【レポート】赤道(エクエーター)原則は化石燃料への融資を止められないのか


国際NGOバンクトラックが行った化石燃料業界への資金提供に関する調査により、赤道原則/エクエーター原則(Equator Principles)に署名した銀行が、2015年末にパリ協定が署名されて以降も、少なくとも200件の化石燃料プロジェクトへの融資に関与していたことが明らかとなりました。

バンクトラックが発表したレポート『エクエーター遵守を謳った気候破壊〜エクエーター原則の下で銀行はいかに化石燃料に融資を行ったか〜(原題:Equator Compliant Climate Destruction: How banks finance fossil fuels under the Equator Principles)』には、赤道原則の下で行われた、気候を破壊する化石燃料プロジェクト8件への融資が取り上げられています。

赤道原則って何?

赤道原則とは、金融機関が大規模なインフラ(開発や建設)事業に融資を行う場合に、事業が自然環境や環境社会に与える影響を配慮して実施することを確認する基準を定めたものです。赤道原則は、対象となるプロジェクトファイナンス等の事業が行われる場所(国、地域)や業種を問わず適用されるものです。日本の3メガバンクをはじめ、多くの金融機関が赤道原則を採択しています。

この調査結果のどこが問題?

赤道原則を採択した金融機関は、ガイドラインの遵守状況を確認し、遵守しないプロジェクトに対しては融資を行えないことになっています。にもかかわらず、赤道原則に署名した銀行が200件以上の化石燃料プロジェクトへの融資に関与していたことが問題なのです。資金提供されたプロジェクトは、世界の気候に著しい悪影響をもたらすばかりか、地域社会や環境に甚大な被害を与えています。
バンクトラックは、赤道原則のウェブサイトで銀行自らが融資を報告した195件の化石燃料プロジェクトを対象に調査を実施し、その中から8件への融資についてケースレポートをまとめ、具体的な問題を指摘しています。

8件の中には日本の金融機関が関与するものが複数含まれている

以下が世界各地で計画されている/計画が進められている8件の化石燃料プロジェクトで、この中の幾つかに日本の金融機関も深く関わっています。

また、融資を実施しながらも報告を怠っているエクエーター銀行があることも指摘しています。それでも今回調査対象となった200件の化石燃料プロジェクトへの融資が報告されているエクエーター銀行の中で、邦銀大手3行(三井住友・三菱UFJ・みずほ)の融資件数は1位〜3位を占めています。

赤道原則の遵守は不十分で目的に寄与していない現実

本レポートは、上述の8件のケースにつき赤道原則に定められた気候関連の要件が満たされているかを分析した結果、要件を完全に遵守しているものはないと結論づけています。

赤道原則の原則の目的は、環境・社会リスクを管理するツールとして機能することですが、赤道原則を採択している銀行が化石燃料プロジェクトへの組織的な融資を継続している現状は、この目的に反しています。さらに、現在も続いている化石燃料拡大プロジェクトに対する融資は、地球の平均気温の上昇を1.5℃までに抑えることを目指すパリ協定の目標にも整合しません。

赤道原則の下では、化石燃料を新たに採掘するプロジェクトや自然環境や地域社会に多大な悪影響を与えかねないインフラ建設への融資、先住民族の権利をはじめとした人権を侵害するプロジェクトへの融資は、許されるべきではないのです。

 

関連情報

Equator Compliant Climate Destruction(レポート本文英文
エグゼクティブ・サマリー和訳(PDF
メディア向け参考資料(国別情報・ケーススタディ)和訳(PDF

気候ネットワーク発出情報
350.org Japan発出プレスリリース

地域のアクション:神戸

 

作成・発行:バンクトラック(Bank Track)
発行:2021年10月26日

Image Feature credit: Equator Compliant Climate Destruction report cover, BankTrack