【レポート】石炭火力のアンモニア混焼による大気質への影響調査


フィンランドの独立系シンクタンク「エネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)」は、5月16日(東京時間)、石炭火力発電へのアンモニア混焼の影響を調査分析した結果『石炭アンモニア混焼による大気質への影響(原題:Air quality implications of coal-ammonia co-firing)』を発表しました。

このレポートには、JERAが保有する日本最大級の石炭火力発電所である碧南石炭火力発電所4号機*における石炭とアンモニアの混焼による大気質への影響を調査し、燃料のライフサイクル(採掘、工業生産、輸送、燃焼)からの排出も踏まえてPM2.5以外の汚染物質(窒素酸化物NO2、硫黄酸化物SO2、アンモニアNH3)の排出量の試算を分析した結果、石炭とアンモニアを燃焼させると微小粒子状物質のPM2.5やその他の汚染物質の排出が大幅に増えることが判明したと示されています(下図参照)。

*JERAは、碧南石炭火力発電所4号機(100万kW)での20%アンモニア混焼の実証実験を今年から開始する。2050年までに混焼率を拡大し、専焼化への移行を進めるとしている。

  • 碧南火力発電所4号機の実証試験における、PM2.5および前駆体ガスの総排出量は、発電に要する燃料源の20%をアンモニアに置き換えた場合は67%増加し、50%置き換えた場合には167%にまで増加する。
  • こうした総排出量の増加は、PM2.5の前駆体ガスであるアンモニア(NH3)の輸送および燃焼時の排出に起因している。よって燃料のライフサイクルも踏まえればアンモニアを発電燃料として燃焼すると、汚染物質の排出量が増加することになる。
  • 大気中に放出されたアンモニアはPM2.5の形成につながり、汚染物質の総排出量の増加はPM2.5濃度の増加につながる可能性が高く、公衆衛生への負担も増大することになりかねない。

 

出典:石炭アンモニア混焼による大気質への影響(CREA, 2023)

アンモニアが燃焼時にCO2を排出しなくとも、ライフサイクルにおけるCO2排出量とともに、混焼比が高くなるとアンモニア(NH3)の排出量が大幅に増えている点は、NH3がPM2.5の強い前駆物質であることを踏まえると留意すべきでしょう。

日本政府は、「GX(グリーントランスフォーメーション)推進法案」のもと、脱炭素戦略の一環として石炭火力へのアンモニア混焼を推進しています。経産省とJERAは、20%アンモニア混焼でのNOx(窒素酸化物)の排出抑制に成功したと述べていますが、碧南での混焼実験の状況も含め、確たる情報は公開されていません。混焼率を増やした場合、あるいは大規模施設で専焼を行った場合でも問題がないかどうかについて引き続き調査が必要です。このレポートは、アンモニア混焼の拡大によって人々の健康が危険にさらされる危険性を指摘した上で、国内外の発電所でのアンモニア混焼を拡大、混焼率の増大を行った場合の排出量や大気質の変化に関する調査を行うよう勧告しています。調査の実施とともに、その結果を国民に開示することを政府および事業者に強く求めていかなければなりません。

CREAによるプレスリリース(英語)

Japanʼs move to co-fire ammonia in coal power plants to have adverse impacts on air quality (PDF

レポートへのリンク

Air quality implications of coal-ammonia co-firing (英語ダウンロードサイトへのリンク
石炭アンモニア混焼による大気質への影響(日本語PDF)

参考記事

【ニュース】日本の水素・アンモニア戦略は本当に認められたのか?(リンク

 

作成・発行:The Centre for Research on Energy and Clean Air (CREA)
発行:2023年5月16日