ベトナム首相、「石炭火力の新規建設計画はしない」という方針を発表


ベトナムにおいて、脱石炭に向けた新たな大きな動きがありました。

2015年、1月19日、ベトナムのグエン・タン・ズン首相が、国内の新規発電所建設計画を許可しない方針を打ち出しました。政府議会にて、石炭火力発電所を増やさない方向で2030年までを視野に入れた2011〜2020年の国家電力開発計画(第7次電力マスタープラン)及び2020年までの石炭業界開発計画を調整していくように指導したのです。環境問題の解決を図るとともに、温室効果ガスの削減目標を達成するために石炭火力発電所の計画を見直そうとの考えです。ベトナムは、中国、インド、トルコに続き世界4位の規模の新規石炭火力発電所計画(検討中 約4.1万MW、建設中1.2万MW)を有しています。石炭にまい進する国と考えられていたベトナムの方針転換は大きなものです。

現地メディアによれば、背景には「パリ協定」の合意とともに、国内事情もあるようです。現在は国内で採れる石炭で需要のほとんどをまかなっていますが、2020年以降は国内の石炭資源が減少し、輸入が増加すると見越されています。実際、2013-2014年の石炭輸入は21%増加していました。今年も国内消費用に数百万トンの輸入が予測されており、2020年には年間2000〜3000万トンに上ると考えられています。

政府は、既存の計画の下で進められている全ての石炭火力発電所の見直しを予定しています。経済発展に比例して電力需要の増加が見込まれていますが、今後は既存の石炭火力より新規のガスを優先し、さらに再生可能エネルギーへの投資を進める考えです。国際的な温室効果ガス抑制に責任を持って取り組み、環境保護の面からは石炭火力発電所のモニタリングを強化する一方、市場メカニズムを構築し、政策や戦略を進めつつ太陽光や風力といった再生可能エネルギーへの投資を加速させることを目指しています。

途上国においてはとりわけ今でも「石炭火力は経済成長に必要な低価格のエネルギーだ」という見方もありますが、今回のベトナム政府による方針転換は、「パリ合意」に向けた途上国の積極的な動きとして注目されます。

出典:

Plans on developing power, coal sectors adjusted Online Newspaper of the Government (2016/1/20)

Vietnam to phase out coal, invest in gas and renewables  Climate Home (2016/1/25)

Vietnam to stop licensing new coal-fired power plants The Voice of Vietnam (2016/1/26)

「石炭火発は増やさない」排出ガス削減で首相が指導、原発は続行 ベトジョーベトナムニュース(2016/1/25)

ベトナム、石炭火力「新設しない」 温室ガス削減策 朝日新聞デジタル(2016/2/13)