ドイツの環境NGOのウルゲバルト(Urgewald)と40のパートナー団体が、11月6日からエジプトで開催される国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)の開催に先駆けて、10月6日に石炭事業に関与する企業のデータベース『Global Coal Exit List(以下、GCEL)』2022年版 を公開しました。
このデータベースは2017年から毎年更新されているものです。
GCEL2022には、石炭探査・掘削から石炭火力発電まで石炭関連事業に係る1,064社と2,000を超える関連子会社のデータが収録されています。世界で最も包括的な石炭関連事業に関わるデータベースとして、ポートフォリオにおける気候変動によるリスクを把握するための情報源として世界の機関投資家にも活用されています。
今回の更新では、いまだに多くの企業が石炭関連事業に深く関与していることが明らかとなりました。
GCEL掲載企業の46%が依然として脱石炭に逆行
GCELに掲載されている企業の46%は依然として世界的な脱石炭の流れに逆行していることが明らかに。掲載企業1,064社のうち、490社が新規の石炭火力発電所や炭鉱、あるいは石炭輸送インフラの開発に関わっている。
世界の石炭火力発電所の新規計画による発電容量は、476ギガワット(GW)に及ぶ。これらの計画が全て実現した場合、世界の石炭火力による発電容量は23%増加することとなる。石炭火力発電所計画に占める中国の関与の割合は61%に及んでおり、GCELにリストされた石炭火力発電所開発事業者の上位4社を中国企業が占めているが、多くの日本企業もリストに掲載されている。
一般炭の生産の37%以上に相当する新規の炭鉱事業が計画されている
2021年、世界の一般炭の生産におけるトップは中国の国家能源集団、次にインドの国営石炭生産会社Coal Indiaが続く。
現在の世界の一般炭生産量の37%以上に相当する年間25億トン(Mtpa)を超える新規の一般炭採掘プロジェクトが進められようとしており、こうしたプロジェクトの大部分は、中国 (967 Mtpa)、インド(811 Mtpa)、オーストラリア(287 Mtpa)、ロシア(144 Mtpa)、および南アフリカ(91 Mtpa)に点在している。
脱石炭の目標年を明確にした企業はGCEL掲載企業の3%を下回っている
現在、世界中には6,500以上の石炭火力発電所があり、その合計発電容量は2,067 GWに及ぶ。GCELに掲載されている1,064社のうち、これまでに脱石炭の目標年を発表しているのは56社(5.3%)、1.5℃目標に整合する目標年を発表しているのは27社(2.5%)のみである。
IEAの2050年ネットゼロシナリオによれば、高所得国の石炭火力発電所は2030年までに、それ以外の国の石炭火力発電所も2040年までに廃止しなければならない。イタリア、フランス、英国などの多くのOECD加盟国は脱石炭の目標年を定めているが、米国や日本はフェーズアウトの目標年を定めていない。
また、Urgewaldのリリースには、日本の電力会社が現時点で実証されていない技術に依存する「ゼロエミッション(排出ゼロ)火力発電」を推進している姿勢についても、JERAとJ-Powerの水素・アンモニアの混焼、燃料としての利用を挙げて言及しています。
GCEL2022掲載の日本企業TOP10(掲載されている石炭火力発電所の発電容量の大きなものから)
関連リンク
UrgewaldのMedia Briefing:「Urgewald’s 2022 Global Coal Exit List: No Transition in Sight」
Global Coal Exit List 2022
作成・発行:Urgewald
発行:2022年10月6日