050年100%の目標を定めてネットゼロに向けた道筋を明確にすべき。(93文字)

【理由】
本計画案の中で再生可能エネルギーを最大限導入するとしているが、2030年のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合は36~38%と、第5次エネルギー基本計画よりは増加となったものの、まだ十分ではない。日本を含め、世界、国レベルで再生可能エネルギー100%を達成することが可能であることを示す研究成果が次々と発表されている中、日本でも早期に2030年までに再エネの割合を50%以上とする目標を掲げ、系統連系増強や柔軟な系統利活用、需要側管理などの再生可能エネルギーの導入を加速させるための事業環境の整備を急ぐ必要がある。にもかかわらず、目標とする割合の低さに加え、再エネの系統への優先接続が確保されていない状況である。世界的な再エネの普及により、今後もコストが下がる可能性は高いと考えられることから、日本も遅れることなく再エネを主力電源とする電源構成を前提として考え、そのための施策に取り組むべきである。

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