【レポート】IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠)発表


8月9日、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)第1作業部会(WG1)が、地球温暖化の科学的根拠をまとめた第6次評価報告書(AR6)の政策決定者向け要約(SPM)を発表しました。AR5以来、8年ぶりの改定となる今回の報告書の内容は、66か国、200人以上の科学者や専門家が膨大な論文やデータを精査したものです。

世界各地で温暖化が原因と見られる極端な気象現象が発生する中、最新の科学的知見を反映した今回の報告書は、「人間の影響が気候システムを温暖化させていることに疑う余地はない」とこれまでより踏み込んだ表現をしています。産業革命前に比べて気温の上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えることを目指す「パリ協定」の目標を達成するには、喫緊の対応が迫られていることが明らかとなりました。

報告書には、世界の大気、海洋、雪氷圏で広範囲かつ急速な変化が見られ、前例がないほど世界の平均気温が高まっていることが示されています。実際、日本での豪雨も含め、各地で経験したことのない規模・強度の気象現象(熱波、大雨、干ばつなど)が私たちの生活に多大な影響を及ぼしています。このまま温室効果ガスを排出し続けて残されたカーボンバジェット(炭素予算)を使い切ってしまうと、気温上昇を1.5℃に抑えることはできません。

本報告書には、気温上昇を1.5度に抑制するためには、2050年頃にCO2排出ネットゼロ(正味ゼロ)を達成するとともに、メタンなどの他の温室効果ガスの排出も大幅に削減する必要があると示されています。

この報告書の発表を受け、国連のグテレス事務総長は9日、「報告書は人類に対する警鐘だ(The IPCC Report is a code red for humanity)」としてグラスゴーで開催される第26回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP26)の重要性を訴えました。

そのCOP26では各国のNDC(Nationally Determined Contributions、削減目標)について協議されることになりますが、現在、各国が提出しているNDCでは気温上昇を1.5度に抑えるための削減には足りません。日本政府は2030年度の温暖化ガス排出を13年度比で46%削減する目標を掲げましたが、命の危険が危ぶまれるほどの気象現象が頻発する中、なおも温暖化の最大の原因である石炭火力を維持しようとしています。

日本は先進国として責任をもって排出削減に取り組み、2030年までに石炭火力から脱却しなければなりません。

AR6 Climate Change 2021:The Physical Science Basis(Link 英語)

JBCパートナー団体によるIPCC AR6に関する発信

WWF:最新の地球温暖化の科学の報告書:IPCC第6次評価報告書 「自然科学的根拠(第1作業部会)」発表(2021年8月9日)(Link
気候ネットワーク:【プレスリリース】IPCC第6次評価報告書(AR6)第1作業部会報告書を受け、エネルギー基本計画と地球温暖化対策計画の抜本的見直しが必要(2021年8月11日)(Link

関連情報

環境省:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル(Link
環境省:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第I作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について(Link
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書 第1作業部会報告書(自然科学的根拠) 政策決定者向け要約(SPM)の概要(ヘッドライン・ステートメント)(PDF