【レポート】活況と不況2025 (原題 Boom And Bust Coal 2025)発表


4月3日、グローバルエナジーモニタ(GEM)らが毎年発行している、世界の石炭火力発電所の稼働状況および計画状況をまとめた報告書『活況と不況-石炭2025(Boom and Bust Coal 2025)』が公開されました。10年目を迎える今回のレポートには、日本と韓国が脱炭素と銘打った不確実な技術に執着することで、石炭火力の段階的廃止を危うくしていると述べられています。

世界が石炭火力発電所の廃止に向けて動く中、日本ではGENESIS松島計画(0.5GW)が、韓国では三陟(サムチョク)発電所(1 GW)計画が進行しています。アンモニア・水素を混焼することによって石炭火力を使い続けることは、今後10年間で石炭火力を段階的に廃止しようとしている先進諸国との足並みを乱すものですが、両国はともにアンモニアや水素を燃料として利用する取り組みを加速させているに留まらず、こうした技術をアジア諸国に輸出しようと計画しています。

GENESIS松島計画:J-Powerが1981年に稼働を開始した松島火力発電所(長崎県)2号機に石炭ガス化設備とガスタービンと排熱回収ボイラーを後付けする計画、現在環境アセスメントが行われている。
三陟(サムチョク)発電所計画:韓国江原道三陟(サクチョク)に超々臨界石炭火力発電所2基を建設する計画。1号機は2023年10月に運転開始、2号機は2025年完成予定。

韓国は国内の石炭火力発電所で20%アンモニア混焼を導入し、副燃料として利用し続ける計画を進めており、アンモニアの混焼率を20%から段階的にあげていき、最終的には100%(専焼)にすることで石炭火力を置き換えようとしている日本の計画とは異なる部分もあります。しかし、いずれにしても確立されていない混焼技術に頼ったCO2排出削減計画であることには変わりなく、パリ協定の目標にも整合しない戦略であると指摘されています。

韓国および日本の石炭火力廃止計画はパリ協定に整合していない

出典:Boom and Bust Coal 2025

その他、世界全体の石炭の動きをまとめた本レポ-トのポイントを抜粋しておきます。

  • 2024年、新たに稼働した石炭火力発電所は44ギガワット(GW)で、2004年以来20年ぶりの低水準となった。これは、2004年から2024年までの年間平均(72GW)を30GW近く下回ったことになる。とはいえ、新たに稼働を開始した44GWは、廃止された発電容量(25.2GW)を上回っていたため、世界の石炭火力発電容量としては18.8GWの増加となっている。中国を除けば、廃止22.8GWに対して、追加された発電容量が13.5GWだったので、差し引きとしては9.2GWの減少となった。
  • 中国とインド以外では開発中の石炭火力発電容量は10年連続で減少しており、2015年の445GWから2024年の80GWに、80%以上減少した。現在、開発中の石炭火力発電容量の96%は10カ国に残るのみである。特に、インドにおける新規案件は記録的な数量(38GW)となり、インドと中国だけで2024年の世界中の新規案件の92%(116GW中107GW)を占めていた。
  • インドネシアとマレーシアの石炭フェーズアウトへの賛同、フィリピンの石炭火力発電所の新規建設プロジェクトの承認に関するモラトリアム宣言、そしてベトナムは公正な移行計画の策定ーとそれぞれの理由により東南アジアでの新規石炭計画は減少している。
  • 2023年にEU27か国で廃止された容量は、ドイツの削減(6.7GW)を筆頭に2.7GWから11GWに4倍に増加した。EU以外では、英国が最後の石炭発電所を閉鎖し、2015年のパリ協定以降、石炭発電を段階的に廃止する6番目の国となった。
  • OECDに加盟している38か国では、新規の石炭火力発電所計画は、2015年の142件から、現在は5件に減少している。それでも、パリ協定の目標を達成するためには、OECD諸国で1年間に廃止する石炭火力発電所の設備容量を3倍(19GWから70GWに)増加させる必要がある。

G7諸国は、2035年の脱石炭に向け、石炭火力発電所の段階的廃止計画を加速させる必要がある。

出典:Boom and Bust Coal 2025

この図では、G7で唯一、日本が石炭火力の廃止時期を明言していないことが明らかに示されています。

レポートのダウンロードほか

プレスリリース:未完成技術への執着によって軌道から逸れる 日本と韓国の石炭の段階的廃止計画(PDF)
Boom and Bust Coal 2025 Tracking The Global Coal Plant Pipeline(リンク
Global Coal Plant Tracker(リンク
活況と不況-石炭 2025世界の石炭火力発電所の計画追跡(日本語サマリーPDF

作成・発行:
グローバルエナジーモニター (GEM)
共著団体:エネルギー・クリーンエア研究センター (CREA)、 E3G、リクレイム・ファイナンス (Reclaim Finance)、シエラクラブ、SFOC、気候ネットワーク、CAN-ヨーロッパ、Waterkeepers Bangladesh, Dhoritri Rokhhay Amra (DHORA), Trend Asia, Policy Research Institute for Equitable Development (PRIED), Chile Sustentable, POLEN Transiciones Justas, Bankwatch, The Institute of Lawyers for the Protection of the Environment (INSAPROMA), Africa Just Transition Network (AJTN), and ARAYARA International Institute.

発行:2025年4月3日