自然エネルギー財団 報告書「日本における石炭火力新増設のビジネスリスク―設備利用率低下による事業性への影響―」を発表


7月20日、公益財団法人 自然エネルギー財団が報告書『日本における石炭火力新増設のビジネス環境並びにリスク―設備利用率低下による事業性への影響―』を公表しました。

パリ協定の発効から世界で脱炭素経済に向けた動きが加速しており、石炭ビジネスからの投資撤退「ダイベストメント」や新規建設計画の中止などが進んでいます。
本報告書では、日本の電力需給の現状を踏まえた石炭火力発電所の新増設におけるビジネスのリスクを以下のように明らかにしています。

  • 日本の電力需要は、2010-2015年度のわずか5年で約10%減少。火力発電所の利用率も震災後に一時上昇したが、その後低下し、2016年度には53%となった。
  • 国や電力広域的運営推進機関の予測では、年間電力需要、最大電力の双方において、今後の大きな増加は見込まれていない。
  • 「エネルギー基本計画」で石炭火力発電が「安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード電源」と位置付けられ、日本の石炭火力発電所の新増設が計画された。現在公表されている新増設計画がすべて運転開始するとして試算した場合、電力需要が減少し、エネルギー効率化が進む中、事業計画の前提となっていると考えらえる設備利用率70%・稼働年数40年の実現可能性は低く、利益を生むことは難しいと考えられる。
    世界的にRE100(再エネ100%)を宣言する企業が増えており、化石燃料の中でも特に温室効果の高い石炭火力発電への依存度が下がるのは確実。
  • そして日本では2017年になって4基の計画が中止となったが、まだ新増設計画を進める多くの事業者に、日本の電力需要や世界的な脱炭素の動向を見つつ、的確な投資判断が求められると報告書は結んでいます。

注)
本報告書では、「2017年5月時点で42基(1860万kW)の石炭火力発電所の新増設計画がある」としているのに対し、気候ネットワークで石炭火力発電所の計画をウィッチしている『石炭発電所ウォッチ(https://sekitan.jp/plant-map/ja)』では現在計画中の発電所は43基(2,043.3万kW)と示している。計画数に1基の差が生じているのは、自然エネルギー財団が計画中止になった4基に加えて、石炭発電所ウォッチ上で<公式発表なし>としている3基も対象外としているのに対し、石炭発電所ウォッチは計画中止になった4基に加えて、既に稼働を開始している2基を対象外としているためである。尚、計画中止になった4基とは、兵庫県の赤穂発電所(現1号機、2号機)、千葉県の市原発電所および宮城県の(仮称)大船渡港バイオマス混焼石炭火力発電所である。

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日本における石炭火力新増設のビジネスリスク―設備利用率低下による事業性への影響―