英国に拠点を置く気候政策シンクタンクのE3Gが、日本の政府・事業者が気候変動の緩和策として石炭火力発電所でのアンモニア混焼を推進することに対する問題点を指摘するレポート『Challenging Japan’s promotion of ammonia co-firing for coal power generation』を発表しました。
本レポートは、アンモニア混焼は未確立で実現可能性が限られた技術であり、それを推進する日本の政策は石炭火力発電のフェーズアウトという今明確に必要な行動を遅らせ、日本と東南アジア諸国のクリーンエネルギーへの移行をリスクに晒すと警告しています。
本レポートは、次のような提言を示しています。
- アンモニア混焼を、効率的な排出削減技術と見なすべきではない。
- 各国政府はアンモニアの石炭との混焼を阻止するために速やかに行動すべきである。
- リスクがあるにも関わらず、アンモニア混焼の推進を検討するのであれば、G7でも強調されているように、パリ協定の気温上昇1.5℃目標に沿った施策でなければならない。その場合、石炭火力発電所のライフタイム排出量と、アンモニアの製造・輸送・貯蔵のライフサイクル排出量も考慮する必要がある。
- アンモニア混焼を発電部門への多国間金融ツールの対象から除外すべきである。
- 各国政府は、グリーンアンモニアの使用が、肥料生産の脱炭素化といった排出削減効果の高い部門で戦略的に優先されるよう協力すべきである。石炭火力でのアンモニア混焼の推進は、アンモニアのサプライチェーンへの負担となり、他の部門における排出削減を遅らせるリスクがある。
- 各国政府はアンモニアの製造・使用のライフサイクル全体における炭素集約度の基準を確立するために協力すべきである。
石炭火力へのアンモニア混焼は、既存の石炭火力の延命策でしかなく、風力や太陽光といった既に商業化され大規模化の実現が可能なゼロエミッション発電手段の普及を阻んでしまうばかりか、日本のエネルギー自給率向上にも貢献しないことが指摘されています。
本レポートのダウンロード
Challenging Japan’s promotion of ammonia co-firing for coal power generation(リンク)
関連リンク
E3Gは、このレポートと同時期にアンモニア混焼とは何か、脱炭素戦略としての限界とリスクを概説する記事を公開しているので、こちらもご参照ください。
【解説】石炭火力発電におけるアンモニア混焼は、欠陥のあるアプローチだと言える理由(リンク)
作成・発行:E3G
発行:2023年4月17日