Climate Integrateがレポート「アンモニア利用への壮大な計画 ー 迷走する日本の脱炭素 ー」を公表しました。
本レポートは、2050年のカーボンニュートラルの解決策として日本が進める燃料アンモニアの利用の有効性について、論点ごとに検証し、「燃料アンモニアの混焼に突き進む日本の方針は、削減寄与、経済性、環境影響の観点から問い直しが求められる」と警鐘を鳴らしています。
本レポートのポイントは次の通りです。
- 電力部門の脱炭素化対策として、石炭火力発電でアンモニアを燃料として利用し混焼することを官民で積極的に推進している国は、実質的に日本だけである。
- 国内のアンモニア需要は現在年間100万トン。今後燃料としての利用拡大を見込み、2030年に年間300万トン、2050年には年間3000万トンに増加すると想定し、2050年には世界全体で1億トン規模の日本企業によるサプライチェーン構築を進めている。
- 政府は、エネルギーセキュリティの確保のために、上流開発支援やLNG(液化天然ガス)調達への国の関与強化、ロシア以外の生産国への増産の働きかけなどを通じて、LNG利用をさらに拡大しようとしている。
- 政府は、アンモニアと水素の需要を作り出すために、化石燃料で製造される場合でも「非化石エネルギー源」と位置付けて推進する方針である。
- 燃料アンモニアの事業は、グリーンイノベーション基金、トランジション・ファイナンス、官民のイニシアティブなどを通じて推進され、アジアのトランジションの支援の枠組みでも推進されている。
- アンモニアは化石燃料から製造されており、当面は混焼率も低いため、二酸化炭素回収貯留技術(CCS)を通じてCO2を処理しない限り、CO2削減効果はほとんどない。またCCSの実現可能性はまだ見通せない。
- 化石燃料起源のアンモニアを20%混焼した場合、燃料費は石炭の2倍になり、今後の炭素価格上昇を見込むと総燃料費は3倍に上る。
- 燃料アンモニアは、燃焼により窒素酸化物を排出して大気汚染を悪化させる。すでに大きくバランスが崩れている窒素循環にさらに介入し、陸域や水系に窒素が入り込むことを増やすことになる。
- アンモニア利用のためにインフラ整備に大規模な投資を行うことには、CO2削減効果やコストに優位性がなく、環境影響を伴う事業であるだけに、大きなリスクを伴う。
レポートのダウンロードはこちらから
「アンモニア利用への壮大な計画 ― 迷走する日本の脱炭素 ―」(Climate Integrateへのリンク)
作成・発行:Climate Integrate
発行:2022年 6月 30日(更新)