(執筆:西淀川公害患者と家族の会 上田敏幸さん)
「患者が安心して暮らせる環境が欲しい。新たな発電所は作って欲しくありません」−−
神戸製鋼が神戸市灘区に建設を予定している石炭火力発電所の問題で4月20日、
大阪と神戸の公害患者会やCASA(地球環境市民会議)の代表らが神戸製鋼と話し合いました。
会場の阪急グランドビル会議室には患者・家族ら22人が参加、
神戸製鋼からは楠山泰司総務部担当部長、山下淳二法務部担当部長らが対応しました。
神戸製鋼はすでに同地で140万kwの石炭火力発電所を稼働中で、
昨年12月に新たに130万kwの石炭火力発電所の「計画段階配慮書」を経産大臣に提出。環境アセスメントの手続きが始まっています。
患者、CASAらは共同でこの「配慮書」への意見を提出するとともに、
同社に話し合いをするよう要請していました。
この日の話し合いは、「患者の声を聴く場」として行われ、2人の患者が自身の被害を訴えました。
神戸市在住の患者・河野達雄さん(65)は、「昭和52年に公害病に認定された。26歳から10年近くひどい発作が続いた。病気のせいで結婚も考えられなかった。生きていくのが精一杯だった」と青春を奪い、人生を狂わせてしまった事実を淡々と語りかけました。
ぜん息2級の夫とともに病気と向き合ってきた大阪・西淀川の山下晴美さん(65)は
「作業中に大発作を起こし病院に運ばれた主人は、心肺停止。
手足を縛られ人口呼吸器をつけた主人の目から涙が溢れていた。
子や孫たちに『手渡したいのは青い空』の思いで頑張ってきたが、
発電所ができたりすると手渡すことができなくなります」と目を潤ませました。
神鋼側は、計画している発電所は最新鋭の設備で環境にも十分配慮しており、
社会的要請に応える意義ある事業だなどと説明しました。
また、「ほぼ倍の出力を持つ発電所が排出する温室効果ガスや大気汚染物質の総量も示さず
環境基準を守といっても説得力がない」の指摘に神鋼側は
「まだアセスの初期段階なのでわからない」と述べました。
患者側が求めた排出量のデータ公開と話し合いの継続については
「アセスの方法書段階(8月頃)で明らかになる。話し合いについては、その段階で協議する」と約束しました。
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神戸製鋼の計画には、このほか「石炭火力発電所問題を考える市民ネットワーク」も反対運動をしています。
事業者はこうした声に真摯に耳を傾けるべきです。
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