世界銀行、欧州投資銀行(EIB)、米国輸出入銀行などの国際金融機関が、気候変動対策として石炭火 力発電事業支援の廃止・規制強化を続々と掲げる中、日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC) と日本貿易保険(NEXI)が世界最大規模の石炭火力発電事業支援を続けていることが明らかになりまし た。
調査結果は、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)が、JBIC及びNEXIのウェブサイト上で公開 されている2003年10月以降の環境レビュー結果及びプレスリリースを分析し、集計したものです。 JBICは、過去10年間に18件の石炭火力発電事業への投融資を行い、その総発電容量は1万5600MW以 上(1560万キロワット以上)となりました。18件の内訳は、インドネシア5件、ベトナム5件、インド 3件、フィリピン2件などです。18件の民間銀行協調での投融資規模は20億ドル以上(2000億円以上) に上り、うちJBICの融資額は約10億ドル~15億ドル(約1000億円~1500億円)と推計されます。
また、NEXIは、計13件の石炭火力発電事業に対して貿易保険を提供し、その総発電容量は1万 1700MW以上(1170万キロワット以上)となりました。内訳は、ベトナム4件、インド2件、インドネシ ア2件などです。13件の投融資規模は6.7億ドル以上(670億円以上)に上りました。
アメリカの環境NGOであるEnvironmental Defense Fundが2009年に出した報告書「Foreclosing the Future」では、1994年~2009年(15年間)の国際金融機関による石炭火力発電事業支援額をランキン グ化しています。それによると、JBICは約81億ドル(約8100億円、金額は民間銀行との協調による投 融資規模と推測されます)で1位、NEXIは約21億ドル(約2100億円)で6位でした。
JBICは、1999年に日本輸出入銀行と円借款を実施する海外経済協力基金が統合し誕生した後、円借款を 担当する部門は2008年にJICAと統合しました。そのため、ランキングのデータと現在のJBIC業務との 単純比較することはできませんが、JBIC及びNEXIが世界最大規模の石炭火力発電事業への支援を続け ている実態は明らかです。国際金融機関が石炭火力発電事業支援の廃止・規制強化を続々と掲げる中、 日本の公的金融機関も方針転換が必要となっています。
関連URL:
JBIC環境レビュー結果
http://www.jbic.go.jp/en/efforts/environment/projects
NEXI環境レビュー結果
http://nexi.go.jp/topics/environment/review/
NEXIプレスリリース
http://nexi.go.jp/topics/newsrelease/
Environmental Defense Fundの報告書「Foreclosing the Future」
http://www.edf.org/climate/report-foreclosing-future
写真の出典:
The Guardian
http://www.theguardian.com/environment/2009/apr/23/carbon-capture-plans