発電所に関する情報開示、世界に遅れをとる日本


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Source: Michael Prince / Corbis

東京電力と政府は、福島第一原発事故から3年が経っても、いまだに福島の状況についての正確な情報を公開せず、国内だけでなく世界中から批判を浴び続けています。同じように、石炭火力をはじめとする発電所に関する情報についても、政府と電力会社による情報公開はまったく十分ではなく、国内の石炭火力発電の現状を評価することがほとんどできない状況です。例えば、CO2やSOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)、水銀、PM2.5の排出量や、使われている発電技術、発電効率に関する実データは、ほとんど手に入れることはできません。

一方アメリカでは、まったく状況が異なっています。アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)のAir Markets Program Data (AMPD)では、米国内の全ての発電所の情報を開示していて、1時間毎の詳細データでさえ、誰でもウェブサイトから入手することができるのです。CO2やNOx, SOx、水銀などの汚染物質に関する実排出量の情報も得られるため、各発電所が健康や環境にどれくらい影響を及ぼしているのか知るのに非常に役立つものです。このようなプログラムがあるのはアメリカだけではなく、例えばEUには、汚染物質排出移動登録制度があります。どちらのケースでも、各発電所は、毎年排出量を報告することが義務付けられています。

1月には、いまや世界最大のCO2排出国(とはいえ、一人当たりの排出量は世界1位からほど遠いのですが)となった中国が、排出量の多い約15,000の事業所(発電所を含む)を対象に、SOxやNOxなどの排出量の実績値を報告することを求めると発表しました。すでにいくつかの発電所については、情報が公開されています(例:浙江省の発電所

情報公開に関しては、2003年、気候ネットワークは、事業者のエネルギー消費量や電力消費に関する情報開示を求めて政府を相手に裁判を起こしましたが、その戦いは困難なものでした。地方裁判所(名古屋、大阪、東京)では勝訴し、高裁でも名古屋、東京で勝訴したものの、大阪高裁は地裁の判決を覆して訴えを棄却。そして最高裁は、3事件を合わせて企業が公開を拒否する場合には、政府は情報を開示しなくてもよいとの判決を下しました。気候ネットワークの訴訟を通してプレッシャーが高まった結果、温室効果ガス排出量算定報告公表制度の導入への道が開かれましたが、各事業所のエネルギーと電力消費に関する情報は、十分に市民に開かれているとは言えません。

日本では電力会社は石炭は「クリーンだ」と主張しますが、情報の自由がなくして、どうやってそれを確かめることができるというのでしょうか?先進国であり、民主主義の国である日本には、アメリカやEU、中国のような情報開示プログラムがあって然るべきです。電力会社が排出する有害物質の中身を知ることができるようになるのは、単に時間の問題でしょうか?それとも…?

出典:

ニューヨークタイムズ :原発事故、避難指示解除も住民は帰宅に消極的 (2014年4月27日)
http://www.nytimes.com/2014/04/28/world/asia/forced-to-flee-radiation-fearful-japanese-villagers-are-reluctant-to-return.html?_r=0

アメリカ合衆国環境保護庁
http://www.epa.gov/

アメリカ合衆国環境保護庁 Air Markets Program Data、2014
http://ampd.epa.gov/ampd/

欧州委員会
http://ec.europa.eu/index_en.htm

欧州委員会、汚染物質排出移動登録制度
http://prtr.ec.europa.eu/PollutantReleases.aspx

天然資源保護協議会:中国、深刻な大気汚染との戦い 新たな対策で改善を図る(2014年1月14日)
http://switchboard.nrdc.org/blogs/lgreer/china_fights_back_against_airpocalypse_embarking_on_a_new_air_pollution_initiative_that_just_might_work.html

EDGAR:CO2排出量のトレンドレポート(2013年版)
http://edgar.jrc.ec.europa.eu/news_docs/pbl-2013-trends-in-global-co2-emissions-2013-report-1148.pdf

Lord, Richard, Silke Goldberg, Lavanya Rajamani, Jutta Brunnee Eds.気候変動の責任 国際法と実践、ケンブリッジ大学プレス、2012

気候ネットワーク:企業の各事業所の温室効果ガスの排出実態~省エネ法に基づくデータ分析の結果発表~(2004/06/02)
goo.gl/lE9XYt