IPCC第6次評価報告書 第3作業部会報告書:
あらゆるセクターの大規模な削減対策が必要であることが明らかに
2022年4月5日(日本時間)、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)第6次評価報告書第3作業部会(WG3)が、気候変動の緩和についての報告書を発表しました。
本報告書は、「人間の影響が気候システムを温暖化させていることに疑う余地はない」と明示した昨年8月の第1作業部会報告書、「人為起源の気候変動はより頻繁で激しい異常気象を伴い、自然の気候変動を超えて、自然や人間に広範な悪影響と関連する損失や損害を引き起こしている」とした今年2月の第2作業部会報告書に続く、第3作業部会による報告書です。これらの作業部会の報告をまとめた第6次統合報告書は今秋に発表される予定です。
今回の報告書は、人為的な温室効果ガス排出は2010年から2019年の間の10年間にも増加し続けており、現時点で各国が表明している排出削減目標では、世界の平均気温上昇を産業革命前から1.5℃に抑えるのは不可能な可能性が高いと警告しています。そのうえで、1.5℃目標達成のためには、世界の温室効果ガス排出量を遅くとも2025年には頭打ちにする必要があると指摘しました。同時に本報告書は、各国で気候変動対策が取られてきていること、及び再生可能エネルギーのコストが急速に低下し、化石燃料のコストを下回るようにもなっていることなどをあげつつ、あらゆるセクターの大規模な削減対策が必要だとしています。
本報告書は、エネルギー、工業、都市、建物、交通、農林業などの部門に加え、ライフスタイルの転換といった、一般消費者を含む需要側における気候変動の緩和策を分析・評価してまとめたものです。
最大の排出源であるエネルギー部門については、2030年までの化石燃料の大幅削減、再生可能エネルギーへの転換、電化の普及、エネルギー効率向上などの大きな転換が必要と指摘しています。エネルギー部門の緩和策としてあげられている二酸化炭素回収・貯留(CCS)については、現状では技術、経済、制度、社会文化および生態系への影響において障壁があるとし、日本が気候変動対策の切り札として期待する水素・アンモニアについては、排出削減の選択肢として示されませんでした。
IPCCの李会晟(イ・フェソン)議長は記者会見で、「今回の報告書は、気候変動を抑制するための可能性がまだあることを示す力強い証拠だ。私たちは岐路に立っており、今は行動のときだ。私たちは、温暖化を止め未来を守るための手法やノウハウを持っている。」と述べました。
日本にも、2030年の削減目標を大幅に引き上げ、石炭火力発電の段階的廃止や再生可能エネルギーの大幅な導入拡大といった具体策を確実に進めることが求められます。
IPCC第6次評価報告書第3作業部会報告書
Climate Change 2022: Mitigation of Climate Change
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg3/
JBCパートナー団体によるIPCC AR6に関する発信
- 気候ネットワーク:【プレスリリース】IPCC第6次評価報告書(AR6)第3作業部会報告書 ~1.5℃目標に向けて、石炭火力のフェーズアウト・再生可能エネルギーの拡大へ大転換が不可欠~(2022年4月5日)
CAN-Japan:【プレスリリース】IPCC 第6次評価報告書(第3作業部会)の発表を受けて ―日本はあらゆる政策手段を講じ、1.5度目標の実現する脱炭素化を急げ―(2022年4月6日) - WWF:【WWF声明】 温暖化対策に関する最新のIPCC報告書発表
- グリーンピース・ジャパン:【気候変動の解決策】IPCCの最新報告書が提示する6つの「人類救済計画」
関連情報
環境省報道発表資料:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第3作業部会報告書の公表について https://www.env.go.jp/press/110869.html