不誠実な対応を続ける仙台PS 新市長は自主アセスを求める意向


アセス法の対象規模をすり抜けて情報をひた隠しにし、住民の声も無視し続けてきた仙台パワーステーション(以下、仙台PS)(関連記事参照)ですが、その不誠実さはとどまるところを知りません。

約4万人の市民からの反対の声にも仙台PSは耳を貸さず

2017年3月8日、仙台パワーステーションはこれまで断固として拒否していた事業説明会を実施しました。告知期間が短く開催日時や場所は、とても参加者に配慮されたものではありませんでしたが、蓋を開けてみると約500名の参加者が集まり、立ち見が出るほど。仙台PSは、冒頭部分を除いてマスコミを締め出そうとしたために参加者からいっせいにブーイングを浴び、参加していた市議や県議の交渉などによって渋々撮影を許可するという波乱の幕開けとなりました。質疑応答では「法に則って事業を進めている」「文書で住民コミュニケーションを進めてきた」と一方的に主張し続けます。公害防止協定で定められている「環境情報の公表や地域住民とのコミュニケーションを積極的に行うこと」を守るつもりはないようです。

4月から5月にかけては、地元で反対運動を続けてきた「仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会」(以下、考える会)、仙台PSの試運転と操業中止を求めて署名活動を実施し、わずか2ヶ月間で22,813筆を集めました(7/4現在では39,618筆に至っています)。5月末に宮城県知事と仙台市長に提出し、6月1日には仙台PSに報告を郵送しています。しかし仙台PSは2万人を超える市民の反対に耳を傾けようとせず、6月12日の午後8時に試運転を開始し、翌13日にウェブサイトでそのことを公表しました。この試運転強行に対しては「考える会」が抗議声明を発表したほか、気候ネットワークと国際環境NGO FoE Japan、国際環境NGO グリーンピース・ジャパンが連名で抗議文を送付しています。

この後も7月19日には発電を開始、26日には石炭を投入し、考える会や複数の環境団体から批判を浴びています。

新市長は自主アセスを求める意向 「仙台を石炭火力が集積する場所にはしない」

怒っているのは市民だけではありません。宮城県や仙台市も、仙台PSの強引な試運転開始に対して批判的なコメントをしました。なぜなら、県や市は試運転に先立って報告をするよう仙台PSと約束をしていたからです。これに対して仙台PSは「約束した事実はない」と反論し、泥沼の様相です。このような仙台PSの一連の動きや石炭火力をめぐる情勢に懸念を大きくした市長は、6月29日、環境省と経産省を訪れて国の規制を求める要望書を提出しました。また、7月23日に新市長に当選した郡和子氏は、事前の公開質問状への回答の中で、仙台PSに自主的アセスを求めたいとしています。仙台PSヘの逆風は強まる一方です。

10月に営業運転開始予定とされ、これまでのやり方を踏まえれば仙台PSは何が何でも予定通りに実施しようとするでしょう。同規模の石炭火力発電所を計画していた前田建設株式会社は、パリ協定など昨今のエネルギーをめぐる情勢を踏まえて、石炭を使用することを中止しました。仙台PSは、気候変動対策の喫緊性を認識し、事業自体を取りやめるべきです。

仙台PSには自ら情報を公開する姿勢が著しく欠けていますが、その中にあって説明会を開催させ(6月には追加開催)、マスコミの撮影を許可させ、資料をウェブサイトに掲載させるようこぎつけたことは、住民が粘り強く、議会や行政を巻き込んで活動を続け、事業者に意思表示をしてきたことの成果です。これによって、仙台港の石炭火力発電所に関する問題点(仙台PSだけではなく仙台高松発電所についても!)がメディアに取り上げられ、多くの人の関心を高めることとなりました。もちろん市民は、ここで追及の手を緩めるつもりはありません。営業運転を阻止し、事業を撤回させるまで戦います。

<これまでの経緯>(前回までのまとめ以降)

2017年3月8日 仙台PSの住民説明会に約500人が参加。
2017年3月14日 市長が記者会見で仙台港の石炭火力発電所問題についての質問に回答
2017年3月16日 「考える会」がプレスリリース「被災地・宮城を石炭火力発電銀座にするな」を発表
2017年3月27日 宮城県知事に多賀城市・七ヶ浜町への大気汚染観測局設置に関する申入書県主導による「仙台パワーステーションに関する意見交換会」開催に関する申入書を提出
2017年4月2日 仙台PSの操業中止を求める緊急署名開始。5月にかけて市内で署名活動を8回行う。
2017年4月27日 石炭火力発電の健康被害に関する講演会開催
2017年5月       健康影響調査(ピークフロー調査)を開始
2017年5月28日 仙台PS周辺で風船パレードのアクション
2017年5月30日 宮城県知事、仙台市長宛に署名提出
2017年5月31日 多賀城市長宛に署名について報告
2017年6月1日 仙台PSと関係7自治体(注1)宛に署名について報告
2017年6月7,8日 仙台PSが多賀城市内の2ヶ所で説明会を開催
2017年6月12日 仙台PSが試運転を開始(20時ごろ)
2017年6月13日 仙台PSの試運転開始に対して考える会が抗議声明を発表し、記者会見開催。また、3つの環境NGOが連名で抗議声明を送付。
2017年13日 宮城県が、仙台PSが試運転開始を事後報告したことを批判し、知事が取材にコメント
2017年14日 「考える会」が、仙台PS及び関係7自治体に抗議声明を送付
2017年6月16日 仙台市議会で環境局長が仙台PS試運転について「周知期間をおいてから試験稼働するよう指導してきた」と発言。
2017年6月16日 仙台PSが、県が事後報告を批判したことに対して「約束した事実はない」と反論(16日)
2017年7月13日 仙台PSが七ヶ浜町で説明会開催
2017年7月19日 仙台PSが発電開始。これに対して考える会環境団体14団体が抗議声明を発表

(注1)宮城県、仙台市、塩竈市、名取市、多賀城市、七ヶ浜町、利府町。

<県議会>
2017年3月9日 花木則彰議員質問(予算等審査特別委員会)

<行政>
2017年4月19日 仙台市が、環境アセスメントにおける石炭火力発電所の規模要件撤廃を発表(19日)
2017年6月29日 奥山仙台市長が環境省と経産省を訪問し、石炭火力発電の規制を求める要望書を提出
2017年7月23日 郡和子氏が新市長に当選

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関連リンク

仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会(外部リンク