ドイツの環境NGOジャーマン・ウォッチ(Germanwatch)は11月19日、2024年における世界各国の気候変動対策を評価した報告書「気候パフォーマンス指標(Climate Change Performance Index:CCPI)2025」を公表しました。Germanwatchは2005年以降、毎年COPの時期に合わせ、各国のGHG排出量や、エネルギー使用量、再生可能エネルギーの割合、気候政策などを評価したCCPIを発行していますが、今回は14の指標で評価と順位付けを行った結果を発出しています。今回、評価対象となったのは63ヵ国とEUで、日本は58位でした。評価対象となった国々のGHG排出量の合計は、世界全体の90%を占めています。
CCPI2025の全ての指標で「非常に高い」の評価を受けた国はなかったため、1~3位に該当する国はありませんでした。最上位の4位となったのは、「高い」の評価を受けたデンマークです。今回は対象となった64の国・地域のうち、61の国と地域が過去5年間にエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合を増やしていた一方で、29か国のGHG排出量評価で低い、あるいは非常に低いと評価されています。
日本は昨年と同じ58位で、「非常に低い」評価を受けました。G20の中で「高い」評価を受けたのは、6位の英国と10位のインドのみでした。中国は55位、米国は57位で、日本より上位に位置しています。中国は世界最大の排出国であり、依然として石炭に大きく依存していますが、再生可能エネルギーが目覚ましい勢いで拡大しています。また、第2位の排出国である米国については、大統領選挙の結果が今後数年間の米国の気候変動対策を左右する可能性が懸念されています。
CCPIは、GHG排出量(全体評価の40%)、再生可能エネルギー(同20%)、エネルギー利用(同20%)、気候政策(同20%)の4つのカテゴリーにつき、パリ協定の目標を達成するために各国がどの程度適切な行動をとっているかのパフォーマンスを評価しています。日本の評価をカテゴリー別に見ると、GHG排出とエネルギー利用において「低い」評価、再生可能エネルギーと気候政策において「非常に低い」評価を受けました。気候政策の順位は特に低く66位で、その下に続くのは最下位(67位)のイランのみでした。
日本は2050年ネットゼロ目標を掲げているにもかかわらず、達成に向けた明確なロードマップが描けていないと評価されました。特に、石炭火力を2035年までに段階的に廃止すると合意したG7諸国の中で唯一、石炭火力廃止に向けた具体的な計画を示していないことが問題視されています。評価を行った専門家らは、2030年までの石炭火力の段階的廃止は、1.5℃目標達成のために不可欠であると述べています。
その他に日本の課題として、大部分を輸入に頼るバイオマスを石炭火力発電所で混焼していることや、国際合意を独自に解釈し、石炭火力発電や化石燃料を利用し続けるための抜け道を探っていることを挙げました。
さらに日本への提言として、CCPIは洋上風力発電や太陽光発電の拡大や、再エネの普及に欠かせない送電網の強化を求めています。
現在、2025年2月の提出期限に向け、各国が次期NDCの提出準備を行っています。2023年のCOP28では、化石燃料からの脱却や、2030年までに世界で再エネ容量を3倍、エネルギー効率を2倍にすることが合意されました。しかし、多くの国のNDCはこれらの目標に届かないとCCPI2025は指摘しています。次期NDCは、COP28合意を反映させたもの、つまり再エネ拡大、エネルギー効率改善、化石燃料利用の段階的廃止に向けた具体的な政策を含むべきであることが強調されています。
関連リンク
German Watchのリリース:The Climate Change Performance Index 2025: Results(リンク)
NewClimate Instituteのリリース: Climate Change Performance Index 2025 (リンク)
CCPI 2025: Ranking and Results(リンク)
CCPIレポートのダウンロードサイト(リンク)
解説動画 Livestream: CCPI Press Conference 2025, Video
日本の評価についてのページ(リンク)
作成・発行:Germanwatch
発行:2024年11月20日