【レポート】『活況と不況2024』 発表、2023年に69.5 GWの石炭火力が稼働開始


グローバルエナジーモニタ(GEM)らが毎年発行している、世界の石炭火力発電所の稼働状況および計画状況をまとめた報告書『活況と不況-石炭2024』が公開されました。

パリ協定の締結後、2021年のグラスゴー気候合意には、2100年の世界平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5℃以内に抑える努力を追求していくことが盛り込まれ、多くの国が野心的な対策に取り組んでいます。しかし、グローバル石炭火力発電所トラッカーのデータ*によれば、2023年、世界で69.5 GWの石炭火力発電設備が稼働を開始しました。21.1 GWの設備が閉鎖されたことで、同年の年間純増分は48.4 GWとなっていますが、世界の合計設備容量は2,130 GWとなり、稼働中の石炭火力発電設備は、2016年以降最大の純増となっています。この増加の主たる原因は、中国における新規石炭火力発電所の増加(47.4GW)ですが、日本でも2.5GWの新規発電所が稼働を開始しました。

*本報告書の分析のもととなっているGlobal Energy Monitorのグローバル石炭火力発電所トラッカーのデータは、2010年1月1日以降に計画されたすべての石炭火力発電設備(30MW以上)と、既存のあらゆる石炭火力発電設備を特定し、マップ化したオンライン・データベースです。このデータは半年ごとに更新されています。

出典:Boom and Bust Coal 2024

今回の報告書には、2023 年、石炭火力発電所を閉鎖したのとほぼ同じ数の国が新しい石炭火力発電所の運転を開始しており、全体としては廃止された石炭火力発電所よりも追加された発電容量の方が多かったことが示されています。アメリカ、イギリス、オーストラリアの3か国だけでも1GWの石炭火力発電所が閉鎖になっていますが、中国と日本を含む10か国での増加分が、世界の発電容量を押し上げる結果となりました。

出典:Boom and Bust Coal 2024

報告書のポイント

  • 先進7か国(G7)は、世界の稼働中の石炭火力設備容量の15%(310 GW)を占めているが、2015年の23%(443 GW)から低下している。2023年に日本での新規発電所の建設が完工したため、G7には建設中の案件がなくなったが、いまだに日本に1件、米国に2件の計画がある。
  • G7にEUおよび新興国12か国を加えた計20か国と地域(G20)は、世界の稼働中の石炭火力設備容量の92%(1,968 GW)、建設前石炭設備容量の88%(336 GW)を占める。
  • 中国およびそれに次ぐ10か国が世界の建設前設備容量の95%を占める。残り5%は21か国に分散し、そのうち11か国では建設事業は1件のみであり、「新規石炭ゼロ」という節目となる目標の達成間近である。
  • 2023年、中国以外の石炭火力発電所建設計画の減少は、主にインド(11.4 GW)、カザフスタン(4.6 GW)、インドネシア(2.5 GW)による計20.9GWもの完全に新規の計画に加え、以前に棚上げ、またはキャンセルされた4.1 GWの設備容量が再び提案されたことで相殺された。

本書の中で、日本には石炭火力の段階的廃止目標年がなく、稼働中の設備容量の中で、将来的に閉鎖が予定されている設備はわずか1.9 GWであることと、再生可能エネルギーへの移行に消極的なことが指摘されています。日本は、2050年ネットゼロを掲げてはいますが、2022年度の国内の発電電力のうち化石燃料による発電が70%以上(天然ガス33.7%、石炭30.8%、石油8.2%)を占めている状況で、G7の中で最も石炭への依存度が高く、G7を始めとする周辺諸国と比べても再生可能エネルギーへの移行が遅れています。現在、2024年度中をめどにエネルギー基本計画を改定するとして検討が始まっているので、現行の第6次エネルギー基本計画(2030年度でも電力の19%を石炭でまかなう計画、再生可能エネルギーの割合は36~38%)から石炭をいかに削減し、再生可能エネルギーを拡大するかが注目されます。

本レポートのダウンロード
活況と不況-石炭 世界の石炭火力発電所の計画追跡(日本語サマリーPDF
Boom and Bust Coal 2024 (ダウンロードサイト 英語
Global Energy Monitorによる日本向けリリース文書(英語PDF日本語PDF

*日本語の要約版(6ページ)は、要旨と主な進展を抜粋したものです。日本以外の国の状況を含めた詳細は英語版(フルレポート)をご覧ください。

作成・発行:
グローバルエナジーモニター (GEM)、エネルギー・クリーンエア研究センター (CREA)、 E3G、リクレイム・ファイナンス (Reclaim Finance)、シエラクラブ、SFOC、気候ネットワーク、バングラデシュの団体、Trend Asia、ACJCE、チリ・サステナブル (Chile Sustentable)、 POLEN Transiciones Justas、Iniciativa Climática de México、Arayara
発行:2024年4月11日