環境大臣が山口宇部パワー石炭火力新設に「是認しがたい」 ~地元・山口県知事も「事業見直し」を要請~


2015年6月12日、環境大臣は、山口宇部パワーの石炭火力発電所新設計画に対して「是認しがたい」と事業の再考を求める意見を提出しました。

今回の意見は、同社が山口県宇部市に建設を計画している120万kW(60万kW×2基)の石炭火力発電所に関するもの。アセスの第一段階である計画段階環境配慮書に対する意見として経産大臣に提出されたものです。経産大臣はこの環境大臣の意見を勘案して意見を述べることになっており、6月26日頃の発表が見込まれています。

●環境大臣の意見書の内容

意見書では、「東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ」でもとめられている電力業界全体でCO2削減に取組む枠組みがまだ構築されていないこと、さらに今回の事業についてCO2対策が明らかにされていないことを理由に挙げて、2030年に温室効果ガス26%削減(2013年比)が危うくなると懸念を示しています。

大臣が「是認しがたい」という強い表現で意見書を出したことはきわめて異例です。市民からは、環境大臣意見を歓迎する声があがっています。気候ネットワークは、今回の事業が実現すれば年間720万tものCO2が排出されることを指摘し、大臣意見に賛同の意を示すとともに、経産大臣が同様の意見を出すことをもとめ、他の計画も再考するべきだとしています。また、石炭ラッシュが続く中、それに待ったをかけた今回の意見は、全国各地のメディアでも大きく取り上げられています。

●国会でも論戦

この件は、国会でも話題となりました。

6月16日の参議院経済産業委員会では、直嶋正行委員(民主)、東徹委員(維新)、倉林明子委員(共産)の3名の議員が山口宇部パワーを含む石炭火力について質問。しかし、温室効果ガス削減目標やG7サミットの合意との整合性を問われた安倍首相と宮沢経産大臣は、石炭火力の高効率化を促すと繰り返すことに止まりました。委員らは、石炭は温暖化を加速させ、世界的に許されないものだと指摘を投げ返していました。

●地元・山口県知事も、事業計画の見直しを要請

さらに、続く17日、今度は山口県知事が意見書を発表しました。この中で、CO2排出量が明らかにされていないことに触れて今後のアセス手続のなかで明示することを求めたほか、国の意見等を踏まえて事業計画を見直すことが必要との認識を示しており、環境大臣の意見を後押しする内容となっています。

今回の環境大臣の意見は、3.11後に計画が急増している石炭火力発電の問題に、初めて正面から向き合ったものであり、風向きが大きく変わってきました。注目されるのは、経産大臣が提出する意見です。脱石炭に向かっている世界の現状を受け入れ、今回の環境大臣意見を十分に受け止め、事業の停止を要請するべきでしょう。

 

関連リンク

西沖の山発電所(仮称)新設計画に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見の提出について(2015/6/12)

プレスリリース 環境大臣、新規石炭火力の新設計画を是認せず 大臣意見を歓迎:気候変動対策へ逆行する新規の石炭火力建設計画は直ちに停止すべき(気候ネットワーク 2015/6/12)

西沖の山発電所(仮称)新設計画に係る計画段階環境配慮書に対する知事意見について(2015/6/17 山口県)

 

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